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CROW 2。。 | ||||||||||
平次に電話を切られてから和葉は、一人東京駅の新幹線ホームに座っていた。 平次が東都大学を受けにいったとき、和葉の携帯に非通知のメールが数回届いていた。 文章のない、写真だけのメール。 そこに写っていたのは、抱き合う平次と蘭。 2通目は、ホテルらしき建物に入っていく二人。 3通目は出てくる二人。 信じられない思いで見つめた。 差出人は分からなかったが、なんとなく和葉には誰からか想像がついた。 それから、何度か平次に話そうとしたが相手にしてもらえなかった。 信じられなかった、何度も間違いじゃないかと思った。 だけど、平次の態度がおかしかった。 一度も平次ときちんと話せないまま彼は、東京に行ってしまった。 それ以来、蘭ともまともに話せていない。 そして、自分が行く先のことも平次に知らせぬままだった。 本当は、神戸の大学にいくはずだった。 試験も受けたし入学手続きもしていた、しかし、どうしても気持ちが落ち着かなかった。 そして、悩みに悩んだ末、海外の大学に父親を無理やりに説得して入ったのだった。 親友である華月と父しか、そのことを知らない。 それは、平次を忘れる為だった。 まったく知らない場所、言葉もまともに通じない場所、余計なことを考えたくなかったからだ。 華月から平次が自分のことを探していると聞いたときも、我慢した。 平次に自分は必要ないと言い聞かせて。 しかし、ただ一人だけ。 華月からの連絡で、ただ一人だけ、留学中に和葉が会った人物がいた。 その人はわざわざ自分に会いに来た。 たった一言を言うために。 アナウンスが最終の新幹線の案内を始めた。 ・・・・・時間切れやで。 和葉はゆっくりと立ち上がり、新幹線の入り口に向かう。 そして、乗り込もうとしたとき、 「待て言うたやろ!」 急に腕を捕まれた。 今一番聞きたかった声、そしてもっとも聞きたくなかった声。 息を切らした平次が和葉の右腕を掴んでいた。 振り返らないまま数歩下がる。 最終の新幹線は和葉の目の前を、過ぎ去っていく。 「和葉!」 いつまでも振り返らない和葉に、平次が呼ぶ。 「もう、どうしてくれんの!今の最後やったんやから。」 弱音を見せたくなくて、怒った顔で振り返る。 「自分こそ何やってんのや!何で一度も連絡よこさへんのや!」 和葉の記憶より、少し大人になった平次がそこにはいた。 「そんなん・・・・・・あっ・・・あんたには関係ないやろ。」 「関係ないとこあるかい!俺ら・・・・。」 「幼馴染やから。」 「ええから、来い!」 平次は和葉の腕を掴んだまま歩きだした。 ・・・・・泣いたらあかん。 和葉は自分の感情を必死に押し殺していた。 「ほんま、相変わらずやね。」 「うっさい。お前こそ、ちっとも変わっとらんやないか。」 平次もやっと会えた和葉に対して、どうしていいか迷っている。 「そんで、どこ連れていかれるん?」 「どうせ泊まるとこないんやろが。」 「誰のせいやの。」 平次はそのまま和葉をバイクのとこまで、引っ張って行った。 「ほれっ。」 無造作にメットを渡す。 和葉はやれやれといった感じで受け取り、それでも慣れた手つきでそれを被る。 3年ぶりなのに、その二人の動作は自然だった。 バイクは静かに動き出す。 平次は背中に和葉の温もりを感じ、和葉はしがみ付く腕に平次の温もりを感じていた。 マンションに戻ると悪友達は、すでに帰った後だった。 「友達は?」 「帰らした。」 「はぁ?あんたこそ何してんの?ええの?そんなことして。」 「かまへん。あいつらが勝手に押しかけて来ただけや。」 和葉は部屋を見回した。 3年ぶりの平次の部屋。 しかも、東京のこの部屋は始めてだ。 「ここに来るの初めてやけど、あっちの部屋と雰囲気同じやね。」 「そうか?適当に座っとけ。何か飲むやろ。」 「うん。って、作ってくれんの?」 「悪いか。」 「珍しい・・・・。」 「俺かて、少しは成長してんのや。」 「はいはい。ごちそうになります。」 長い間、会っていなかったのが嘘のような二人の会話。 平次が和葉に作ったのはココア。 和葉が好きだったから。 二人はテーブルを挟んで向かい会って座っている。 「お前、今、どこにおるんや?」 「秘密。」 「何でや。」 「どうしても。」 和葉の態度は、変わる様子がない。 「和葉には、もう俺は必要ないいうことか?」 「・・・・・・・・・・・・。」 「俺には・・・。」 そのとき、ドアが開き平次の今の恋人、夏美が入ってきた。 「平次~、遅くなってごめ~~ん。」 「あっ・・・。」 和葉が慌てて話かける。 「彼女やろ。そこに、写真あるし。」 それは、夏美が無理やり置いていった物だった。 「あっ・・・いやっ・・・・。」 言葉が出ない平次。 「あなた誰?」 怖い顔して夏美が和葉に問いかける。 「あたし、へ・・・・・服部くんの幼馴染で遠山和葉言います。」 「幼馴染?」 「あたし、もう帰るわ。近くに来たから、ちょっと寄っただけやし。」 「和葉。」 和葉はさっさと自分のカバンを持って、ドアに向かう。 ・・・・・やっぱり、来るんやなっかった。 そうやんな、もう、あたしには平次の側におる資格なん無いやんし。 平次が止めるのも無視して、ドアを出た。 追いかけようとする平次を夏美が引き止めている声がする。 必死に止める夏美を無視して、和葉を追いかけることが出来ない平次。 平次のそんな優柔不断な態度が、再び和葉を傷つける。 そして、また和葉を手放してしまう。 |
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