「 CROW - glance around- 」 6。。 |
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■ 街角にて ■ 「ドアの指紋と死体に残されとった毛髪で物的証拠はあるんやけどなぁ・・・・動機がイマイチ分からへん・・・・。」 「そやね。あの指紋は新しいモンやったから、でも髪の毛はどうやろ?」 「何や?引っ掛かるコトでもあるんか?」 「う〜〜ん・・・・。色が違うとるように見えたんやけど・・・・・。」 平次と和葉は、さっき和葉の所属する所轄内で起きた事件の話しをしながら歩いていた。 平次はいつごろからか、推理に行き詰ると和葉に事件のあらましを聞かせ、意見を求めるようになっていたのだ。 そして和葉が見つける新しい着眼点は、平次を真実へと導いてくれる。 「色〜?落ちとったんも黒髪やったやんけ。しかも長さも同じくらいやったし。」 「黒髪って・・・・それ言うたら日本人みんな同じやん。」 「ちゃうんか?」 「・・・・・・・・・。あの人の髪は光に当たると赤っぽくなっとったけど、落ちてた髪の毛は黄色ぽかったように見えたんよ。」 「そんなん目の錯覚ちゃうか〜?」 「そやけど・・・・・・・赤と黄色って違い過ぎると思わへん?」 「やったら・・・・・真犯人は別におる言うことやんけ・・・・・・・。」 平次は腕組みをして考え始めた。 しばらく黙って推理を組み直し、 「前の女ちゅうことも考えられるいうことか?」 と隣にいるであろう和葉に問いかけた。 が、答えが返って来ない。 「和葉?」 そこでやっと和葉がいないことに気がついた。 慌てて回りを見回すと、遥か後方のショーウィンドーをじっと見つめている和葉。 平次は急いで和葉の元まで戻って行った。 「急に立ち止まるなや。焦るやんか。」 「えっ?あっ。かんにん平次。」 和葉が見ていたのは宝石店のディスプレイだった。 「何や欲しいモンでもあったんか?お前が宝石に興味持つなん珍しいやんか。」 「ちゃうよ・・・・。」 和葉の様子はどこか普段と違うように平次は感じた。 「ほな何や?」 なかなか言い出さない和葉だったが、平次は珍しく辛抱強く黙って待った。 こんな、少し憂いを含んだような和葉を見ていたかったのも理由のひとつではあるが、その憂いの理由が1番気になることだったからだ。 「あんな・・・・・あの右側にお花が3つ立てに並んでるのがあるやん・・・・・・。」 ゆっくりと和葉が指差す方を見ると、そこにはシェープカットのダイヤモンドが5つ円形状になって立てに3コ連なっているモノだった。 「あれな・・・・・ロスにいるころあたしが住んでた近くのお店にもよ〜似たんがあってな。通るたんびに見てたんよ。 キラキラした桜ん花が3つ咲いてるみたいで綺麗やなぁって。 いつか、こんなんが似合う女性になれたらええなぁなんて・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・。」 「でも・・・まだまだ無理そうやわ・・・。ごめんなぁ、推理のジャマしてもうて。」 和葉は笑って平次へ顔を向けた。 その笑顔はダイヤモンドの桜に負けてないと平次は思い、 「そんままでもよ〜似合うと思うで。」 と微笑み返した。 あのころとは違い今の和葉は、十分にこのネックレスに合うだけだけの女性としての魅力を持っている。 そして平次も、あのころとは違う。 「おだてても何も出〜へんよ。」 「そんなんやないで。・・・・そうや!似合うかどうか付けてみたらええやんか。」 「えっ?!」 そう言うやいなや、平次は和葉の腕を引っ張って店に入ってしまった。 唖然としている和葉をよそに、平次はパッパッと店の人に用件を伝えネックレスが二人の前に差し出される。 間近で見るとその輝きはさらに和葉を魅了した。 「やっぱキレイやなぁ・・・。」 「これ付けてみてもええかな?」 平次の問いに店員は笑顔で、 「お付けしましょうか?」 と言ったのに対して、 「おおきに。やけどええわ。」 と自ら和葉の首にそっと飾った。 「どうや?よ〜似合うとるやんか。」 和葉の前に置かれた鏡を肩越しに覗き込む。 和葉は照れたようなはにかんだような表情を浮かべている。 「本当に良くお似合いですよ。」 店員の言葉も営業用のお世辞では無いようだった。 「ほな、これもらうわ。このままでもええやろ。」 平次は店員にそう言うとカードを差し出した。 「ちょっと平次?」 和葉は慌てて平次を振り返る。 「たまにはええやんか。それにもうすぐバレンタインやしな。」 「それやったら余計逆やん。」 「そんなんどちでもええんやで。世界的にみたら男が好きな女にプレゼントする方が多いんやからな。」 平次らしからぬ言葉をさらっと残して支払いに行ってしまった。 その場に残された和葉に店長らしき女性が、 「素敵な旦那さまですね。」 2人がしている結婚指輪に気付いてたのだろうそう微笑みかけてくれた。 「ありがとうございます。ほんま、あたしにはもったいないくらいの夫なんです。」 そう答える和葉は、とても幸せそうだった。 平次はケースを入れた袋を受け取り、嬉しそうな和葉と共にお店を後にした。 「ありがとな平次。」 そう言って腕に縋り付いてくる和葉があまりに可愛くて、平次はついつい照れ隠しでまた事件の話しを始めてしまった。 和葉もそんな平次の気持ちが分かっているのか、腕を絡めたまま素直に聞いている。 平次の切り替えの早さにも慣れているのだ。 「そやね。それやったら動機も十分あるし、あの人に罪を着せようとしたんも頷けるわ。」 「写真に写とった女ん中におる思うか?」 「それは無いと思う。」 「何でや?」 「元カノが写ってる写真なん、あたしやったら絶対飾らせへんから。」 上目使いで拗ねたように見られて、 「おっ俺の写真は全部捨てたやんか・・・・。」 と声が上ずってしまった。 どうも今日は上手く切り替えられてないようだ。 「そうやった・・・・。」 「和葉はどうなんや?いうより、お前は俺以外に付き合うたヤツおるんか?」 「えっ?あたし・・・・・あたしは・・・・・あっ!!」 和葉は何か思い出しように立ち止まると、平次から腕をするりと外した。 しかも、平次をおいて走りだしてしまった。 「おいっ!こらっ!ちょう待たんかい!何思い出したんや!!ちゅうか男おったんか〜〜〜!!」 平次はもう事件どころではない。 犯人の目星は和葉の助言でだいたいついている。 今は和葉の元カレの方が重大問題なのだ。 「誰やねん!!和葉〜〜〜〜!!」 「ひ〜み〜つ〜〜〜!」 和葉の声はどこか嬉しそうだ。 平次が追いついて和葉の首に腕を回すと、その胸元で永遠の桜が綺麗な輝きを放った。 和葉が思い出したのは・・・・・ happy valentine |
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