久遠 -KUON- 5
■ まじかよ ■
「  来たで〜〜工藤〜〜〜〜!!!  」

「うわっ・・・。」
オレは飲みかけたコーヒーを思わず零しかけた。
あんの・・・ばか・・・。
「は〜〜と〜り〜〜〜。オメェ、バカでけぇ声出してんじゃね〜〜〜!!チャイム押せよ!チャイム!!」
「細かいこと気にすんなや。」
「おはよう工藤くん。ほんま、あたしまでお邪魔してもええん?」
傍迷惑なヤツの後ろから、ひょっこり和葉ちゃんが顔を出した。
「ああ、いらっしゃい和葉ちゃん。もちろんだよ。今日は蘭も泊まっていくから気にしなくていいぜ。さぁ、どうぞ。」
オレは和葉ちゃんの荷物を受け取ってやり、中に即した。
「工藤〜〜俺は〜〜〜?」
「細かけぇこと気にすんな。」
誰が野郎の荷物なんか持つかってんだ。
「相変わらず、つれないヤツやなぁ。」
そう言いながら、とっくに入ってるじゃね〜か。
「あれっ?工藤くん、蘭ちゃんは?」
おっと、そうだった。
「蘭のヤツ、今日、急に空手部に行かないといけなくなってさ。夕方には、来るって言ってたから。それまで、一人になるけどいいかな?」
「そうなんや。蘭ちゃんも忙しいんやね。うん、分かった。」
「悪いね、和葉ちゃん。」
「工藤くんが気にすることないやん。あたしは適当に買い物とかしてるし。」
「部屋は2階の階段あがって右側だから。家の鍵はテーブルに置いとくからさ。」
「うん。勝手に使わせてもろてかまへん?」
「ああ、好きに使ってくれていいよ。」
「おおきに。」
「工藤〜〜俺は〜〜〜?」
「オメェはいつもの部屋だ。」
「へいへい。」
二人が部屋に荷物を置いてくるのを待って、
「服部、すぐに出かけるぜ。約束の時間が昼前だからよ。」
と声をかけた。
「そうやな。・・・和葉〜じゃませいへんのやったら、ついて来てもええで。」
うん?
「う〜ん・・・。ありがと平次。そやけど、ええわ。あたしついて行っても何も出来へんし。」
あれ?
「そうか。ほなっ、行ってくんで。」
「うん。平次も工藤くんも気いつけてな。」
・・・・・今の会話おかしくねぇか?
とくに何ってわけじゃね〜んだけど、何か違和感があるような・・・。
何かがいつもと違うような・・・・?

オレはとにかく疑問は後回しにし、服部と情報提供者に会いに行った。
1時間ほど話を聞いてから、適当に昼食を済ませて今は本庁に向かってるとこだ。
「しかしあれだな人間の目も当てになんねぇ・・・・・・うっ・・・。」
オレは突然立ち止まった服部の背中に、ぶつかっちまった。
「いってぇ〜なぁ〜、いきなり止まるんじゃねぇ〜よ。」
・・・・・?
どうしちまったんだコイツ?
無言である1点を凝視してやがる。
その視線を辿って行くと・・・・・和葉ちゃん?
お店のウッドデッキにもたれて楽しそうに、二人で1つのアイスクリームを食べているカップル・・・・・に見える。
あ〜〜〜〜〜〜???
けどよう・・・・どう見ても女性の方は和葉ちゃんだよな・・・・・・。
はぁ〜〜〜〜〜〜???どうなってんだ?
誰なんだよ、あの野郎は〜〜〜??
こっ・・・・コイツ大丈夫なのかよ・・・・?
そう思って服部の顔を覗くと・・・・・大丈夫なワケねぇ〜か・・・・。
「おいっ服部!誰だよあの男は?」
「・・・・・・・・。」
「服部。はっとり〜〜!!しっかりしろよっ!」
「・・・・・・あっああ・・・・・氷帝の忍足とかいうヤツや・・・・・・。」
「氷帝?東京のか?何でそんなヤツが和葉ちゃんと一緒にいんだよ?」
「・・・・・・・・。」
コイツの表情はまともじゃねぇ。
そこへ追い討ちをかけるかのように、オレ達に気付いた和葉ちゃんが無邪気に声をかけてきた。
「平次!工藤くん!もう、用事は終わったん?」
「あっ、いや・・・・これから、本庁に行くとこ・・・。」
和葉ちゃんのこの態度、やっぱりどこかおかしいぜ。
「そうなんや。あっ、二人とも侑ちゃんとは初対面やんな。彼、忍足侑士いうてあたしの友達やねん。そんで侑ちゃん、こっちの黒いのがあたしの幼馴染で服部平次、ハンサムなんが工藤新一くん。二人とも高校生探偵で有名なんよ。」
「話はいつも和葉ちゃんから、聞かせてもろてます。始めまして、忍足いいます。」
「・・・・・・・・・・。」
「ええ〜と、工藤新一です。よろしく。」
服部のヤツ、無言で睨みつけてやがる。
しかし、この忍足って野郎も只者じゃねぇな。服部のこの気配にまったく動じてやがらねぇ。
「ほなっ、あたしらまだ買い物とかしてから帰るから。行こっ、侑ちゃん。」
二人はまた楽しそうに行っちまったぜ。
完全に和葉ちゃんの態度はおかしい。
おいおいっ!コイツまさか、本気で和葉ちゃんに愛想つかされたんじゃねぇ〜のか?
マジかよ・・・・・。
「何があったんだ!」
「・・・・・・・・。」
だんまりかぁ。
「悪りぃ、オレとしたことが質問間違えちまったぜ。・・・・・オメェ、和葉ちゃんに何しやがったんだ!!」
「・・・・・・・・。」
「平ちゃん、怒らないからお兄さんに話してみな。」
「工藤〜〜。」
「いいから、話してみろって。」
淡々と話し出した服部は、心ここに在らずってやつだ。
内容は・・・・・どうすりゃいいんだ・・・・・。
思わず、和葉ちゃんに同情しちまったぜ。
しかも、コイツ・・・・まだ、自覚してなかったのかよ・・・・・。

教えてやらなかったオレにも責任あんのか?





ほんまに だめなの
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