平 heiwa 和 26
■ 平次の気持ち 11 ■

俺らがブルームに来たんは、昨日や。
あのカードが示しとる教会を見つける為に、1日早よう来る必要があったからな。
お陰で2つあった教会から、1つに絞ることが出来た。
もう1こからは、『月への階段』は見れへんかったしな。
そこは小高い丘の上にある、小さな教会や。
今は使われてへんらしい。
地元の人らに聞いたら、何でも海に出て帰らない恋人を待ち続けて亡くなった女達の教会らしい。
そやから、こんな絶好の場所にあっても結婚式に使われへんのや。
KIDのいうてきた教会は、この『Shell a tear Church』に間違いあらへん。
しかし、嫌な場所を指定してきよる。
恋人に会われへん教会なんぞ最悪じゃ!


俺は一人、部屋のテラスで一服や。
今度は工藤の嫌がらせやないで。ここのホテルは全室禁煙なんやからしゃーない。
時間はまだ昼前やし。何もしとう無いんや。
工藤はねぇちゃん連れて『真珠祭』のイベントを見に行っとる。
少しでもねぇちゃんの気を紛らわそう思うてんやろ。


和葉が死のうとした。


考えただけでも、おかしゅうなりそうや。
そこまで、アイツ追い込んだんは誰でも無い俺や。
ほんまに俺には、和葉迎えに行く資格があるんやろか?


メルボルンでは結局、見付けらへんかった。
KIDと会う前に住んどったアパートは見付けたんやけど、管理人曰く本人が知人の家に引っ越すからいうって出ていったちゅうことしか、分からへんかったんや。
荷物いうても、ほんの身の回りの物しかなかった言うし。
それは、和葉が怪我したやろう日から2日後やから、荷物取りに行ったんは多分KIDや。
引っ越す前の和葉はおとなしい表情の無い女の子やったと、隣の住人は言うとった。
そういやぁ、ねぇちゃんもそんなこと言うとったな。


そんな和葉、俺は知らん。
表情の無いアイツなんか想像でけへん。


そやけど、和葉から表情を奪ったんも俺や。


今のアイツは笑えてるんやろか。


「なっなんや。」
部屋ん中に置きっぱなしやった携帯が、いきなり鳴り出したんや。
「工藤のヤツ、どうせ飯でも食おう言うんやろ。」
この番号は工藤しか知らんし、表示なんか気にせんかった。


「どないしたんや?」
『どないしてん?』


「えっ?」
『えっ?』


「・・・・・・。」
『・・・・・・。』


「・・・かっ・・・・和葉?」
『・・・。』
「和葉やろ、俺や俺!」
『・・・。』
「和葉!何か言えや!!」
『・・・あっ・・・あかん。』
「待てや!!!切んな!!!」
『・・・・・・・な・・ん・・・で・・・・。』
「オマエ何所におるんや!」
『・・・・・・・なん・・で・・・・・・・。』
「答えんかい!!和葉!!!」
『・・・・・ど・・して・・・・やっぱ、あかん。』
「切るな!たのむから・・・切らんといてくれ・・・・。」
『・・・・・・。』


「かずは。」
『・・・・・・・・・へ・・い・・じ・・・。』


「和葉、今・・・・笑えてるか・・・・・。」
『・・・・・・だい・・じょうぶ・・・・・・・。』
「怪我とか・・・してへんか・・・・。」
『・・・・・・げんき・・・・やよ・・・・。』
「・・・そうか・・・。」
『・・・へいじ・・も・・・げんき・・そう・・・やね・・・・。』
「相変わらずや・・・。」
『・・・よかった・・・。』


「・・・・・・・・・和葉に会いたい。」
『・・・・・・。』
「おまえに会いたいんや。」
『・・・・・・・・・かんにんな、へいじ。』


後は、機械音だけや。






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