「 CHESS 」 |
notation 00 |
「 opening 」 |
「あたしな、平次のことがずっと好きやったんよ。」 和葉は背を向けて新幹線に乗り込もうとしていた平次に、思い切って言葉を投げかけた。 平次は驚いた様に、その場に立ち止る。 「すまん。俺はお前んことをそう言う風に見ることは出来へん。」 「ええよ。平次があたしんことなんとも想うて無いんは分かってたから。」 淀みなく返された平次の言葉に、和葉は薄い笑みを添えて返した。 「俺らは幼馴染で・・・・・兄妹や・・・。」 「・・・そやね。」 「俺にとって和葉は大切な家族や・・・。」 「・・・うん・・。」 「これからもずっと・・・。」 「・・・うん。」 「・・・・・。」 「ほな。行ってらっしゃい平次。」 「和葉もこちでがんばれや。」 「おおきに。平次もがんばりや。」 平次の返事か聞こえる前に新幹線のドアは静に閉り、和葉はせいいっぱいの笑顔で平次を送り出した。 しかし平次が乗った新幹線が見えなくなると、和葉にさっきまでの笑顔は無く、その場にしゃがみ込み声を殺して泣き続けたのだった。 平次は東京の大学を選び、和葉は大阪の大学を選んだが故の別れ。 本当は和葉は何も言わないつもりだった。 けれど歩き出す平次の背中を見て、耐え切れなくなってしまった。 こうなることが分かっていたのに、自ら自分の想いにリザインしたのだ。 もう、これ以上引き摺らない為に。 負けが分かっているゲームを、いつまでも続けることは出来無いから。 |