平 heiwa 和 35
■ 2人の気持ち 3 ■

ホテルに帰ったオレ達は、蘭と和葉ちゃんを先に休ませた。
「KIDのこと、どう思う?」
「アイツは博愛主義やからな。」
服部の不機嫌な声には、いろんな感情が含まれてるな。
まぁ、分かるけどよ。
今回のKIDの行動は不自然な事が多すぎる。
アイツがいくら女性に優しいからって、ここまでするか普通。
・・・・・やめだっ、やめ。
変な方向に考えが行きそうになって、教会の言い伝えに話題を持っていった。
「あの教会の伝説には、表と裏があったんだ。表面上は、帰らない恋人を待ちきれず死んでいった女達という話しだ。しかし、本当は、当時の風習「女は一度誓い合った相手を変えられない」というのに耐えられなかった女達だったんだな。剣で胸を刺すのは、過去の想いを断ち切る儀式で、海に飛び込むのは生まれかわる為。周りの人間に自分は死んだと思わせ、新たな土地で新たな幸せを探す為だったんだ。一人残った女は、同じような境遇の女がその後現れたときに、同じ方法で助けてやる為だったんだろうな。」
オレとしては空想で話をするのは躊躇われるが、当時の資料が残ってねぇんだから仕方ねぇ。
「そうやろうな。海中で鎖、見つけた時に俺も同じようなことを考えとった。あの洞窟は自然に出来たもんや。満月になると、どっから入ってくるんか分からんけど、月明かりが入るようになっとるんやろ。それを利用したんや。壁一面に、色んな想いが書かれとったしな。」
服部も同じ考えか。
「『Wedding of phantom』あの儀式はこう呼ばれてたらしい。『自らの血で赤く染めた鳥を放ち、それまでの想いへの決別を表さん。いざ新しき時に白き鳥を放ち、祝福の鐘となさん。』見付けた祭壇にそう刻まれてたぜ。」
「洞窟ん壁にも、同じようなことが書かれとった。」
「アイツはそれを全部知った上で、利用したってことか。」
「それにしたかてやりすぎやないか?俺が飛び込まなんだら、和葉どうなってたんや!」
「オマエの行動はお見通しってヤツじゃねぇのか?」
しかし、服部のいうことにも一理ある。
あの状況で、もし服部が行かなかったら。
ああぁ・・・・・。
ちくしょう〜、今回のアイツの行動は不可解なことだらけだ。
ついでに、どうやって現れたのか、どうやって空中に浮いてたのか、そしてなぜあの話しをオレにしたのか?
今となっちゃぁ、調べようもねぇけどよぉ。
あ〜〜〜〜、もう決めた。
終わり良ければ全て良し!
服部じゃねぇけど、今回に限りこれでまとめるとすっか。
事件じゃねぇんだし、よし!もう本当に止めだ止め!
「それより、服部〜。オレと蘭が行くまで、オマエ何してたんだ?うん?」
いきなり耳まで真っ赤になってるぜ。
まったく、分かり安いヤツだ。



工藤のヤツ、楽しんどるやんけ。
なぁんや、すっきりした顔しくさってからに。
「ええやんけ、なんでも!」
「ふ〜ん。オレに言えねぇようなことしてたんだ。」
なんや、その顔。
分かっとるんやったら、聞くなっちゅうんや。
誰が言えるか!
和葉にキスしとったなんて。
「和葉ちゃんのこと、もう絶対に手放すんじゃねぇぞ。」
「あたりまえや!」
もう二度と和葉んこと、一人にしたりせぇへん。
他のヤツになんぞ、絶対に渡したりせん。
和葉は俺のもんや!
俺だけのもんや!
和葉を苦しめた償いは、一生掛けても出来へんかもしれん。
そやけど、俺はあいつん側におる。
いつでもあいつの笑顔が見れる距離におりたい。
KIDのことが気にならんちゅうたら嘘や。
アイツの和葉への関わり方は、今までのアイツの行動からみても考えられへん。
俺が今更悩んだかてしゃぁないけど、関わり過ぎや。
・・・・・あかん・・・・腹立ってきてしもた。
しかも、さっき、アイツ、和葉にキスしてへんかったか?
いくらベールがあったかて、あんな薄い布、無いんと変わらんやんけ。
それやと俺よりアイツんが先やん・・・・・ごっつうムカツク。
ほんとは、アイツに感謝せんとあかんのやろうけど・・・絶対に無理や。
「おいっ!服部。服部?」
「うっ、あっ、なっなんや。」
「何一人で百面相してんだ?飯!どうすんだ?何か食うかって聞いてんだよ。」
「ああ、そうやな。」
俺は工藤の後について、階段を降りていった。
KIDとのこと、和葉は話してくれるやろか?
俺から聞いたら、あいつは怒るやろか?
和葉はKIDの正体を知ってるんやろか?
さっきは俺んこと受け入れてくれたみたいやったけど、本当に許してくれるんやろか?
このまま俺と一緒に帰ってくれるんやろか?
俺の側にこれからもおってくれるんやろか?
あいつは・・・KIDのこと・・・・・・。
あかん・・・疑問符だらけや・・・・。
俺・・・今晩も、寝れへんな。






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