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「 CROW 」 8 |
平次と和葉が明の店に帰って来ると、そこにはいつの間にか冬樹も来ていた。 出かける時と違って、上機嫌の平次と膨れっ面だけどどこか嬉しそうな和葉。 そして、平次はすぐに葉にあることを訪ねた。 「なぁ、葉。」 「な~~に、へ~~ちゃん?」 「その呼び方、変えてくれへんかなぁ?」 「なんで?」 「パパって呼んで欲しいねん。」 「パパ?」 「そうや。」 「へ~ちゃん、葉のパパになるん?」 「あかんか?」 「ママ・・・・。」 葉は小さな目を和葉に向けた。 和葉は優しい母親の顔で、頷いてみせる。 すると、葉の小さな顔に、満面の笑顔が表れた。 「パパ。」 「何や。葉。」 平次もそれはそれは優しい表情になっている。 「パパ~~~~!!」 葉は平次の首に抱きついた。 平次もそっと抱きしめ返した。 そこまで、黙ってその様子を見ていた華月だったが、 「和葉~~~~~!!おめでとう~~~!!」 と和葉に飛びついた。 「いっ痛いって、華月~~~~!」 「ごめ~~ん。やって、嬉しいんやもん。」 「ありがとう、華月。」 「こっちは?」 和葉のお腹を指す。 「8週目やて。」 「もう、2重の喜びやん!!」 「でっでっ、プロポーズの言葉は?」 和葉の肩が急にフルフルと震え出した。 「和葉?」 「・・・・・まったくデリカシーの欠片も、ムードも何もあらへん。しかも、やることメチャクチャなんやでこの男!!」 今度はそれを聞いた平次が、 「和葉~~、さっき忠告したばっかやで?」 と抱きかかえたままの葉に「お目々閉じとき」と言うと、右手で和葉の後ろ頭捕まえてまた無理矢理キスをした。 「違う呼び方すんなアホッ。」 「アホッは平次やろ!ドアホ平次!!」 それでも今回は呼び方を間違えなかった。 真っ赤になって怒る和葉に、平次より葉がびっくり。 「ママどしゅたん?おかをまっかっかやよ?パパ~、ママおねつあるん?」 これには、さすがに和葉もこれ以上何も言えなかったのに、 「ママどしたんやろなぁ。」 と平次は葉にくすくす笑っている始末。 それを、明は楽しそうに眺め、華月は大きなため息をつき、冬樹は唖然と見ていた。 「服部って・・・・こんな奴だったけ?」 冬樹の中で、今までの平次のイメージが崩れていったようだ。 刑事としての資質があって、聡明な頭脳に並はずれた運動神経、愛想はいいがどこか醒めていて、どんなにモテても決してなびくことがない。 そんな平次と、今目の前にいる平次がどうしても結びつかないようだ。 「まぁ、無理もないわ。普段の服部くんからは想像も出来へんからなぁ。そやけど、和葉に対しては昔っからこんなやで。服部くんの特別は、和葉だけやから。和葉にかかったら、西の名探偵服部平次もただの男やちゅうことや。」 その後、平次から連絡を受けた平次の両親は快く二人のことを了承した。 むしろ、静華などは泣いて喜んだ程である。 やはり、静華は平次の嫁には和葉以外、考えていなっかたようだ。 それなのに、いつだまでたっても上手くいかず、和葉がシングルマザーになったと遠山父から聞かされたときなどは、平次に怒鳴り散らそうかと思ったくらいだった。 それでも、平次への見合いの申し入れや、挙げ句には平次と結婚させてくれなどのアホな申し入れなどは、全部綺麗に蹴散らしていた。 そして何より、明は静華の親友だったのである。 和葉が京都で子供と2人暮らしをすると知った静華が、華月に頼んで華月の親戚だとして和葉に明を紹介してくれるように頼んでいたのだ。 だから、明や華月が葉のために買ってきたとされる物の半分以上が、本当は静華が用意した物だった。 