CROW 6.。 | ||
それから、平次が刑事課に戻ってきたのは夜になってからだった。 さすがに、例のお嬢ももういなかった。 が、平次がデスクに着くなり古参の刑事たちが数人集まって来た。 しかも、なぜかニヤニヤしているようにも見える。 『平ちゃん、今日もあの子来とったで。』 「あんなん無視しとって下さい。」 『そんなこと言うとってええのんか?』 「?」 平次がやっと先輩刑事たちの方に顔を向ける。 『今日、あの子、和葉ちゃんにとんでもないこと言うとったのになぁ?』 『そうやで、平ちゃん!』 「なんで、そこに和葉が出てこなあかんのですか?」 おじさん刑事達は、今日のあらましを説明する。 平次の顔色が変わった。 そして、そのまま上着を掴んで飛び出して行ってしまった。 若い刑事たちが、見たこともない平次の慌てように疑問の声を上げる。 『服部があんなに慌てるなん珍しいですね。』 『そらそやろ、平ちゃんにとっては一大事やからなぁ。』 古参の刑事たちは、楽しそうである。 『やけどあれ、言わんでえかったんですか?あのお嬢、親がどうの言うとったやないですか。』 それは、和葉達が去った後、フィアンセうんぬんくんに疑問をぶつけた者に、 「だって〜パパとママが、きちんと平次さんのご両親にお願いしてくれるって言ったもん。」 と返したからだった。 『それこそ、絶対にありえへんわ。』 『どうしてですか?服部の親が、承諾するかもしれないやないですか。まぁ、服部自信が納得するとは思えませんけど。』 おじさんたちは、顔を見合わせて含み笑いをする。 『あの本部長・・・・今は警視総監やったな。の奥様がそんなん相手にするとは思えんもんなぁ。』 『そやそや、あの人が平ちゃんの嫁に和葉ちゃん以外の子を認めるわけがあらへん。』 その後、おじさんたちは思い出話に花を咲かせた。 和葉と冬樹は、犯人を確保し京都府警に護送した。 冬樹はどうしても一度、大阪に戻らないとならず、ブツブツいいながら帰って行った。 和葉は表面上は、いつも通りだった。 しかし、その夜の華月たちの合コンに参加し、メチャクチャ悪酔いしていた。 華月が止めるのも聞かず。 和葉のやけ酒の理由は、冬樹から聞いていた。 和葉の側には、一人の男がぴったり張り付いていて、このままだったらお持ち帰りコースだ。 華月は何度か平次の携帯にかけてみるが、つながらない。 ・・・・・・あの〜ボケ〜〜〜〜〜。 それからしばらくして平次から、連絡があった。 その会話は、どちらも怒鳴りあいだった。 やっと平次が現れたときには、和葉は隣の男にもたれかかっており、完全に酔っぱらっている。 その男が外に和葉を連れ出そうとするのを、華月がなんとか押しとどめている状態だった。 平次の登場には和葉より、他の婦警連中が喜んだ。 和葉は一瞥したのみである。 「帰えんで、和葉。」 そう言って和葉に伸ばした平次の手を払いのけて、 「これはこれは、服部警部補。ご婚約おめでとうございます〜〜。」 和葉は隣の男の腕に抱きついた。 「あたしのことならお構いなく〜〜。なぁ〜。」 などど、その男と顔見合わせている。 「アホなこと言うとらんと、帰るで!」 「アホはあんたやろ。迎えに来る相手間違えてんで〜。あたしはこの人とこれからええとこ行くんやもんな〜〜。」 すると男が和葉を抱き寄せたのである。 平次の近くにいた華月には、ブチッっという音が聞こえたとか。 「そんなに男とヤリたいんやったら、俺がしたる!!!」 これには、その場にいた全員が一瞬固まった。 それから、婦警達は黄色い声を上げ、華月は頭を抱え、和葉は真っ赤になって怒り出した。 「なっ・・・・あんた何言うてんの!ほんまにアホちゃう?!」 「なんとでも言え!」 そう言うと今度こそ、本当に和葉を引っ張り上げた。 男が何か言う前に、 「何や。」 っと絶対零度の一言。視線で人が殺せるのなら、このときの平次が正にそれである。 男は無言で首を振るのが精一杯のようだ。 「ちょ〜〜離してや!何であたしがあんたについていかなあかんの〜〜〜!!」 「ええから来い!やりたいんやろが!」 