「 CROW - after that - 」 7。。 | ||
「私たち、これからも友達だよね・・・・。」 「ええの?」 「和葉ちゃん以外誰が私の愚痴聞いてくれるの?」 「蘭ちゃん・・・・・・。」 「私のこと一番分かってくれるのは和葉ちゃんでしょ?」 「・・・・・・ほな・・・・・あたしのも聞いてな・・・蘭ちゃん。」 「まかせて。」 2人は誰よりも似ているから。 幼馴染の探偵に恋をして、壊れてしまう程の寂しさを味わって、そして今も心に傷を抱えたまま。 愛する人よりも、その気持ちを分かってあげられる。 彼らには分からない、彼女たちだけが共有出来るモノ。 2人はお互いに少し切ない笑みを交わした。 そして、いつもの笑顔に戻っていった。 「下、おりよっか。」 「そやね。待ちくたびれて、出来上がってんとちゃう?」 「どうかなぁ?新一、ザルだから。」 「そうなん?平次はワクやねん。」 「「 ぷっ! 」」 「そんなとこまで似なくていいのにね。」 「ほんまやわ。」 和葉と蘭はそんな話をしながら、階段を下りていった。 平次と新一は、グラスになみなみと注いだブランデーを一気に飲み干していた。 酔いたい気分だった。 自分の不甲斐なさに、こんなにも泣きたい気持ちになったことはなかったのだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は和葉の何をみてたんや・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・蘭を独りで泣かせてたのか・・・・オレは・・・・・。 2人が零れそうなグラスを再び飲みかけたとき、リビングに入って来た和葉と蘭が驚いてそれを止めた。 「ちょっと平次、何やってんの?」 「新一もよ!どうしたの?」 和葉は平次の、蘭は新一のグラスを取り上げ、テーブルに戻した。 彼らを見下ろす瞳は、もういつもの雰囲気に戻っている。 さっきの苦しそうな儚い様子はどこにも無い。 このままにしたら、彼女たちはきっとまた心の傷を隠してしまう。 そして、自分たちの知らないところで泣くのだろう。 それだけは、させたくなかった。 平次は座ったまま、きつく和葉を抱き寄せた。 新一は立ち上がって、しっかりと蘭を腕の中に抱きしめた。 突然の彼らの行動に、彼女たちはさらに驚いている。 「ほんまに、どないしたん平次?」 「新一?」 抱きしめられる腕の力は痛いくらいだ。 しかも、密かに震えているようにも感じる。 「俺は無理なんしとらん。」 平次の声は小さく和葉にだけ届けられた。 「もう、独りで泣くな蘭。」 新一は蘭の耳元でそっと囁いた。 「あっ・・・・・・。」 ・・・・・・・・・・・平次に・・・・・・平次に知られてしもた・・・・・・・・・・。 和葉は平次から逃れようと、暴れ出した。 しかし、平次の腕の力はさらに強く和葉を抱きしめる。 「離して平次!」 「いやや。」 「お願いや。離してぇな平次!」 「絶対に離さへん。」 平次の足の間に膝をついたまま、和葉は力なく平次の頭に腕を回した。 「・・・・かんにん・・・・・かんにんなぁ平次・・・・・・・・あたしが・・・・・悪いねん・・・・・・全部あたしのせいやねん・・・・・・・・。」 和葉は結婚してから、初めて平次の前で泣いていた。 自分のもっとも醜い部分を平次にだけは、知られたくなかったのに。 「あたしがアホやねん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・平次・・・・・・・・・・。」 平次はゆっくりと和葉の腕を解いて、その涙を拭ってやった。 「和葉が謝ることなん何もない。ほんまに、どうしようもないんは俺や。和葉の気持ちに気付いてやれんかった俺があかんのや。」 ・・・・・・・・・・・そうや、今も昔もお前の気持ちにもっと早う気付いてやれとったら、 こんなにも苦しめることはなかったんや・・・・・・・・・。 和葉は首を振って、その言葉を否定する。 「平次は何も悪ない・・・・・。」 「和葉を独りで泣かせとった・・・・・・・・こんなんでも・・・まだ俺のこと必要て思うてくれるか・・・・・・。」 「あたしには平次やないとあかんねん。平次こそ、あたしなんかで・・・・・・ほんまに・・・・ええの・・・・・・・・。」 「俺は和葉以外のヤツなんかいらへん。やから、もう独りで泣かんといてくれ・・・・・・・・和葉が泣きたいときは俺が側におってやるから・・・。」 「ありがとう・・・・・平次・・・・・・。」 和葉は平次の首に顔を埋めて、声を殺して泣き続けた。 平次も今度はそっとその体を大切に大切に抱きしめていた。 蘭も新一の腕の中で、小さく震えながら謝っていた。 「・・・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい新一・・・・・・・私が・・・みんなを苦しめてるの・・・・・・・・・・・。」 ・・・・・・・・・・・私・・・・・・・新一の優しさに甘え過ぎてた・・・・・・・・・・・・・・・。 「もういいんだ蘭。それ以上に蘭自身が苦しんできたんだろ。」 蘭は何度も首を振った。 「私が新一を信じられなかったから・・・・・・私が・・・・・私が・・・・・・はっ・・・」 「言わなくていい!」 新一は抱きしめる腕に力を込めた。 「何も言わなくていいから。蘭をそこまで独りにしてしまったのはオレだから・・・・・・。ごめんな蘭・・・・・・もう絶対独りになんかしねぇ。」 「・・・・新一・・・・・・しんいち・・・・・。」 蘭の声は壊れてしまいそうな程切なくて、消えてしまいそう程儚く、新一に届いた。 ・・・・・・・・・・・ごめんな・・・・蘭・・・・・・・・まったくオレはいつまで蘭を泣かせてんだ・・・・・・・・・・・・・・・。 「愛してる蘭。誰よりも誰よりも誰よりも、蘭だけを愛してる。だから、もう独りで泣くなよな。」 そう言っている新一自身が、今にも泣き出しそうだった。 「私も新一だけ・・・・・・ううん・・・・・・・私は新一しか愛せないよ・・・・・・・・。」 腕をそっと伸ばして、新一を抱きしめ返した。 新一の温かい温もりが蘭には切なくて嬉しかった。 「・・・・・・こんな私が・・・・・・・・新一に甘えてもいいの・・・・・・・・・・・。」 「構わねぇ。オレにそんなことが出来んのは、世界中で蘭だけだからな。いくらでも、甘えてくれていいぜ。」 「ありがとう・・・・・新一・・・・・。」 蘭は新一の胸に顔を埋めて、流れる涙を止められなかった。 新一もすべてのモノから蘭を守るように、優しく抱きしめていた。 |
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