そうしながら、これ以上和葉に悪い虫が付かないようにしていたのだ。 明もまた、娘のように和葉と葉を可愛がってくれた。 和葉の父は、渋々だったが二人の結婚を認めてくれた。 その時、和葉に改めてされた質問に、 「葉は俺の子供です。」 と平次がきっぱりと言い切ってくれたのだった。 和葉の父は、決して和葉を見捨てたわけではなかった。 和葉と葉を陰ながらずっと見守っていたのだ。 何度も明の店に、二人の様子を訪ねに来られと明から聞かされた。 和葉は結局そのまま長期休暇を取らさせれてしまい、しかも、アパートを引き払って服部家に引っ越しまでさせられた。 これは、和葉が嫁に来るまで待ちきれない静華がしたことだった。 葉への溺愛ぶりも半端ではない。 もう、夫は東京にほぽって、和葉と葉の相手ばかりだ。 当の静華には、平次も邪魔なくらいだ。 明も休みには、2人に会いに来てくれた。 結婚式も披露宴も当の二人より、静華がしたがった。 和葉にウエディングドレスをどうしても着せたかったのだ。 式、当日も男連中が呆れるくらいだった。 「静・・・・・、ええ加減、泣きやめや。」 平次の父、服部平蔵は呆れ顔。 「おかん・・・・・何かかなり間違えてんで・・・・・。」 平次も呆れている。 静華は、花婿の母より、気分はすっかり花嫁の母。 「静華はん、おおきに。」 和葉の父だけは、そんな静華に感謝していた。 和葉も、そんな静華にもらい泣きして、式はなかなか大変だったようだ。 披露宴の直前、和葉の控え室に平次が新一と蘭を連れて来た。 ドアを開けるとそれまで和葉の側を嬉しげにはしゃぎ回っていた葉が、 「パパ~~~!!」 っと平次に飛びついた。 平次も嬉し気に、抱き上げる。 「工藤もねぇちゃんも、初めてやったな。俺らの娘で、葉や。可愛ええやろ!」 当然、二人は驚いている。 「和葉ちゃん・・・。」 「だまっとってごめんな、蘭ちゃん。」 和葉と蘭は数年ぶりに、うちとけて会話が出来たようだった。 「ほらっ、葉もおじちゃんにちゃんと挨拶し。」 「お・・・おじちゃん・・・・・せめて、お兄さんに・・・・・。」 「はじゅめましゅて、はっとりよう 3しゃい でしゅ。」 「よく出来ました。」 平次は葉によしよしをして、 「なっなっ、メチャ可愛ええやろ!!俺に似て葉はおりこうさんやもんな。」 とすでに新一に親バカぶりを発揮している。 蘭たちも来月、結婚することになっている。 和葉のお腹が目立たないうちにと、急遽、平次たちが先になったのだ。 「あたし、メチャメチャ出来ちゃった結婚や・・・・・二人目やし・・・・・・・。」 「実は・・・・・私もなの・・・・・・。」 よくよく話を聞けば、蘭もなんと16週目らしい。 「あたしらなんかこれからも、苦労しそうやね・・・・。」 「そうかもね・・・・・・。」 4人の間にあった蟠りも、いずれなくなるだろう。 葉は平次と和葉の娘になったのだから。 披露宴の間中、平次は葉を側から離さなかった。 和葉が投げたブーケを受け取ったのは、華月だった。 華月と冬樹この二人もどうなることやら。 追伸 1年後、和葉は無事に男の子を出産し、体型もほとんど元に戻ったので、仕事に復帰するとにした。 これには、平次が猛反対したのだが、和葉はガンとして聞き入れなかった。 服部家から京都府警は遠いので、近くの所轄署の刑事課に転属させてもらった。 華月もなぜだか、大阪府警の交通課に移っている。 もっか、和葉の悩みは小姑のようにうるさい平次だった。 無理するな、危険な事件に首突っ込むな、怪我するな、知らない男としゃべるな、独身男の刑事と組むななどなど。 しかし、和葉の顔はとても幸せそうだった。 「CROW」 おしまい by phantom CROW 7 CROW- after that 1 - |