「 CROW - glance around- 」 9 |
■ 元彼って何やねん! ■ @ (その1〜3) |
「和葉〜〜〜〜!」 「華月〜〜〜〜!」 2人は大阪府警本部にて、一目も憚らずに抱き合って再会を喜んでいる。 冬樹が名古屋県警、神奈川県警と辞令の度に華月はしぶしぶと彼に同行していた為だった。 そして今は一足先に呼び戻された平次と共に警視庁勤め。 平次はもちろん単身赴任。 それを聞いた華月が自分もそうすると、冬樹を一人残してさっさと大阪に戻って来たのだ。 「これからまた一緒やね。」 「ほんまや。またよろしゅうな。」 これはまさに言葉通り。 華月は昇進して、今では刑事なのである。 そして和葉も平次が本庁へ行った後、なぜか府警本部の捜査課に配属されていた。 そこに華月が入って来たので、ここに和葉&華月の最強ペアが誕生したのである。 「華月、たっちゃんとなおちゃんは?」 「元気やで。もう元気過ぎて手におえへんわ。」 竜希と尚希は冬樹と華月の子供で、しかも双子の男の子。 来年の春から改方学園小等部に入学予定。 「葉ちゃんと良ちゃんは相変わらずなん?」 「そうや。葉は最近探偵の真似事みたいなん初めて困ってるんよ。良平は剣道ん他に空手まで始めてしもて全然家におらへんし。」 「服部くんがおらへんから寂しいんちゃうの?」 「まぁ、それもあるんやろうけど・・・・。」 「あっ。かんにん和葉。1番寂しいんは和葉やったね。」 「もう何言うてんの〜。」 「そうな〜〜ん?」 「そうや!」 「ほんまに和葉は強がりやなぁ。」 華月は大きくワザとらしく溜息を付いてから、 「そんな和葉に今日はビックリするプレゼントを持って来たんやけどなぁ〜。いる?」 と和葉の顔を覗き込んだ。 「プレゼント?華月が?あたしに?誕生日でもないんに?」 和葉は華月の突発的な行動には一応用心をすることを心がけているようだ。 「細かいことは気にしなさんなて。いるん?いらんの?」 「そんなに言うんなら貰うとく。」 するといきなり華月が笑顔全開になった。 その様子に和葉が”まずったかも”っと思ったが時すでに遅し。 華月は走って行ったかと思ったら、すぐにある人物を連れて戻って来たのだ。 「はい。プレゼント。」 「・・・・・・・・・・・・・。」 和葉は余りの驚きに、口を半開きにした状態で固まってしまったではないか。 「ほんまにオレの和葉や〜〜!」 しかも、その人物は嬉しそうにそう言うと和葉をしっかりと抱きしめたのである。 和葉はまだ固まったまま。 それを見ていた捜査課の人達は、この場に、この大阪に平次がいないことを感謝した。 もし、こんな場面に出くわそうものなら、その後の低気圧が計り知れないからである。 「ず〜〜〜っと会いたかったんやで。」 チュッ。 まだまだ固まったままの和葉に挨拶のキス。もちろん唇に。 『 ひぇ〜〜〜〜〜〜。 』 フロアー全体からそんな声が聞こえて来そうな雰囲気だ。 平次がいないことを、その場にいた全員が・・・・やく一名除く・・・・心底心から神様に改めて感謝していた。 突然現れた男が和葉にキスするなんて、平次の不機嫌がどれほどのモノになるのか想像だに出来ないからだ。 「はいはい。ちょっと、北川さんもいつまで和葉に抱きついてんの?」 連れて来た張本人である華月が”はなれて。はなれて。”と2人を引き離した。 もちろん抱き付いていたのは北川裕希だけであって、和葉は意識がどっかいったままだ。 「和葉もいつまでそうしてんの?!」 「あっ・・・・・・・え〜と・・・・・・・・裕希?」 「なんや?やっと思い出したんか?」 裕希は再度和葉にキス。 「なっ!!ちょっと何すんの!」 和葉は慌てて両手口を押さえて後ずさった。 どうも1回目は認識されていなかったらしい。 この空間にいる人間はすべて、この2人から目が離せないでいるようだ。 「うわっ!それはつれな過ぎやで和葉。やっとお前んこと迎えに来た彼氏に向ってそれは無いやろ〜?」 「はぁ?」 「オレが日本に帰ったら絶対和葉んこと迎えに行く言うたやんか。」 「へっ?」 「オレと一緒にならへんか和葉?」 「・・・・あたし結婚してるし・・・・華月に聞かへんかったん?」 「うちはちゃんと言うたよ!」 「やったら・・・。」 「そんなヤツとさっさと別れてオレとやり直さへんか?絶対幸せにするし。」 「もう十分幸せやし・・・。」 「和葉のこと一人残して行ってまうようなヤツより、オレの方がええと思うで。」 「一人で行く言うより、行かしたし・・・・。」 実際平次は和葉も連れて行こうとしたのだが、子供たちがいるからダメだと一人でほっぽり出されたのだった。 和葉は取り合えず華月を廊下の隅に引っ張った。 「ちょっと華月!どう言うことなん?!!」 「うちかて知らへんよ。ほんまは、さっき偶然駅で会うただけなんやし。」 「それ、ほんまにほんまなん?何か企んでへん?」 「ほんまやって!うちかて服部くんはともかく、葉ちゃんや良ちゃんに嫌われたないんやから。」 「そやったら何なん?あれ?」 「うちに聞かれても・・・・嬉しうないん?」 「そういう問題ちゃうやろ!」 「服部くんおったら面白ろかったのに〜〜残念やわ・・・。」 「か〜〜づ〜〜き〜〜〜!!!」 和葉にギロッって本気の視線で睨まれて、流石に華月も苦笑い。 「冗談。冗談に決まってるやん。」 そんな2人に構うことなく裕希は悠然と、 「和葉〜〜。今日は挨拶だけやしもう帰るわ。明日、ゆっくり会おうな!ほな、華月ちゃんもまたな。」 そういい残しさっさと一人帰って行った。 呆然とその後ろ姿を見送る二人。 そして、二度と来るなと見送るその他大勢。 それぞれの胸に、嫌〜〜な予感を残しながら。 |