平和のあとに 15 | ||
■ 彼らの事情 ■ | ||
まったく、あのねぇちゃんらのせいでしょうもない時間取られてしもた。 不注意に和葉の腕なんか掴むからやで。 あんくらいで済んで、よかったで。 下手したら、ほんま怪我してんで・・・・・あっ・・・・・もしかせんでも、早ようアイツ捕まえんと被害者増えるんか・・・・。 俺が恐ろしい考えを巡らせとると、 『さっきのTシャツ着た女の子、かなり可愛くなかったか。』 『色なんか雪みたいに白くて、長い黒髪に大きな瞳。オレ、結構好みかも。』 『お前そんなとこまで見てたのかよ〜。』 さらに俺の不機嫌に発車を掛ける野郎どもの声が聞こえたんや。 「ちょう待てや。」 「「「!!ひっ・・・・・?!!」」」 固まってしもた、殺気込めすぎたやろか。 「ほんで、その女どっち行ったんや。」 「こっ・・・こっ工学部の方・・・・。」 「そら、おおきに。ついでに言うとくけどな、アイツは俺んやから手ぇ出すなや。」 横目で睨み付けると、コクコクと無言で頷いとる。 まぁ、これくらいしとかんとな。 俺は工学部に向かって、走る速度を限界まで上げる。 あかん・・・和葉がモテるんをすっかり忘れとった〜〜〜〜〜アイツにまたそん自覚が無いんが余計悪い! ほんま、早よ、捕まえんと・・・・・・・あ”〜〜〜〜考えただけでも超ムカツク事態になるやんか〜〜〜〜!! 『服部発見。経3棟を工学棟方面に進行中!・・・なんか、無茶苦茶機嫌悪そう・・・・マジ怖ぇ・・・。』 「了解。気付かれない様に、目ぇ離すんじゃねぇぜ。」 『それ無理・・・・・もう見えねぇよ。』 「・・・・・・・・・。」 おいおい、動体視力のいい運動部のヤツが一瞬で見失うってかぁ? 時速何キロで爆走してやがんだあの野郎。 オレは気を取り直して、妨害部隊に連絡を入れる。 「服部が来るぜ。そっちは、準備出来てっか?」 『いつでもいけるよ、快斗くん。』 「オッケー。レディー・・・・アクション!」 『きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!』 携帯切っても聞こえてくる女の悲鳴。 オレはまた違うヤツの携帯を呼び出す。 「どうだ?」 『少し考えた様子だったが、一応悲鳴の方へ行ったぞ。』 「了解。ほんじゃ〜、こっちも動くから、何かあったら連絡よこせよ。」 『わかった。』 卑怯と言われようが何だってかまわねぇぜ。 ぜって〜白馬の野郎より先に、正門に辿り着いてやるぜ! 「わっ悪かったって、くっ工藤〜、許してくれよ〜〜〜〜。」 「許さねぇ!」 「勘弁してくれよ〜。しっ知らなかったんだ。工藤の彼女だなんてさ〜。」 「・・・・今度言いやがったら、問答無用で中庭の池に沈める。」 「いっ・・・・・・・・言わない。いえっ、決して言いません・・・・・。」 「当然だ!」 手ぇ離してやったのに、フリーズしたままだぜコイツ。 当分そうしてろっ! ったく、何が”ヤリテ〜”っだ!くそっ、ムカツクぜ。やっぱ沈めとくか?! 蘭がスタイルが良いのも、綺麗なのも、魅力的なのも、色っぽいのも、可愛いのも、素直なのも当然だぜ。 オレの蘭なんだからよう。 しかし、あれだな。早え〜こと蘭のヤツ見付けださねぇ〜っと、こんな野郎が増えるってことだよな。 まったく、冗談じゃねぇぜ。 ここの池、埋まっちまうじゃねぇか。 〜っとこいつらが蘭と擦れ違ったのが理1と学1の渡り廊下、だとするとその先は学2と図書1だ。 だが図書館に蘭は行ってねぇみてぇだから、となると学2かぁ・・・・あそこは女が多いからあんまし行きたくねぇんだよなぁ・・・。 オレは理1の窓から、何気なくすこし先にある学2の校舎を見上げた。 「いた!」 予想通り学2、2階廊下に白いTシャツを見付けたんだ。 しかも、数人の女に囲まれてるみてぇだ。 こうなると躊躇なんてしてられねぇ、窓枠乗り越えて外に飛び出し、斜めに芝生を突っ切って行く。 蘭に何かしやがったら、誰であろうとぜってぇ〜に許さねぇ! 『白馬、工藤が学2棟に入った。』 「分かりました。それでは、僕と蘭さんは移動します。手筈通りにお願いしますよ。」 携帯をポケットに戻し、 「では佐伯さん、後よろしく頼みます。」 と推理小説愛好会のメンバー佐伯京子女史にその場を任せ、早足で蘭さんを伴って歩き出す。 「ねぇ白馬くん?」 「何ですか?」 「これから、新一どうなるのか聞いてもいいかな?」 「気になりますか?」 「ちょっとね・・・。」 蘭さんが小走りに付いてきながら、表情を僅かに曇らせている。 「知らない方が良いかもしれませんよ。」 「えっ、そうなの?」 「まぁ、僕としてもあまりこの様なことはしたくなかったのですが。」 「どっどんなこと?」 蘭さんに不快な思いをさせたくなかったので、言わないつもりだったんですが。 仕方ありませんね。 「工藤くんがさっきの校舎の入り次第、出入り口を封鎖します。校舎内には、予め彼のファンの女の子達を集めて有ります。と言っても余り時間がなかったので何人いるかは分かりませんけどね。それでも、十分彼にまとわりついてくれるでしょう。その中を、先程の蘭さんによく似た佐伯女史が逃げ回る。こんな感じですかね。」 やはり黙り込んでしまいましたか。 蘭さんには申し訳無いと思ってますが、どうしても彼らより早くあなたを正門から外に出す為には必要な事なのですから。 そう、黒羽快斗、あの男にだけは負けたく無いですからね! |
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