平 heiwa 和 31
■ 3人の気持ち 2 ■

KIDの悲しそうな顔が見えとる。
「姫の紅い心の傷は私が持って行きます。」
何で・・・そないに辛そうなん・・・。
「あなたはあなたらしく・・・・・・。」
あたしを支えている腕に力が入る。
ベール越しにそっと優しく触れた唇。
セカンドキスも快斗やね。



姫を貫いている剣をそっと引き抜く。
あの時の様な赤い花がその胸に咲き始めた。
そして、支えていた腕の力を緩めると、姫の体が靜に傾いていく。
「さようなら、和葉・・・・。」
ベールが風に浚われていった。
姫の瞳から、綺麗な本当に綺麗な涙が宙に舞ったんだ。
「ありがとう・・・快斗・・・・バイバイ・・・。」
オレの腕から離れていく。
月光に照らされて、涙は宝石の様な輝きを放った。
この涙はオレの為だよな。
ありがとな・・・和葉・・・。



和葉ちゃんの体がゆっくりKIDから離れ、落ち始める。
服部が岬の先端に向けて走り出した。
「はっとり〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
オレの叫びと同時にヤツの体が闇に飛び出す。
落ちて行く和葉ちゃんを空中で受け止め、腕の中に抱え込む。



へ・・い・・・じ・・・・・・。
あたしは平次の腕に抱きしめられて、意識を手放した。




服部のヤツは、腕の中にしっかりと和葉ちゃんを抱え込み、真っ黒な海に落ちていく。
「 キッド〜〜〜〜 !!! てめぇ〜〜〜〜!!! 」
オレは蘭を抱えたまま、空中に佇むKIDを睨み付ける。
溢れ出てくる怒りに我を忘れそうだぜ。
さっきまで和葉ちゃんがいた場所に、紅い月の光に照らされた紅い鳥がいる。
なんだあれは?



「  永遠に解き放たれた紅き想いこそ  」

「  我が伴侶  」

「  我はこの想いと共に新たな時を生きる  」



オレは誓いの言葉を述べ、剣をそしてオレ自身を無数の白い鳩に変えていく。
鳩たちを紅い鳥を守る様に、解き放つ。
そして闇の中に姿を解け込ませた。
本当は和葉を、空中で手放すつもりは無かったんだ。
和葉がそれを望まない限り。
きっとアイツが助けてくれるからと、彼女が望んだ。
和葉は自分の命をアイツに託した。
そして、あの男はそれに答えた。
確かに返したぜ。後は、オマエしだいだ。



白い鳥は紅い鳥を導く様に夜空に消えていく。
KIDの姿はどこにもねぇ。
どこに行きやがったんだ。
さっきアイツが言った言葉。
あれは、この教会に伝わる伝説だ。
何が言いたい!
考えろ!落ち着いて考えるんだ!
きっと何か意味があるなずだ!
月は水平線から離れ、小さく色を無くしつつあった。






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