平和のあとに 11
■ 彼氏たちの苦笑 ■

「はぁ〜はぁ〜・・・。」
あかんわ〜、今どこにおるんかさっぱり分からへん。
平次もきっともう蘭ちゃんから、帽子とGジャン受け取ってるんやろうなぁ。
お互い逆にしよう言うたんは蘭ちゃんや。
工藤くんも凄いけど、蘭ちゃんも侮れんわ。
絶対、敵に回したないカップルやな。うん!
せやけど、フフッ、さっきの工藤くんの顔。
鳩が豆鉄砲くろうたって、顔やったなぁ。
工藤くんでもあないな表情するんや。
蘭ちゃんやなかったんが、よっぽどショックやったんやろなぁ。
ほんま、蘭ちゃん以外はどうでもええねんな。
工藤くんは、蘭ちゃんのやで!
って想いを込めて騒いどる女を睨み付けてしもた。
あっ、工学1号館って矢印や。
走る速度を落とさないよに気いつけながら、右に曲がる。
平次はどこから来るやろか?



だ〜〜〜和葉のヤツどこいったんや。
ねぇちゃんに気いとられとったから、アイツがどっちに向かったんか分からへんやんか。
取り敢えずさっき、和葉らがおった場所に向かう。
すると反対側から、俺と同じ様に手に帽子とGジャンを持った工藤が走って来よった。
「蘭たちに、一杯食わされたな。」
「ほんま、おもろいことしてくれんで。」
互いに苦笑いや。
『さっ・・さっきの子達って、工藤くんと服部くんの何?』
「はぁ?」
今日は何遍この質問聞くんやろか・・・かまへんけど・・・めんどい。
声がした方に俺らは同時に顔を向けた。
あん?このねぇちゃんさっき和葉らの横におったヤツや。
「なぁ、さっきアイツら何か言ってなかったか?」
工藤も気付いたんか、質問に質問で返しとる。
『えっえ〜〜〜っと、”負けたくない”とか”絶対に捕まりたくない”とかかな・・・。』
真っ赤になって答えとるねぇちゃんには構わず、俺らは不貞不貞しい返事をする。
「なるほどねぇ〜。」
「ほ〜、勝負ちゅうことか〜。」
「オレから逃げようなんて100万年早え〜つ〜の。」
「たまには、勝たしてもらわんとな。」
「おめぇ、たまにはって、いっつも負けてんのかよ。」
「工藤にだけは、言われたないで。」
「・・・・・・・・・・。」
無言ちゅうことは、肯定しとるちゅうことやで。
『あっあの〜〜・・・・』


「蘭は、オレのだ!」
「和葉は、俺のや!」


俺らの声は、綺麗に重なっとった。
「ぜって〜捕まえる!和葉ちゃんは、工学棟の方へ行ったぜ。」
「お〜負けへんで!ねぇちゃんは、理1東階段を下や。」
呆気にとられとる知らんねぇちゃんを残して、俺らはほんまに捕まえなあかんモン目指して動き出した。



「え〜っと、ここどこ?〜〜〜〜〜〜?」
ははは・・・・やっぱり・・・・迷っちゃったよ〜〜〜〜。
新一もとっくに和葉ちゃんから、受け取ってるわよね〜。
服のチェンジは私の意見だけど、見付かったら逃げようって言ったのは和葉ちゃん。
たまには、彼に追いかけて欲しいって気持ち・・・よく分かる。
でも、さっきの服部くんの顔・・・ウフッ・・・私だって気付いたとき一瞬凄く寂しそうな表情だったな。
まったく、失礼しちゃうんだから。
和葉ちゃん以外は、ほんと興味ないのね。
服部くんにあんな顔させられるは、和葉ちゃんだけなのよ!
騒いでる女の子達に大声で叫びたい!
・・・がまん、がまん。新一が来ちゃう。
きっと和葉ちゃんも私と同じで、今は本気で逃げ切りたいって思ってるはずよ!
何よ!女の子に囲まれてデレデレしちゃって!
あっあれ?
行き止まり?
・・・・これ・・・ドア・・・よね?
木製の普通では考えられない大きさのドアは、見た目に反して僅かな力で開いた。






彼氏たちの彼女たち 彼女たちの味方
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