CROW 4.。
「・・・・・・・・・。」
「もし、今度あんたに拒絶されたら和葉きっと・・・・・・きっと、おかしゅうなってまう・・・・・。」
言葉が返せない平次。
「和葉・・・・・・・・・・子供がおるんや。」
華月が何を言ったのか平次には一瞬理解出来なかった。
「今年3歳になる女の子や。」
「・・・・・・・・・結婚・・・・してんのか?」
やっとの思いで声を出す。
華月はゆっくり首を左右に振った。
「相手の男誰や。」
平次の声が少し大きくなる。
また、華月は首を左右に振った。
「知らへん。和葉、絶対に言わへんのや。うちが何遍聞いても、和葉のおじさんが聞いても、和葉絶対に言わへんのや。やから、和葉、おじさんから勘当されて、ずっと一人で葉(よう)ちゃん・・・・その子の名前な・・・・・育ててんねん。」
平次は混乱していた。

・・・・・・・・和葉に子供・・・・・・信じられへん・・・・・・。

さっき会った和葉からは、そんな感じはまったく感じられなかった。

・・・・・・・・和葉に・・・・和葉に・・・・・・。

「ママ〜〜〜?」
そんな平次の思考を子供の声が遮った。
「あらあら、葉ちゃんどうしたん?」
明が奥から顔出した小さな子供に声をかけた。
「ママは?」
「ママ、今日はお仕事やから、葉ちゃんはそのまま寝ててええんよ。」
華月が立ち上がって葉に声をかける。
「葉ちゃん、お目目さめたん?」
「・・・・・・かじゅきちゃん。」
葉はまだ眠そうに目をこすっている。
「お出で、華月ちゃんが抱っこしててあげるわ。」
華月は葉を抱っこして、平次の前に戻って来た。
小さな目がじっと平次を見ている。
「おじちゃんだ〜〜れ?」
・・・・・・・・おっ・・・おじちゃん・・・・・。
華月が必死に笑いを噛み殺している。
「このお兄ちゃんもママの友達や。」
「ママの?」
「そうや。平次お兄ちゃんやで。」
「へい・・・・・ちゃん?」
平次は葉の中に和葉を見た気がした。
目の前の少女は確かに、和葉の小さいころに似ている。
葉は華月に抱っこされたまま眠ってしまった。
「この子が和葉の・・・・。」
「そうや。」
「和葉が仕事で遅い日や夜勤のときは、明さんが面倒みてくれてるんや。」
「・・・・・・・・。」
「和葉、一人でがんばってんのや。やから、アンタが今の和葉受け入れられへんいうなら、これ以上和葉に関わらんといて欲しいねん。」
「・・・・・相手の男は知ってんのか?」
「和葉、知らせてへん言うとった。」
「何でや?」
「和葉、葉ちゃんが出来たとき海外におって、自分が妊娠してるて気付いたときにはもうおろせへん時期やったって。そやから、一人で生んで育てることにした言うとった。」
華月の言葉が重く平次に圧し掛かる。
そこには、自分の知らない和葉がいた。
平次が何不自由なく暮らしてるときに、一人で苦しんでいた和葉。
知らず知らずに視線は、その和葉の子供にいく。
「 ・・・・・・! 」
平次は一瞬、葉の寝顔がある人物に重なった。
「おっ俺、もう帰るわ。」
「そうやね。付き合わせて悪かったわ。そやけど、うちが言うたこと・・・・。」
「ああ。わかっとる。」
平次は、今は一刻でも早くその場を去りたかった。


帰りの車の中、平次の思考はあることでいっぱいだった。
何度振り払うとしても、一度浮かんだその考えは消えてはくれない。
葉の寝顔に重なった顔、それは今はもう存在しない、江戸川コナン だった。
コナン自体は存在しないが、その人物、工藤新一は確かに存在する。
しかも新一は一度、和葉に会いにロスに行っているではないか。
新一が和葉に会いにいったのは4年前、子供の年齢ともあう。
もし、本当に相手の男が新一だったら、和葉がガンとして男の名前を言わないのもうなずける。
考えれば考える程、華月の話とツジツマが合ってしまう。
平次は車を止め、何度も何度もハンドルに自分の両手を叩きつけた。

