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平 heiwa 和 14
■ 快斗の気持ち 1 ■

工藤家のセキュリティを軽くかわして招待状を置く。


『    月への階段を上がりし赤き姫  我が花嫁に相応しき宝珠   怪盗KID    』


こんなモンでいいだろう。
あいつら仮にも名探偵なんて呼ばれてるんだからよ。


オレはこの数日間、西のあいつをずっと見てたんだ。
何度か気付かれそうになる位、睨みつけたりしてさ。


あいつが姫に相応しい男なのか。
姫を今の苦しみから、助け出せるヤツなのかを見極める為に。




オレが姫と出会ったのは、KIDとしての仕事である国に行った時だったんだ。


「予告時間まで、あと10分。そろそろ行くとすっかな。」
見物人の中に紛れ込んでたオレは、ポケットに手を突っ込んで目的地に歩き出そうとしていたんだ。
そして、ふと視線を上げた先に彼女がいた。
「うん?あれは確か・・・・。」
そうだ、あの色黒の幼馴染みじゃねぇか。
「げっ!もしかして、あいつらも来てんのかよ。」
慌ててそれとなく周囲を見回すが、それらしき姿は見あたらねぇ。
いたとしても、こんなとこにはいねぇか、だよなぁ。
うん?でも、さっき下見した時にもそれらしき気配はなかったよなぁ。
不思議に思いもう一度彼女を見た。
あの娘・・・あんなんだったっけ・・・?
予告先の美術館を見上げる彼女に疑問を感じたんだ。
確かに色の白い娘だったけどよう、こんな人形の様な色だったか?
それに髪型も違うし、何より彼女自身が持ってる雰囲気が、オレの記憶と全く違ってたんだ。
オレの記憶では、彼女はもっとこう・・・。
やっやべぇ。
こんなことしてる場合じゃねぇんだよ。
予告時間まで、あと5分。
とにかく、仕事だっ仕事!
今日もちゃっちゃと終わらせてやるぜ!!


思った通りに今日はやけにあっさりしたモンだった。
あいつらもいなければ、白馬もいねぇし中森警部もいねぇ。
なんか物足りないくらいだぜ。
そこで彼女の顔が頭を掠めた。
急いで探すと、彼女は帰り始めた人波に逆らって、まだ同じ場所に佇ずんでいた。
何を考えてるのか分からねぇけど、その横顔はとんでもなく辛そうだったんだ。
オレはどうしてもほっとけなくて、気付かれないように、歩き出した彼女の後を付いていった。
肩を落として、頭を垂れて歩く後姿は、すげぇ儚くて今にも消えちまいそうだ。
もしかしてオレの勘違いじゃねぇのかって思った。


オレの知ってる彼女、遠山和葉にこの姿は重ならない。


一応ライバルたちについて知っておくのも、怪盗としての嗜みだからよ。
彼女はとぼとぼと薄暗い街頭の下を歩いて行く。
慣れた様子で路地を曲がる。
いくつ目かの路地を曲がった先に、柄の悪い野郎どもが数人たむろしていた。
彼女は気付かないのかそのまま進んでいく。
オレは白い衣装に身を包み、建物の上に姿を隠した。


黒羽快斗がここにいることがばれるとまずいからな。
喧嘩にでもなって、おまわりの世話になった日にゃあ、しゃれにもなんねぇ。
オレ偽名で入国してっからよ。


何も起こらない事を願ったけどよ、それはやっぱ無理だった。
案の定、野郎どもは彼女にちょっかい出し始めた。
彼女は無視して通り過ぎようとするが、酔っ払らってるヤツラには関係ないようだ。
嫌がる彼女を無理矢理数人で押さえ付けようとしている。


やっぱらしくねぇ、だってそうだろ。
彼女、合気道の有段者のはずだぜ。
それなのに、普通の女みたいにただ暴れているだけだ。


そう思いオレが飛び出そうとした瞬間、彼女は野郎の一人が持っていた瓶を奪い取った。


そしてそれを地面に叩きつけ、割れて尖った先を自分の心臓に向けて振り下ろしたんだ。





平次の気持ち 4 快斗の気持ち 2
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