「 CROW - after that - 」 3。。 | ||
蘭は新一が帰って来ない辛さに耐えられなくて、平次の中に新一を求めてしまったのだ。 確かに、一時は寂しさから救われたかもしれない。 しかし、それは蘭に違う苦しみも与えた。 それは親友を裏切ってしまったことだった。 ・・・・・・・・・・・私なんて・・・・・こと・・・・を・・・・・・・・・・・・・。 「・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・・和葉ちゃん・・・・・・・・・・。」 平次はあれから何も言って来ないし、蘭ももう新一のことを訪ねたりはしていない。 和葉からは何度かメールがあった。 それは、自分を気遣うものだった。 電話もあった。 蘭は自分が後ろめたくて、和葉の様子がおかしいことには気付かなかったのだ。 お互いぎこちない会話をして、電話をきったのに。 それから、数ヶ月して本当に新一が帰って来た。 嬉かった。 本当に、嬉しかった。 待って待って待って、やっと新一が自分の元に帰って来てくれた。 晴れて新一と蘭は恋人同士と呼ばれるようになった。 蘭はそれが嬉しくて和葉に聞いてもらおうと、電話をしたが繋がらない。 不安に思っていると、平次から和葉を知らないかと連絡があった。 蘭の不安は急速に広がっていく。 ・・・・・・・・・・・なぜ、和葉ちゃんが・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・もしかして・・・・・・・・・・・。 和葉は自分がしてしまったことを知っているのではないか。 ・・・・・・・・・・・だったら・・・・・・・・新一も・・・・・・・・・・・。 しかし、新一からはそんな様子はまったく感じられない。 聞きたくても、本当に新一が知らなかったら、そう思うと怖くて口にすることは出来なかった。 一時でも新一を信じられなくて、裏切ってしまった自分を知られたくなくて。 ・・・・・・・・・・・私はなんて卑怯者なんだろう・・・・・・・・・・・。 和葉が帰って来てくれることを、和葉と平次が壊れてしまわないことを切実に願った。 自分だけが、親友を裏切った自分だけが、想いが叶うなんてことがないように。 蘭の心は霞んだまま、月日は勝手に流れていった。 和葉から平次と結婚することになったと聞いた時は、涙が溢れて止まらなかった。 ・・・・・・・・・・・よかった・・・・・・本当によかった・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・私のせいで2人が壊れてしまわなくて良かった。 しかし、そんな蘭の前に信じられない容姿をした少女が現れた。 和葉と平次の結婚式の日、披露宴前に訪れた和葉の控え室にその少女はいた。 その少女は、3才で2人の娘だという。 ・・・・・・・・・・・うそ・・・・・・・・・・。 和葉は「メチャメチャ出来ちゃった結婚や、二人目やし」と言ったが、本当は違うはずだ。 ・・・・・・・・・・・この子・・・・・・・服部くんの子供じゃない・・・・・・・・・・・この子は・・・・・・・・・・・。 その時はなんとか、自分を押さえ込んだ。 蘭は最悪の形で、罰を与えられたと思った。 新一と和葉に何があったかなど、疑う余地はない。 あの少女は、蘭のよく知っている少年にとても似ている。 どうして・・・・・・・その答えもすぐに出た。 ・・・・・・・・・・・知ってたんだ・・・・・・・・・・・新一も和葉ちゃんも・・・・・・・・・・・だから・・・・・・・・・・。 泣いてもどうしようも無いのに、涙は蘭の意識を無視して零れ出した。 それから、葉の姿を目にする度に、蘭の中にはどうしようもない感情が溜まっていった。 平次は葉を溺愛している。 あの平次が葉を見て気付かないはずがない、平次は知っているのだ葉が誰の子か。 それでも、自分の子のように大切にしている。 それは全て、和葉のために。 ・・・・・・・・・・・だったら・・・・・・私は・・・・・・どうすればいいの・・・・・・・・・・・。 蘭は新一のために、自分はどうすればいいのかを考えた。 出た答えは、気付かない振りをすること、何も知らない振りをすることだった。 今まで、新一が蘭にしてきてくれたように。 だけど今日、久振りにあった幸せそうな和葉たちを見て、無意識に葉を目で追っている新一を見て、蘭の中に消えずに溜まっていたモノが溢れ出してしまったのだ。 2人の子供たちを見る幸せそうな和葉の笑顔が、あまりに自分と違うことに耐えきれなくて。 「ごめんなさい!和葉ちゃん。私が悪いの!私が服部くんに無理矢理お願いしたの!私が・・・・わたしが・・・・・うっ・・・・・うぅ・・・・・謝っても許されることじゃないけど・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・ごめんなさい和葉ちゃん・・・・・・・・・・・・・・。」 和葉は蘭が少し落ちつくのを、ただ優しく抱きしめて待った。 「もう、ええよ、蘭ちゃん。」 和葉の声はとても落ちついている。 「あたしも蘭ちゃんに謝らないけんことあるし。蘭ちゃんも気付いてるんやろ。」 「・・・・・・・・・・葉ちゃんのこと・・・・・・・・。」 「ごめんな、蘭ちゃん。あたしこそ許してもらへんことくらい分かっとるよ。やけど、あたしの話、聞いてくれへん? 蘭ちゃん・・・・。」 和葉は葉が生まれるまでのことを、蘭に話した。 和葉の語ることは、蘭には重かった。 そして、和葉は葉を生んだ理由も蘭に包み隠さず話し始めた。 |
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