平 heiwa 和 3
■ 和葉の気持ち 3 ■

「うっ〜〜・・・・・・っっ〜」
ずきずきと酷い頭痛に目が覚めた。
うっすらと目を開けると、見慣れない天井が見える。
周りを見渡そうとちょっと頭を動かしたら・・・
「うっっ!〜〜〜〜〜〜」
目眩が起きそうな程の頭痛が襲ってきたんや。
頭が割れるように痛い・・・、なんで?


「あっ、和葉ちゃん気いついた?」
心配そうにあたしを覗き込む、平次ん家のおばちゃんの顔が見える。
「あ・・・た・・・しっ・・・うっっ〜〜〜〜・・・・・・・」
思わず顔を顰めてしまう。
頭痛にもまして、喉も痛い。
焼け付くようや。
ぼ〜っとなって、涙目になってしもた。
「無理せんでええよ。和葉ちゃん肺炎になってるんやから。」
・・・・はっ、肺炎・・・・・・?・・・・・・・
あたしはきっと不思議そうな顔したんやろ、おばちゃんが優しく説明してくれた。
「もう、ほんまにびっくりしたんやで。毎日夏期講習に来てた和葉ちゃんが来いへんからお友達が心配して、和葉ちゃんの携帯にも家のほうにも連絡入れたのに繋がらん言うて、平次に電話して来たらしいんよ。ほんで、あの子も何遍和葉ちゃんの携帯鳴らしても出えへんからて、慌てて家まで様子見に行ったら和葉ちゃんが部屋で倒れててんよ。そらもう、あの子の慌てよう言うたらなかったわ。救急車呼ばなあかんのに、私に電話してきて
『かっ和葉が部屋で倒れとる。なっなんや熱もごっつうあるみたいや。』
って、電話の向こうでオロオロしとるし。
『すぐ救急車呼ぶから、あんたは和葉ちゃんの側におり!』
言うたら、すぐに電話切りよったんよ。それから私もすぐに救急車に電話して和葉ちゃん家に行ったら、あの子、和葉ちゃんを毛布でくるんで腕に抱え込み玄関に座っとったわ。もうあの色黒が、蒼白な顔してやで。」
おばちゃんは凄く優しい顔であたしを見とる。
あたしはどんな顔しとるんやろ。
自分でもわからへん。
おばちゃんの声があたしの頭の中を通り抜けていった。
「もう少し寝たらええよ。私が側におるさかい。安心しておやすみ。」
あたしは再び目を閉じた。


やっぱり平次はあたしに優しい。
彼女が出来てもあたしに優しい。
それは幼馴染みの優しさだから。
兄妹としての優しさだから。
変わらない平次の優しさだから。


あたしの心は体の熱に逆らって、誰にも気付かれないように静かに・・・シズカニ・・・コオリハジメトッタ・・・。


それから、あたしは一週間近く入院した。
仕事で忙しいお父ちゃんも平次ん家のおじちゃんもお見舞いに来てくれた。
もちろん、平次も何度かお見舞いに来てくれたんや。
少しずつ健康をともり戻していったあたしは、平次とのいつものやりとりも軽快にこなしている。
「まったくオニの霍乱やな。」
「はぁ?あんた病人に向かって何言うてんの。」
「そうやろが、普段しなれん事をするからこうなるんやで。」
「あんたと違ごうて、あたしはちゃんと毎日勉強してます。」
「そやったら何で、このくそ暑いのに肺炎なんぞにかかるんや〜?」
平次が意地悪い笑顔をたたえて見下ろしている。
「うっ・・・そっそれはエアコンのせいであって、あたしのせいや無い。」
あたしは ふん! と顔を背けた。
「どうせ、髪でも乾かしとる間に眠うなって、そのまま寝こけたんやろが。」
「うっう〜〜〜〜〜。」
あたしはジト目で平次を睨んだが、平次は「やっぱりや〜」と言わんばかりに鼻で笑っていた。


表面上はいつもの二人のやりとり。
違ってたんは、・・・・・コオリツヅケテイル・・・・・・・アタシノココロ・・・・・・。



そう、あたしは仮面を・・・いつものあたし・・・という仮面をかぶることにしたんや。





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