久遠 -KUON- 6
■ だめなの ■
新一からのメール見て、驚いたの。
だって・・・和葉ちゃんに服部くん以外の人がいるなんて・・・。
考えられないし、信じらんない。
だって、あの和葉ちゃんなのよ。
自分の命と引き換えにしてでも、服部くんを助けようとする和葉ちゃんなのよ。
絶対、何かの間違いに決まってる!

私はもう空手の練習どころじゃなくなっていたの。
これ以上続けても、後輩の指導もまともに出来ない。
顧問の先生に体調不良を申し出て、みんなには悪いんだけど先に帰らせてもらうことにしたの。
空手部のみんなも大切なんだけど、今は和葉ちゃんの方が心配。
校門を出てすぐに新一に電話で詳しく聞いたの。
「・・・・服部くんひどい・・・・。」
和葉ちゃん可愛そう・・・きっと、とてもとても傷付いたはずよ。
服部くんの無意識の行動や言葉が、いつも和葉ちゃんを傷付けている。
そのことに、全然気付いていない服部くん。
そして自分の気持ちにも・・・・・ニブイにも程があるわよ!

今度は和葉ちゃんの携帯に掛けてみる。
「もしもし、和葉ちゃん?」
『蘭ちゃん!どないしん?今日は夕方まで部活やって工藤くんが。』
「うん。本当はそうだったんだけど、顧問の先生の予定で早く終わっちゃったの。和葉ちゃん、今どこにいるの?」
私は和葉ちゃんたちとの待ち合わせ場所に急いでる。
なぜだか、ついつい早歩きになっちゃう。
和葉ちゃんが嬉しそうに、”友達”を紹介するって言ってた。
その言葉にちょっとだけほっとしたの、だって”彼氏”って言われたらどうしようかと思ってたんだもの。
「蘭ちゃ〜〜〜ん!」
「あっ、和葉ちゃん!」
2人で手に手をとって再開を喜んでいると、
「えらいベッピンさんやなぁ。」
って声が・・・・関西弁?
「あっ、侑ちゃんあかんよ。蘭ちゃんは、工藤くんの彼女なんやから。なっ、蘭ちゃん。」
「えっ、あっ、ははは。」
「もう何照れてんの?ら・ん・ちゃん?」
和葉ちゃんとっても楽しそう。
そんな和葉ちゃんの横に服部くんじゃない男の人が立ってる。
この人・・・どこかで・・・・。
「紹介すんな、蘭ちゃん。このエセ関西人は、氷帝学園の忍足侑士いうねん。普段はただのスケベなんやけど、テニスだけは凄いんよ。」
「あんまりな紹介やなぁ、誤解されるやん。」
「あれっ?あたし何か違うこと言うた?」
和葉ちゃんが上目使いに見ると、
「まったく和葉ちゃんには、かなわんなぁ。」
って忍足くんはとても優しい目をして笑ったの。
あっ・・・・この人・・・・和葉ちゃんのこと・・・・・・。
私の心の中で耳障りな音が鳴り始めた気がした。
思い出した。
この人、テニスの高校選抜なんかに選ばれててとっても人気があるのよ。
「彼女が毛利蘭ちゃん。あの有名な名探偵”眠りの小五郎”は蘭ちゃんのお父さんなんよ。凄いやろ!」
「始めまして、毛利蘭です。」
「こちらこそ、忍足いいます。こんなベッピンさんに会えて、俺今日ついてるわ。」
「やから、あかんてっ!」
「はいはい。和葉ちゃんも可愛い可愛い。」
「あっ、もう、何すんの〜。髪の毛グシャグシャになるやんか!」
忍足くんが和葉ちゃんの頭をよしよししたの・・・。
こっ・・・・恋人同士に見える・・・・。

ダメよ!ダメ!相手が違うよ、どうしちゃったの和葉ちゃん!

私の心配を余所に、それからも2人は本当に仲良さそうに見えたの。
一緒にアクセサリーや洋服を選んだりして。
忍足くんはちゃんと和葉ちゃんに、似合いそうな物を選んであげてるのよ。
服部くんだと有り得ない光景よね。
ってダメじゃない!

和葉ちゃん、分かってるの?その人、服部くんじゃないのよ!

忍足くんも本当に女の子に人気があるのね。
すれ違う子たちが振り返ったりしてる。
声を掛けてきたりする子までいるんだもの。
だけど、今日は友達がいるからってきちんと断ってるし。
この辺も、服部くんと違うかな・・・。
あ〜〜〜もうほんとにダメじゃない・・・・。

服部くんにもいいところはあるのよ!
例えば・・・・・・・、例えば・・・・・・・、あっあれ・・・・?
探偵として凄いのは違うし、剣道が凄いのもここでは違うわよね・・・・、色が黒いのも違うし・・・・地声が大きいのも違う・・・・・・・。
・・・・・・・・・・思いつかない・・・・・・・・。
でっでも和葉ちゃんに対しては、いつも一緒にいるし、和葉ちゃんに近づく男性を蹴散らしてるし、なんだかんだ言いながら和葉ちゃんのこと心配してるし、・・・・・・・でも無自覚。
他の人には愛想いいのに、和葉ちゃんにだけは無愛想だし、言葉使いキツイし、態度大きいし、約束すっぽかすし・・・・・・・。
・・・・・・・・フォ・・・・・フォロー出来てないかも・・・・。

私が難しい顔してると、和葉ちゃんが心配してくれたの。
「大丈夫なん、蘭ちゃん?部活もあったし疲れてるんとちゃうの?」
「気にしないで。ちょっと考えごとしてただけだから。」
「そうなん?でも、そろそろ帰ろうか。夕飯作らなあかんのやろ?」
「お父さんのは今日はいらないんだけど。新一や服部くんはどうするのかしら。和葉ちゃん何か聞いてる?」
「あっ、ごめん。聞くの忘れとったわ。」
「じゃちょっと新一に連絡してみるね。」
私が新一と話してる間も、和葉ちゃんと忍足くんは楽しそうにおしゃべりしてる。
新一の話では、和葉ちゃんたちに出会ってからの服部くんはすべてが上の空で役に立たないから今日はもう帰るですって。
「帰って食べるから、何か作って欲しいんだって。」
「そうなんや。ほな、夕飯の買い物して帰ろう、蘭ちゃん。」
「そうしよっか。でも、忍足くんいいの?」
「俺はかまへんて。今日かて、暇やから付き合ってって和葉ちゃんに無理矢理付き合わされとっただけやし。」
「あ〜〜何言うとんの!自分かて、行く行く言うて喜んで来たやないの〜〜。」
また、じゃれ合ってる。
「そやけど、ほんまありがとな侑ちゃん。」
「どういたしましてや。来月、また大阪に行った時は、今度は和葉ちゃんに付き合おうてもらうからええわ。」
「そうなんや、ええよ。また、日にち教えてな。」
「ほなまた連絡するわ。二人とも気い付けて帰りや。」
忍足くんてもしかしなくても、とても好い人なんじゃないかな。

どうするの服部くん?





まじかよ とにかく
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