そのまま和葉は平次に引きずられるように連れて行かれてしまった。 残された者は、唖然。 その後、事情を知らない婦警連中から華月が質問攻めにされたのは言うまでもない。 平次は和葉をアパートまで連れて帰ると、和葉の抗議も無視してベットに押し倒した。 和葉の自由をキスと力で奪って。 平次自信、もう自分を止めることが出来なかったのだ。 自分のモノにすると決めた、しかし、和葉の気持ちが自分に向くまで我慢するつもりだった。 しかし、さっきの知らない男に肩を抱かれている和葉を見たとき、自分以外の男と寝ると言った和葉に、平次の理性は完全に崩れ去っていった。 ・・・・・・もう誰も和葉に触れさせへん! それからは、初めて触れる和葉にただただ溺れていった。 和葉が何か言っていたが、それすら覚えていないほどに。 貪るように和葉を求めた。何度も何度も。 和葉に自分を刻みつける。 もう二度とどこにも行かさない為に。 翌日、和葉は目覚ましの音と頭痛で目が覚めた。 あまりの頭痛に頭がよく回らない。 随分、自分に都合の良い夢を見ていたような気もするが、それすら上手く思い出せない。 「あかん・・・・・完全に二日酔いや・・・・・・・・。」 ベットでそのままぼう〜〜とし過ぎた。 遅刻しそうになり、慌てて身支度を調え部屋を飛び出して行った。 府警に着くなり、数人の若い婦警に何か言われたが急いでいた為に適当に挨拶してやり過ごした。 二日酔いの薬を飲んだが、体のだるさとぼ〜っとした頭はどうしようもなかった。 昼過ぎに華月が、合気道の訓練だと言うので気合いを入れ直すために参加することにした。 「和葉、ほんまに大丈夫なん?」 「う〜〜なんとか・・・・。」 「昨日、随分飲んでたやんか?」 「よう覚えてへん・・・・。」 そんな話をしながら着替えていた。 和葉がブラウスを脱ぎかけたのを見ていた華月が、慌てて和葉のブラウスを元に戻した。 「か・・・・・・和葉・・・・・・・・。」 「いきなり、どないしたん華月?」 和葉は突然の華月の行動に、顔が?になっている。 「きょ・・・今日はやっぱり、止めといた方がええよ。」 「今更、何言うてんの?ちょっと精神統一するだけやから、心配せんでええって。」 「そうやなくて・・・・・・・和葉、今朝鏡見た?」 「遅刻しそうやったから、よう見てへん。それがどないしたん?」 「これ・・・・・。」 華月が和葉のブラウスの胸元をちょっと引っ張って中を覗いた。 和葉も視線を落とす。 「 !!!!! 」 固まってしまった和葉の背中も覗き込む華月。 「すごっ!・・・・・・・・・・。和葉・・・・気付いてへんかったん?・・・・・。」 「朝一人やったし・・・・・夢や思うてた・・・・・・・・・・・・・・・・。」 二人の会話を聞きつけた他の婦警たちが集まって来る。 その中には、昨日の合コンに参加していた者も数人いた。 そして、和葉の背中を覗き込んだ。 『すっご〜〜〜い!!これ全部キスマーク!?』 そう和葉の背中には、無数の赤い跡。 もちろん胸元にも。 「多分・・・・・他んとこにもあんで和葉。一応、服着て見えるとこには、付けてへんみたいやけど・・・。」 華月がそっと和葉に囁いた。 和葉はまだ動かない。 『服部くんて情熱的〜〜〜〜!!』 『羨まし〜〜〜!うちも服部さんに付けて欲しい!』 『え〜〜〜?それ、どういうこと?』 婦警たちの噂話は当分終わりそうにない。 多分、一両日中には府警中に広まるだろう。 和葉は昨日のことを思い出していた。 どんなに抵抗しても、離してくれなかった。 どんなに頼んでも、泣いても、聞き入れてくれなかった。 何度も何度もイカサレ、何回意識が飛んだだろうか。 途中、平次に必死でしがみつき、背中に爪を立てたのは和葉だった。 自分から平次に何度もキスもした。 それは、夢などではなっかたのだ。 体に残る印がそれは現実だと告げている。 だったら、あの言葉も。 繰り返し繰り返し囁かれた。 「愛している」と。 |
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