平和のあとに 20
■ 3人目の彼女 ■

あたしらの前に一人の女の子が立ちはだかったんや。


「バッ快斗〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


「「 えっ? 」」
「あっ青子・・・・・。」
「「 ええ〜〜〜〜!! 」」
あたしと弘希くんは同音同語を叫んで、さらに同じように2人の顔を交互に見てしもうてた。
こっこの蘭ちゃんによう似た女の子が、青子ちゃん?
「青子との約束ほっぽって何やってんのよ〜〜〜?!」
仁王立ちで両手を腰に当てて、めっちゃ快斗を睨んどる。
「へっ?あっ・・・・・まじぃ〜、すっかり忘れてた・・・・・・。」
快斗は腕時計と青子ちゃんの顔を交互に見て呟いとるし。
残されたあたしらは、まだ2人を交互に見とるし。



まっまずい・・・よな・・・・・・。
「時間になっても来ないし、携帯にもでないし、何やってんのバカ快斗!!」
「うへっ・・・。」
相当怒ってるよなぁ〜。
「あっ青子ちゃん?」
和葉が恐る恐る青子に声を掛ける。
青子は表情を変えることなく和葉を睨んでるぜ。
「かんにんな。黒羽くんが行かれへんかったんは、あたしのせいやねん。あっあたしな、遠山和葉言うねん。今な、その、平次・・・え〜っと彼氏から逃げてんねん。そんでな、黒羽くんら工学部の人らが協力してくれて、あたしんこと正門まで・・・。」
「和葉ちゃん!」
弘希が和葉の言葉を遮る。
オレたちが通って来た後方から、騒がしい声がもう聞こえてきやがったからだ。
「あ〜もう来てもうた・・・、青子ちゃん後でちゃんと説明するから。」
弘希と和葉が同時に走り出す。
「青子も来いよ!」
顔中疑問符だけど、素直に付いてくんだよなぁ。



数メートル走ったところで、弘希くんと快斗が急に止まったんや。
えっ?どうしたんやろ?
そしたらや、いきなりあたしらの前に上から平次が降ってきたやんか!
「へっ平次!!」
どっから現れたん!
思わず上を見上げると、校舎と図書館を繋ぐブリッジした渡り廊下から数人の女があたしらを見下ろしとる。
えっ!もしかせんでも、あそこから飛び降りたん!?
なっ何メートルあんねん・・・。
まったく、怪我でもしたらどないすんの!
って平次を睨もうとしたんやけど。
ゆっくり立ち上がった平次が、快斗と弘希くんに一瞥してからあたしを見た。


「ち〜た〜出来るんを連れてるやんか、和葉。」


怖っ!怖い怖い怖い怖い怖い!!!!!
めっちゃ怖い!!
静かな喋り方が余計に怖い!
流石の快斗と弘希くんも、平次の迫力に後ずさっとる。
剣道の試合でも、ここまで不機嫌オーラ全開の平次なん見たこと無い。
目なん完全に座ってるやん・・・。
あかん・・・・どないしょう・・・・最悪や・・・って思うっとったら。


「うっそう!!本物の服部くんだ〜〜!!青子始めて見た〜〜!!格好いい〜〜!!」


「「 へっ? 」」
これまた、あたしと弘希くんや。
どうやら、青子ちゃんにはあたしらを固まらせた平次の殺気は、全然伝わって無いみたいやわ。
やって、キャッキャッって喜んでんやもん。
もしかして、青子ちゃんてツワモノ・・・。
お陰で平次の呪縛から解放されたんやけど。
ついついあたしと弘希くんの視線は・・・。
ああ〜やっぱりや・・・今度は快斗の背中から不機嫌オーラが出とる。


『キャ──────────!!!!』
『服部く〜〜〜〜ん!!カッコイイ〜〜〜〜〜〜〜!!!』
『今の最高〜〜〜〜!!』
『服部くん〜〜素敵〜〜〜〜〜〜!!!』


もう、ここまで来たら驚かへんよ。
四方八方から黄色い声上げた女らの登場や。
しかも、今まで一番ぎょうさんおるみたいやん。
平次も一瞬怯んだ位やもん。
そしたら今度はいきなり快斗が、
「服部〜コイツさっき和葉ちゃんに、一目惚れしましたって告白してたぜ!」
って弘希くんの肩掴んで平次の前に突き出したやんか。
「何やと〜〜〜〜〜〜!!!」
平次が弘希くんに掴みかかろうとしとる。
その時、快斗があたしに”行けっ!”っと小さく首を動かしたんや。
あたしも小さく頷き返して、とっさに青子ちゃんの手を掴んで走り出した。
集まってくる女らに紛れるように、少し身を屈めてや。
あの場に青子ちゃんを残しとくのは、なんやあかん気がしてもうたんや。
「おめぇも、和葉!とか呼び捨てにしてたじゃん!!」
後方から、弘希くんの悲鳴に近い抗議の声が上がっとる。
ああ〜〜〜2人共成仏してな〜〜〜、骨はあたしが拾うたげるから。



「青子ちゃん、変なことに巻き込んでしもてかんにんな。」
青子の手を引っ張ってる彼女が、走りながら謝ってるよ。
「ううん。青子よく分かんないけど、え〜っと和葉ちゃんだっけ、和葉ちゃんは服部くんから逃げないといけないんだよね。」
どうしてなんだろう?だって、さっき”彼氏”って言ったよ。
「そっそうなんよ!今はとにかく早よう正門から外に出なあかんねん。」
「うん。よく分かんないけど、青子、和葉ちゃんについていけばいいんだよね。」
「おおきに、青子ちゃん。」
和葉ちゃんてお花が咲いたみたいに笑うんだ。
あの服部くんの彼女さんなんだもんね、可愛くてキレイ〜青子憧れちゃうな〜。
あっいっけない!快斗忘れて来ちゃった!
慌てて振り返った青子の目に映ったものは・・・・・・・言葉には出来ないハチャメチャな光景だったの。
見なかったことにしよ。
「待って〜〜、和葉ちゃ〜〜ん。」






走る蘭に焦る新一 2人の名探偵
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