「 CROW - glance around- 」 1。。 |
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■ 大阪府警本部にて ■ 「お疲れさん。」 華月はそう言いながら和葉に、ココアの入った紙コップを差し出した。 「おおきに。」 二人がいるのは、大阪府警本部の一角。 自販機などがある、言わば休憩所みたいな所だ。 和葉は今日、府警が追っていた犯人を偶然捕まえてしまい、自分の所属する所轄署では無くここまで護送して来たのだった。 「大手柄やね和葉!」 「そうなんやけど・・・・。」 嬉しそうな華月に比べて、お手柄の和葉自身はなんだか浮かない顔をしている。 「どしたん?嬉しくないん?」 「嬉しゅうないことは無いんやけど・・・。」 「もしかして、服部くん?」 「う〜〜ん。平次、怒るやろなぁ〜って。」 府警が追っていた犯罪者なのだから、もちろん凶悪犯。 平次は、和葉がそういった犯人と直に接することを酷く嫌がるのだ。 和葉も刑事なのだから、それでは仕事にならないというのに。 「服部くんの過保護度って、結婚してから倍増してんやったね。」 華月の本心から言えば、アホ度が倍増しているらしい。 「「 はぁ・・・。 」」 二人のまったく意味の違う溜息は、綺麗に重なっていた。 そんな二人を盗み見している輩が、周りに沢山いることにはまったく気付いていない・・・・・というより視界に入ってない。 和葉は美人としてだけでなく、あの服部平次の愛妻ということでも府警では超有名人。 一方、華月も本人に自覚があるのか無いのか、和葉に負けず劣らず美人なのだ。 しかも、こっちも府警bQの色男と言われる久保冬樹の彼女。(bPは平次?) この二人が揃っていて、男性陣の熱い視線や、女性陣の嫉妬と羨望の入り混じった視線を集めないわけが無い。 しかし、近寄って来る者やましてや話かけて来る輩などはいない。 どんなに内心そうしたくても、それがいかに自殺行為であるかを、皆、よ〜〜く知っているからだ。 この二人に、むやみに近寄ると危険。 もちろん、元凶は平次と冬樹。 前に一度、他府県の若い刑事たちが彼女たちを強引に飲みに誘っていた場面を、運悪く彼らが目撃してしまったことがあったのだ。 普段それなりに愛想が良い二人が、一瞬にして、不機嫌オーラMAXの殺気を全身から漂わせ始めたから、さぁ大変。 当事者はもちろん、部外者までも、フリーズさせている。 「何や楽しそうな話してるやん。俺もまぜてくれへんか。」 ニッコリと笑う平次だが、その笑顔は背筋が凍りつきそうな程・・・・・・怖い。 「そうだ服部。丁度、応接室が空いたとこだしさ、あそこで聞かせてもらおうよ。」 さり気なく言う冬樹の声は、ブリザードより体に刺さる・・・・・・痛い。 「そやな。立ち話もなんやから。ほな、行こか。」 応接室とは、一般には「取調室」とも言う。 その後、一応接客という名目で連れていかれた者たちの絶叫とも言える悲鳴が、廊下に響き渡ったのは言うまでもない。 狭い部屋の中で何があったかは、誰も語ろうとしないので分からない。 分からないが・・・・・・それを見ていた全員が、「絶対経験したくない事BEST1」と無意識に思ったとしても当然だろう。 部屋から出てきた可哀想な輩は、全身真っ白に凍っていたのだから。 しかし、逆の場合は少し違った。 彼女たちは、平次と冬樹が女の子たちに誘われているのを目撃しても・・・・・・・・・・無関心? 特に何の反応も示さない。 ただ、他の若い男性と楽しそうにするだけである。 またも、不機嫌度数が急上昇するのは彼らだけ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当に怖いのはどっちだ? 「和葉、今日はもう帰るん?」 「う〜〜ん?どないしょ。」 時間は19時を過ぎている。 さっき、義母に電話したら「子供らのことは心配せんでええから、たまにはゆっくりしてき。」と言ってくれた。 「服部くんは?」 「平次なん待ってたら、朝がきてまうわ。」 「やったら、久しぶりに二人で飲みに行かへん?」 「そやね。それええかも。やけど華月こそ久保くん放っておいてええん?」 「かまへん。かまへん。うちは和葉の方がええもん!」 「かづき〜〜〜〜!あたしも華月大好きや〜〜〜!」 ギュッ! お互いに抱き合ってじゃれている。 楽しそうな二人に、それを見ていた男性陣が「オレも〜〜!」と心底思うが冗談でも行動には移せない。 うつせば、確実に命が無くなる。 和葉と華月はそのまま、平次と冬樹をほぽって行ってしまった。 後からそのことを知った和葉の旦那と華月の彼氏が携帯片手に事件の時よりも早い速度で飛び出して行くのはお約束。 愛しの彼女たちは、きっと・・・いや・・・ぜ〜〜〜ったいに悪い虫を引き寄せているから。 ちゃんちゃん。 |
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