※この話しは「新和」です。「 CROW - after that - 」 4。。 | ||
和葉はまったく知らない場所で、会話さえ満足に出来ない生活を送っていた。 しかし、それこそが和葉が望んだことだった。 毎日の生活に勉強に意識を向けられるから。 それでも、ふとした瞬間に寂しさが押寄せて来るのはどうしようも無い。 平次が好き。 それは今でも変わっていない。 蘭は親友。 それも変わってない。 ・・・・・・・・・・・やったら何であたしはここ(ロス)におるん・・・・・・・・・・・。 平次のことを忘れるため。 蘭のことを恨まないため。 ・・・・・・・・・・・あたしは・・・・・・・・・・・2人から逃げて来たんや・・・・・・・・・・・・・。 和葉は生まれて初め味わう理解しがたい感情に、押しつぶされそうだった。 そんな和葉を訪ねて来たのが、同じ苦しさを共有出来る新一だった。 「始めまして・・・じゃないよね。」 「そやね、前に帝丹高校の学園祭ん時に会うてるよね。」 和葉は独りで暮らすアパートに始めて人を招待した。 カフェとかでもよかったのだが、新一が自分にわざわざ会いに来た理由を考えると、それは彼に失礼な気がしたのだった。 「こんなモンしかないんやけど・・・。」 和葉は新一の前にマグカップに入った紅茶と、手作りのお菓子を置いた。 「あっ!ごめん。本当はオレが何か持って来なくちゃいけなかったんだよな。」 新一は、困った様子で頭をかいた。 「そんなん気にせんでええよ。」 和葉は新一の子供みたいな仕草に、久しぶりに笑った気がした。 「このお菓子、和葉ちゃんが作ったんだよね。」 「うん。工藤くんのお口に合うか分からへんけど・・・。」 新一は和葉の言葉が終わらないうちに、マフィンを取ってパクッ。 「うめぇ。とっても美味しいよ。和葉ちゃんはお菓子作りとか好きなんだ。」 「よ〜平次ん家にお礼代わりに持って行っとったから。」 「そうなんだ・・・・。」 和葉はマグカップを両手で包んで、俯いてしまった。 「ごめん。」 「・・・・・・。」 「オレ・・・・・・今日は和葉ちゃんに謝りに来たんだ・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・メールのことやろ・・・・・・・・・。」 新一はその一言に、少し目を見開いた。 「気付いてたんだ・・・・・・。」 「なんとなく、工藤くんやないかなって思うてた・・・・。」 「そう・・・・なんだ・・・・・。」 すると、新一は額をテーブルに当てて謝り出した。 「ごめん!本当にごめんなさい!許してもらえるなんて思ってない!オレがしちまった事は最低なことだから!和葉ちゃんにしなくてもいい苦しみを与えてしまったんだ!だから、どんな罵りの言葉だって構わない!殴ってくれてもいい!和葉ちゃんの気が済むまで好きにしてくれ!」 和葉にはそんな新一の姿が、不思議だった。 「工藤くん・・・・・・それを言いにここまで来たん?」 新一は頭を下げたまま、 「どうしても直接あやまりたかった・・・。」 と答えた。 「なぁ、頭上げてぇな。工藤くん何も悪いことしてへんやん。」 新一は動かない。 「オレは自分独りが辛いのが耐えられなくて、君までまきぞいにしちまったんだぜ。」 「それやったら・・・・・工藤くんも・・・・・もう十分苦しんだいうことやろ・・・・・。」 和葉の優しい声に、新一は視線を上げた。 「あたしんことは気にせんでええから。」 和葉の笑顔は優しくて、でも、どこかとても悲しそうだった。 「・・・・・・・・・。」 「元々あたしは片思いやったんやし。平次が誰を好きんなろうと文句なん言えへんし。しかも、相手が・・・・・・・・・・蘭ちゃんやったら・・・・・・・・・・ あたしんなん勝ち目無いんやし・・・・・・・・・。」 「 違うんだ!!服部が蘭を好きなわけじゃないっ!! 」 新一は和葉の誤解を解いてやりたかった。 少しでも和葉の苦しみが減るように。 「あれは蘭が・・・・・・蘭が・・・・・・・・。」 それなのに、そこから先が言葉に出来ない。 自分の不外無さに、新一は土下座をして和葉に謝った。 「蘭を許してやって欲しい!アイツをそこまで追い詰めたのはオレなんだ!オレがアイツを待たせ過ぎたから。」 和葉は慌てて立ち上がらせようと、 「ちょっと工藤くん!そんなんせんでええて!はよう立って!」 新一の腕を引っ張った。 だが、新一は立ち上がろうとしない。 「もうええから。工藤くんの気持ちはよう分かったから。」 和葉は新一の前に自分も座り込んだ。 「ほんまにもうええんよ。工藤くん・・・・・蘭ちゃんとこに帰ってあげたんやろ・・・・・。」 「和葉ちゃん・・・・・・・。」 「やったらええやん。」 和葉の微笑みは、新一には今にも壊れてしまいそうに見えた。 ・・・・・・・・・・・壊したくない・・・・・・・・・・・。 そう思ったのと同時に、新一は腕の中に和葉を抱きしめていた。 「泣きたいんだったら、思いっきり泣いた方がいいよ。我慢しなくていいからさ。」 ・・・・・・・・・・・温かい・・・・・・・・・・・。 和葉はその腕の中で今迄押さえていたモノが溢れ出した。 静に流れ始めた涙は、しだいに嗚咽を伴い声までも出てしまう。 両手は新一のシャツを握り締め、体全体で泣いてしまった。 和葉が人前で初めて見せる姿だった。 どのくらいそうしていただろうか。 和葉は泣きつかれて、新一の腕の中で眠ってしまった。 そんな和葉を新一はそっと抱き上げて、ベットまで連れて行く。 優しく寝かせ、離れようとするが和葉の手は新一のシャツを握り締めていて離れない。 「へいじ・・・・。」 和葉のその一言は、新一に違う感情を呼び起こさせた。 ・・・・・・・・・・・アイツは蘭に触れた・・・・・・・・・・。 「和葉ちゃん・・・。」 和葉はゆっくりと目を開き、再びその瞳を閉じた。 そっと、その閉じられた瞼に口付ける。 ・・・・・・・・・・・この人は・・・・・あたしと同じ・・・・・・・・・・・。 キスはどちらが誘ったのか、分からなかった。 2人はお互いの傷を埋め合うように、朝まで同じ時を過ごした。 新一は平次には何も言わないと約束して帰っていった。 和葉はまた独りっきりに戻ったのだ。 それから和葉が自分の変化に気付いたのは・・・・・・・・。 |
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