平 heiwa 和 12
■ 平次の気持ち 3 ■

『はっっっっと〜り〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!』
あまりの絶叫に警報鳴り響く中でさえ、一課のほとんどの人間が俺の方を振り返ったんや。
俺は携帯落として固まっとる。
「なっなんでもないんで。」
周りに苦笑いと変なお辞儀をしながら、慌てて携帯に手を伸ばす。
『おい!服部!聞いてんのか!はっとり〜〜〜!!!!』
落ちた携帯からまだ工藤の大声がしとる。
「こ〜ら工藤、脅かすなや。びっくりするやんけ。」
拾った携帯を耳から10cm以上離して話す。
『うっせい!おまえすぐ来い!オレん家まで来い!!!!』
「はぁ・・・何言ってんねん。俺、今日こっちに帰ったばっかやで。」
『つべこべ言うんじゃねぇ〜〜!!とにかく来い!!!!』
この工藤の剣幕は何んや。
「ちょ〜〜〜待てや。自分、何でそないに怒っとんのや。俺これから事件にっ・・」
『おめぇ、そこ大阪府警本部だろ!今日だけは警察に任せてろ!!』
と珍しいセリフに俺の言葉は遮られた。
「工藤のセリフとも思えんな。ほんまに、どないしてん自分?」
電話の向こうで大きな溜息付いとる。
『服部、いいか、よく聞けよ。』
「ああ、なんや。」
『あめぇ、和葉ちゃんを永遠に失っても平気か?』
「  !?  」
『答えろよ!!』
「いきなり、何言う・・」
『いいから答えろ!!!』
「・・・・・・そんなん・・考え・・ら・・れ・・・へん。」
『だったらすぐ来い!!!どんなことをしても来い!!!!!』
俺は工藤の言葉が終わらへんうちに、走り出しとった。
腕時計を見る。
今ならまだ間に合うはずや。
こんときも、刺す様な視線を感じ取ったが構っとられへんかった。
バイクで新大阪に向かう。
町中でこん時ほど無茶な運転したことあらへん。
バイクを駅前交番に無理矢理預け、構内に走り込む。
人にぶつかるんも構わずに、どうにか最終の「のぞみ」にすべり込んだんや。
シートに座ってやっと息をつく。


それにしても、工藤のあの剣幕は何や?
しかも、和葉を永遠に失うやて・・・・・


俺ん中の不安は全身を駆け巡っとった。


大阪から東京は、こんなに遠かったんかちゅうくらい長く感じた。
考えとるんは、和葉のことばかりや。
あいつの態度や言葉、表情に仕草。
どっか変わったとこがなかったやろか?
何で俺はあいつの変化に気付いてへんのや?
あいつの一番近くにいたんは俺やなかったんかい!


「・・・・・・・まさ・・か・・・」  


俺はあることに思い当たった。
もしかして、あいつ気付いとったんか・・・・・・・。


思い返してみる。
俺はそれを微塵も態度に出してないはずや。
あいつにだけは、気付かれとうなかったから。


あいつが俺んことを、幼馴染み以上に想ってくれとることを知っとったから。



心臓が動くのを拒絶しようと鈍く痛んで、どうしようも無い罪悪感が襲いかかってきた。



それから工藤んとこに辿り着いたは、日付が変わってからやった。






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