平 heiwa 和 18 | ||
■ 平次の気持ち 6 ■ | ||
工藤の言うことは、もっともや。 冴子んことも和葉んことも、俺はまったく気付かへんかったんやし。 「はっ・・・。」 自嘲すると、口ん中に血の味が広がった。 「俺はほんまにアホやなぁ・・・。」 「わかってんなら、挽回しろ。」 顔を上げると工藤が挑発的な笑みを作っとる。 「アイツが、KIDが和葉ちゃんを匿ってんならしばらくは安心だろう。多分探しても見付からねぇだろしなぁ。」 「ああ。」 「しかし、どうして9月なんだ。まだ、1ヶ月以上も先じゃねぇか。」 「俺にオトシマエつけて来い、ちゅうことやろ。」 「で、どうすんだ。」 「きっちりつけたるわ。和葉の分も、お礼付けてな。」 俺もお返しに口ん端を上げてみせた。 「相手は現職大臣の一人娘だぜ?」 「関係あらへん。」 「おまえの初体験の相手だぜ?」 俺は工藤を睨み付ける。 「そうだろ。」 「・・・・・・・・。」 「ほんとに、分かり易いヤツだな。」 目が思いっ切り笑っとる。 「関係あらへん。」 「和葉ちゃんの方が大切か。」 「あたりまえや!」 「最初からそうだったんだろ。だから和葉ちゃんには、必死で隠したんだ。違うか?」 「・・・そうや。」 「和葉ちゃんへの気持ちに自信が持て無くて、他の女で代用出来るか試してみた。」 「・・・・・・・・。」 「遠からずってとこか。ほ・ん・と・う・に・バカだな、お前。これに懲りて、二度とこんなマネすんなよな。」 「誰がするか、ボケ。」 「しゃ〜ね〜な〜、信じてやるよ。」 そう言うと工藤は立ち上がって、 「もう一杯コーヒー煎れてやっからよ。それに何か食うだろ。蘭がサンドイッチ作ってくれてんだ。」 「いや俺・・・」 「ぜってぇに食え!蘭が作ったモノを残すんじゃねぇ!」 とキッチンに向かった。 「おまえもねぇちゃんが絡むとバカになってんで。」 溜息混じりに呟いてみた。 新幹線の始発に合わせて、早々に工藤家を後にしたんや。 オーストラリアへの手配は、工藤がしてくれる言うから任せた。 そん代わり、報告寄こせっちゅことや。 アイツはこっちの事にも、KIDが絡んでくる思うてるんやろ。 家に帰るとおかんが鬼んように怒っとった。 あっあかん、行きの新幹線乗ってから携帯マナーモードにしたまんまやんけ。 ひたすらに謝って、けど結局、途中で逆ギレした俺はそのまま部屋ん入って寝ることにした。 工藤にはあないな風に言うたけど、冴子に惚れとったんも事実や。 和葉とは違うタイプやし、何や俺には新鮮やった。 女と付き合うたんも始めてやったしな。 そやけど、違和感だけは拭い去れへんかったんや。 和葉と一緒ん時のような安心出来る感じには、どうしてもなれへんかった。 冴子は俺の気持ちに気付いとったんやろな。 そやから、あないな写真を和葉に送り付けたんや。 そして、あの映像。 あれはクリスマスの日や。 後にも先にも、あの日しかあらへん。 あないなモンまで、撮っとるとはなぁ。 年末年始、和葉が俺ん家に1週間くらい泊まるのを誰かに聞いて、本性を現し始めたんや。 最初は自分家に泊まりに来い、言う可愛らしいもんやった。 俺は断ったけどな。 そしたら段々、学校に行くな、家に帰るな言い出して、挙げ句に和葉に絶対に会うなになったんや。 俺が無視しとったら、今度は和葉が居るからあかんのや言うて、和葉さえ居らんようになったらええ言い出したんや。 そしてアイツの我が儘が我慢出来へんようになって、別れ言うたんは1月の終わりや。 俺かて悪いんは重々承知や、そやけど和葉んこと苦しめたお礼は十二分に払ってもらおうやないけ。 絶対に許さへん。 和葉、泣かせるヤツは、絶対に許さへん。俺自信も含めてな。 |
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