「おったか?工藤。」 「いいや、いねぇ。」 俺らがKIDとJOKERの予告状を誰ンでも分かりやすうし、工藤と白馬がKID、俺がJOKERの予告先を下見して、工藤邸に戻ったんは夜の10時を回ったころや。 工藤と白馬が五月蝿うっていらん時間がぎょうさんいったためや。 俺も工藤も帰る前に、それぞれ連絡は入れとる。 それやのにや、出迎えどころか和葉らの姿がどこにも見当たらんちゅうのは、どういうことや。 一応、俺らの夕飯は台所に用意されとる、しかも温かいやんけ。 「もしかせんでも、ま〜だ”鬼ごっこ”は終わってへんのか〜?」 俺が悪態ついてソファーに座り込むと、 「違うだろうが、服部。今度のは、”立て篭もり”って言うんだぜ。」 腕組みして書斎んドアを見とる。 「そうやったなぁ。」 ちらっと書斎に目をやってから、俺はおもむろに立ち上がって台所に向かった。 「腹が減っては何とかや。先に、飯食わんか?」 「ああ、そうだな。」
「どうしよう?和葉ちゃん・・・・絶対バレてるよね・・・・・。」 「まぁ当然やな。そやけど、このドアん鍵は外からは開かへんのやろ?蘭ちゃん。」 「うん。前におじさまがそう言ってらっしゃったの聞いたことがあるから。」 「そやったら、今晩くらいは何とかなるんとちゃう?」 あたしと蘭ちゃんは、毛布に包まって書斎のソファーに二人して膝を抱えて座ってるんや。 青子ちゃんらと別れるまでは、平次らに勝てた嬉しさが大きゅうて浮かれてたんやけど、二人になって家に近づくにつれてある不安が沸き起こってきてしもた。 玄関を開けるころには、もう、あたしも蘭ちゃんもその事で頭ん中いっぱいやった。 平次と工藤くんの反撃や。 どう考えても、何も無いわけないやろ・・・・あの二人やで・・・・。 そして、あたしらが最終的にとった手段が”書斎篭城”や。 仕方ないやん!他に思い付かへんかったんやから。 「怒ってるだろうなぁ、新一。」 「平次もムッチャ不機嫌そうやったもんなぁ。」
即効で夕飯を平らげたオレ達は、”立て篭もり犯”説得の方法を思案してるわけだ。 「どうすんや、工藤。書斎んドアは、ほんまに開けられんのかいな。」 「ああ。あそこは親父が、編集者から逃げるために内側に3重ものロックを付けやがってるからな。」 「そやったら、中から開けさすしかあらへんな。」 「そういうことだ。なぁ、こんなんでいんじゃねぇか。」 オレが服部に言ったことは、単純だ。 しかし、蘭達には十分効果があるはずだぜ。 心配性の蘭達のことだ、アッサリ出て来るに決まってやがるぜ。 オレ達が今まで、押さえに押さえたモノをなんとかしてもらわねぇっとな。 このままだと、イラツイテ眠れやしねぇ。 コンコンッ。 「蘭に和葉ちゃん。そこにいるのは分かってるんだから、いいかげんに出て来てくんねぇかな?」 『・・・・・・・・・・・・・。』 反応なしか。
私と和葉ちゃんは、お互いの手を握り合ってソファーでじっと我慢してるの。 『和葉もねぇちゃんも、何拗ねとんのや。俺ら別に怒ってへんで。』 新一も服部くんも、声は穏やかなんだけど・・・。 「騙されたらあかんよ、蘭ちゃん。あの二人が怒ってへんわけないやんか。」 「そうよね。絶対怒ってるわよね。」 昼間あれだけ不機嫌そうだったんだもの、この猫なで声は私たちを誘き出す罠に決まってるよね。 『どうすんや、工藤。このドア、壊してもええか?』 『はぁ?何言ってやがんだ。相変わらず、気の短け〜ヤツだな。』 「やっぱりや、メチャクチャ怒ってるやんか。」 『そやかて他に方法がないんやったら、仕方ないやんけ!』 『オメェなぁ、もう少し考えろよっ!蘭、和葉ちゃん、早く出てこないとこのバカが何しだすか分からないぜ!』 「なんだか逆に怖くて出られないよね・・・。」 和葉ちゃんもうんうんって頷いてる。 私たちは再度お互いの手を強く握りしめて、ソファーの上でじっとじっと我慢。
|