平 heiwa 和 34 | ||
■ 2人の気持ち 2 ■ | ||
新一がなぜ入り口を探しているのか分からないけど、きっと和葉ちゃん達の為よね。 私が気が付いたときには、服部くんもKIDの姿も無かった。 二人はどうしちゃったの? どうして、服部くんがいないの? 和葉ちゃんはどうなったの? 聞きたいことはいっぱいあるんだけど、新一の様子から今はどこかに隠されている地下への入り口を探すのが先よね。 私はそう思って、祭壇の周りを丁寧に探す。 「何?これ、お花?」 祭壇の後側に、真っ黒い茎に緑の花らしき植物。 思わず手を伸ばすと、花の後の石に文字が刻まれているみたい。 「新一!ちょっと来て!」 祭壇の正面を探していた新一がすぐに駆けつけて来た。 「どうした?」 「これ見て。何か書かれてるみたいなの。」 新一が真剣にそこに刻まれている文字を読んでる。 「わかったぜ!」 「新一?」 「ああ、すまねぇ蘭。この花は『Black Kangaroo Paw』と言って、西オーストラリアでは幸せの花とされてるんだ。この花がある場所に、入り口があるはずだ。」 そう言いながら、辺りを見回してる。 「あれだ!」 新一が向かったのは一つの十字架。 その墓石には、確かにその花が刻まれていた。 「この土台を動かすんだ!」 言われるままに二人で、力を合わせる。 その下からは信じられないけど、本当に地下への階段が現れたの。 平次がいる。 平次があたしを抱きしめてくれとる。 信じられへん・・・・・・。 しかも、平次があたしにキスしてくれるやなんて。 あないに平次に会うのを怖がっとった気持ちが嘘みたいや。 何でこの腕の中は、安心出来るんやろう。 やっと・・・・やっと、自分の場所に帰って来たみたいに感じる。 「ただいま、平次。」 想いが声になった。 「ああ。おかえり、和葉。」 優しくとても優しく返してくれる。 やっぱり、あたしは平次には敵わへん。 快斗が言っとったように、平次はあたしを受け入れてくれる。 なんや心から、そう思える。 やって、本当に我が儘で勝手に日本を飛び出したあたしを、ここまで迎えに来てくれたんやもん。 こんなとこまで、こんなあたしを迎えに来てくれた。 あたしの壊れたココロは、快斗が持っていってくれた。 そして、平次をあたしに届けてくれた。 あたしも平次を受け入れよう。 ありのままのあたしを平次が受け入れてくれるみたいに、あたしも平次の全てを受け入れよう。 そうやないと、ほんまにあたしはあたしでなくなってしまう。 あたしのココロに傷を付けるんは平次や。 でも、その傷を消せるんも、きっと平次だけや・・・。 今度はあたしから、そっと、そっとキスを返した。 新一の腕時計はライトにもなる。 その明かりを頼りに、私達は狭い階段を下り始めたの。 一人が屈んで通るのがやっとの広さしかない。 下から塩の香りを含んだ、湿った空気が漂ってきてる。 「大丈夫か、蘭?」 「うん。平気よ。」 新一があたしを気遣いながら、一歩一歩階段を降りていく。 あたしは新一のシャツを掴んで、その後に付いて行ってるの。 どのくらい降りていったのか、視界に僅かに明るくなってる所が見える。 「服部〜?」 新一がいきなり呼びかけた。 「工藤!こっちや!」 えっ? 本当に服部くんの声が返ってきちゃった。 しかも何だか嬉しそうな声。 辿り着いた場所は、ちょっと開けた洞窟だった。 そこに、服部くんに支えられるように和葉ちゃんがいたの。 「和葉ちゃん?本当に和葉ちゃんよね。」 「うん。蘭ちゃん。」 和葉ちゃんの白いドレスには、どこにも血の跡はなかった。 「和葉ちゃん怪我は?」 私は思わず聞いてしまった。 「心配かけてごめんな、蘭ちゃん。大丈夫やから。」 私と和葉ちゃんはお互いを抱きしめ合って、しばらく泣き続けた。 和葉ちゃんが泣いてる。 それだけで、嬉しかった。 地上に帰った私達を、白い月と海面に道を示すように繋がった月明かりが迎えてくれた。 |
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