平和のあとに 16
■ 平次VS工学部1年 ■

「和葉ちゃん、ちょっと遠回りになるけどよ、工6棟抜けて総研抜けて経済学部突っ切って行くけどいいよな。」
「・・・まったく分からへんから、黒羽くんに任せる。」
あたしは快斗ら3人に囲まれて廊下を歩いてんやけど・・・これって余計に目立ってへんの?
工6棟から総研棟に渡る廊下で一人残った。
「じゃ〜僕は、ここで見張るよ。和葉ちゃん、またね〜!」
「ほんま、ありがとな〜。」
手を振って別れる。
あの人とまた会うことあるんやろか?
その時、快斗の携帯が鳴ったんや。
「おう・・・うっ・・・・・・・・マジかよ〜〜〜。」
どうしたんやろ?
「どうした?」
”弘希”と快斗が呼んどった、ちょっと格好いい人があたしと同じ疑問を口にした。
「服部にオレ達のことがバレた・・・。」
「は〜?どうして?それにしても、バレんの早すぎじゃん。」
「高山が山下に焼き餅焼いてバラしたってよ。」
「あ〜〜アイツ、服部のファンだったっけ・・・。」
2人して”う〜〜”って唸ってるんやけど。



悲鳴が聞こえたから駆けつけてみたら、工3棟東階段に女が倒れとった。
「おい、どないしたんや?」
「いっ・・・いきなり誰かに突き飛ばされたの。」
踊り場には、女の物らしきバックやら教科書やらがぎょうさん散らばっとる。
「どんなヤツか見たんか?」
「ううん。本当に突然で・・・・うっ!いっ痛い・・・。」
「どっか怪我したんか?」
女は立ち上がろうとして、右足首を押さえたんや。
「捻挫したみたい・・・。」
犯人見付けるより、まずは手当が先やな。
「歩けるか?」
「・・・ダメ・・・痛い・・・。」
しゃ〜ないなぁ。和葉んことは気になるんやけど、こっちもほっとけんしな。
その場におったヤツに女の荷物を頼んで、抱きかかえて階段下りようとしたら、違う女が飛び出して来よった。
「やっぱりダメ〜〜!!服部くん!それ嘘なの!」
「はぁ?」
なっ何や?
「茜が突き飛ばされたって言うのは嘘よ!もちろん、捻挫も嘘!だから早く、茜を下ろして!」
「ほんまか?」
抱えとる女は、顔赤こうして困惑しとる。
「茜!早く下りなさいよ!」
大声出しとる女が俺が抱えとる女を引きずり下ろした。
下ろされた女は観念したように、ちゃんと自分の両足で立っとる。
何がどうなっとるんか分からんから、取り敢えずこん2人の女を問い詰めたんや。
そしたら、
「工学部1年が和葉に協力しとるやと〜!」
ととんでもないことぬかしおったで。
しかも、男どもが中心になって『和葉ちゃん脱出大作戦』ちゅうしょうもない名前付けて行動しとる言うやんけ。
「そんで、和葉ら今どこにおんのや。」



快斗がまた違うとこに電話しとる。
「おいっ、そっちはどうなってる?ああ、大至急頼むぜ。服部に俺達の行動がバレちまったんだ。マジだよ。ああ、ああ。じゃ〜な。」
弘希くんも誰かに掛けとる。
「そうだ。とにかく、集められるだけ集めて来てくれ、経研の法3廊下前、5分後。もう、遠回り出来ないから、法学3棟を突っ切る。頼んだぜ。」
「和葉ちゃん、もう分かってると思うけど・・・。」
快斗、顔笑ってんで。
「平次にバレたんやろ。そんで、正面突破する言うんやろ。」
「そのとおり!」
「和葉ちゃんは、本当にいいの?」
弘希くんも笑いながらや。
「ここまで来て嫌もないやろ。」
思いっきり笑顔でお返しや。
こんだけ大騒動になとって、どないせいちゅうねん。
「・・・やっぱ和葉ちゃん、超オレの好みなんだよね。服部なんか止めてオレと付き合わない?」
「じょ・・・冗談言わんといて。」
もう、いきなり何言うんか思うたら。
「冗談じゃないってば。マジマジ。」
「弘希、いい加減にしとけよ。今はそれどころじゃないんだぜ。」
「快斗は彼女いるからいいじゃんか。オレいないしさ。和葉ちゃんに一目惚れしました!黒崎弘希19才よろしく!」
「お前マジ服部に殺されるぜ。」
快斗、目怖いって。
ははは・・・2人とも冗談やんな・・・。
そんなこんなであたしらが他の人らとの待ち合わせ場所に着くと、すでにまたぎょうさん集まっとったんや。
中には、あたしみたいに白いTシャツ着た女の子も何人もおるし。
「Tシャツ着た女の数だけグループに分かれて、一応みんな正門目指してくれ。」
みんななんか楽しそうやな。お祭りやん。
あたしは人ごとみたいにその様子を見とった。


「か〜ず〜は〜〜〜〜〜!工学部のボケどもが〜〜しばくどおんどれら〜〜〜〜〜〜〜!!」


この超怒声が聞こえるまでは・・・。
あっあかん・・・・あれは、本気でキレとる。
「お前ら行くぜ!GO!GO!GO!」
弘希くんの合図で、一斉に隣の校舎目指してあたしらは雪崩れ込んだんや。






彼らの事情 新一VS女の子たち
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