「何でや!何で、アイツなんや!」

まだ、和葉に確かめたわけでもないのに、平次には新一だと分かってしまった。
刑事の感、探偵の感、違う、それは男の感。
しかも、二人がそうなったのは多分いやきっと自分のせいだと。
始めに二人を裏切ったのは、誰でもない平次自身だったではないか。
そのせいで、同じ痛みを持った二人がそうなったとして、どうして平次にそれが咎められようか。
平次は今始めて、本気で心から自分がしてしまったことを後悔した。
どんなに蘭が限界で今にも壊れそうだったとしても、自分が手を差し伸べるべきではなかったのだ。
それは、決してやってはいけないことだったのだと。

・・・・・・・・俺のせいや・・・・・和葉の人生狂わしてしもたんは俺や。

新一に抱かれている和葉の姿が浮かんだ。
平次は気が変になりそうだった。
それは、6年前に和葉と新一が味わった苦しみだった。


それからの平次には、眠れ無い日々が続いた。
目を閉じると二人の姿が浮かぶ。
平次は広い服部家で一人で暮らしている。
父親が警視総監になった為、母はそれについて今は東京にいる。
自分の気持ちを持て余し、竹刀を持ってみるも、自棄気味に酒を飲んでみるも、結果は同じだった。


合同捜査も無事終わり、最後の両府警での会議が終了した。
その間、平次と和葉は直に接することはなかった。
京都府警の会議室の外で、華月が和葉を待っており、和葉の姿を見つけるなり駆け寄った。
「和葉!ちょっと。」
廊下の隅に引っ張る。
「さっき、明さんから連絡あって、葉ちゃんの具合が悪いらしいんやて。」
和葉の携帯が繋がらないときは、華月に連絡が入るようになっていた。
「えっ。」
和葉の表情が変わる。
そこいたほとんどの男がそれとなく、和葉の様子を伺っている。
和葉の雰囲気から厳しい刑事のものが剥がれていく。
平次は皆から和葉を隠す様にその後ろに立った。
「どないしたんや?」
「あっ、服部くん・・・・。」
一瞬、とまどった華月だったが、事情を平次に話した。
「和葉、何ぼさっとしてんねん。俺が送ってたる。ほら、行くで。」
平次はとまどう和葉の腕を掴んで、歩き出した。
それを見ていた周りの男たちからは、
『何やアイツ。遠山さんを呼び捨てにしおって。』
『何であんなに馴れ馴れしいや。』
『遠山の何や』
などと言っている。
「久しぶりですなぁ。平ちゃんらのああいう姿。」
平次と和葉の後ろ姿を見ながら、そう華月に声をかけたのは大滝だった。
「大滝はん。」
「華月ちゃんもそう思いはるやろ。」
高校のころから和葉について大阪府警に顔出しいた華月は、大滝とも顔見知りだった。
「・・・ほんまですね。」
「何々?どういうこと?」
遠い目をしてる二人に声をかけたのは、冬樹だった。
「あの二人は、ほんまはあれが普通やねん。」
華月はつい答えてしまい、慌てて改めて冬樹の方をみた。
「あんた誰?」
「華月ちゃん、こいつは平ちゃんの同期で久保言うヤツですわ。」
大滝が笑いながら言った。
「ふ〜〜ん。で何?」
「何って言われても・・・・あっ、君この前、服部連れてった子。」
「?」
「華月ちゃんは、平ちゃんらの友人や。ほなっ、わしこれで。」
大滝はそう言うと帰っていった。
それなのに冬樹は、華月の横を一緒に歩き始めた。
「なぁなぁ、あれが普通ってどういうこと?」
「ほんまやったら、服部くんと和葉は・・・・・・・う〜〜〜〜思い出しても腹たつ・・・・・あのボケ男・・・・・。」
「それ、服部のこと?」
「他に誰がおんの?!」
平次のことをこんな風に言う女の子がいるとは。
「オレ、華月ちゃんのこと気に入った。」
この二人は、どうも意気投合しそうである。






                                                          
CROW 3 CORW 5


はいっ。「CROW4」でした。
はぁ、さらにコメントのしようが・・・。
いかがなもんでしょうか?和葉に子供・・・・・しかも、服部の子ではない・・・・・・。
しかも、シングルマザーってのは・・・・・・・あっ、モノを投げないで〜〜〜!ごめんなさい。ごめんなさい。
反省はしてます・・・・・・・服部が・・・・・・。
他に服部を突き落とす理由が見つからなかったんです〜〜〜。
どなたか、「こんな理由なら服部をどん底まで突き落とせる!」ってのがあったら教えて下さい!!
ちなみに、BGMは黒夢の「少年」。私はとっても、清春の声が好き。
by phantom
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