久遠 -KUON- 7
■ とにかく ■
私と和葉ちゃんは、夕飯の買い物を済ませて新一の家に帰ってる。
私は単刀直入に和葉ちゃんに疑問をぶつけることにしたの。
「和葉ちゃん、どうしたの?今までの和葉ちゃんと、今日の和葉ちゃん違うよね。」
明らかにさっきまでの表情とは違う、少し沈んだ顔。
「・・・・・やっぱ、そう思う?」
「うん。何て言うのかな・・・和葉ちゃんらしくないって感じ・・・。」
「はぁ・・・・・・・・やっぱりそうなんや・・・。あたし・・・今までどんだけ平次中心やったんやろ・・・・・・。」
「えっ?それ、どういう意味?」
「あんな、蘭ちゃん・・・・・・                  ・・・・・・やねん。」
「そっ・・・・・・。」
どうしよう・・・・上手く言葉に出来ない・・・。
服部くんへの気持ちを無くしちゃったなんて・・・。
服部くんのことが好きじゃない和葉ちゃんなんて・・・・私には想像出来ない・・・。
でも、私の前で困ったような表情浮かべてる和葉ちゃんには・・・・服部くんはただの幼馴染。
自分の想いを消してしまわないと、自分が保てないって・・・・・そんなの・・・・・辛すぎるよ。
今の和葉ちゃんは服部くんのことを嫌いになったワケじゃない。
・・・・・・でも・・・・・・女の子として好きでもない・・・・・・・・幼馴染として好きなだけ・・・・・。
ここまで和葉ちゃんを追い詰めたのは、他でもない服部くん。
今までにしてきたことの代償は、とてもとても大きいね。


和葉ちゃん達と別れてからの服部は、不機嫌ですべてが上の空状態だぜ。
いい加減、自分の気持ちに気付いたか?
「やっと自覚したか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「いつまで、そうしてるつもりだ?」
あれから、一言もしゃべりやがらねぇ。
「本当に大切なモノは、無くして初めてその存在の大きさに気付くってか。」
「・・・・・・無くした・・・・。」
「まぁ、オメェ次第だけどな。後悔してからだど、遅いんじゃねぇのか。」
「・・・・クラスんヤツにも、同じこと言われた・・・・・・・。」
「へ〜、そいつはお前の気持ちはお見通しってワケだ。」
「俺ん気持ち・・・・・・・・・。」
「もう、気付いてんだろ。和葉ちゃんが、ただの幼馴染じゃねぇってことによ。」
「和葉は・・・・・・・。」
「子分とか言うなよ。」
一応、忠告しとかねぇとな。
「和葉が俺ん側におるのは当たり前で・・・・・・俺もそれが嫌やなくて・・・・・・。」
うんうん。
「一緒におってもじゃまにならんし・・・・・。」
うん?
「和葉やったら、気ぃ使わんでもええし・・・・・・。」
おいっ!
「はっきり言えよ!和葉ちゃんのことが好きなんだろ!」
「俺は和葉んことが・・・・好き・・・・なんか・・・・・・・。」
「だ〜〜〜〜〜〜つくづくじれって〜野郎だなテメェ。今までの自分の行動思い返してみろよっ!高校生にもなって、幼馴染つ〜だけでどこにでも連れ歩くか普通?しかも、和葉ちゃんに近づく男かたっぱしから追い払ってたじゃねぇか。それに、オメェの初恋、和葉ちゃんだろっ!!」
「くっ・・・工藤・・・・・。」
「自覚したか?」
「・・・・・・ああ・・・・そやな。」
やっとかよ・・・・疲れるヤツだ・・・。


私と和葉ちゃんが作ったお夕飯を4人で食べたんだけど、はしゃぐ和葉ちゃんと無口な服部くんが対照的でちょっと居心地悪いかも。
新一の話だと、服部くんはやっと自分の気持ちに気付いたみたいなんだけど・・・・・今度は和葉ちゃんが・・・・・・。
そこで私と新一は、私が服部くんと新一が和葉ちゃんと話をしてみることにしたの。
食後の後片付けをじゃんけんで決めることにして、予定通りの組み合わせ。
負けた新一と和葉ちゃんが後片付け、勝った私と服部くんがリビングで食後のティータイム。
「はいっ、服部くん。ブラックでよかったわよね。」
「そや、おおきに。」
服部くんとこうやって話すことってあんまりないから、緊張しちゃうな。
って、そんなこと言ってる場合じゃなかった。
「あのね服部くん、和葉ちゃんのことなんだけど。」
和葉ちゃんには悪いかなって思ったんだけど、和葉ちゃんが無くしちゃった気持ちのこと服部くんには知ってて欲しくて話したの。
「そうやったんか・・・・・・・和葉んヤツ・・・・・・・。」
服部くんの表情は、私が一度も見たことが無いもの。
「どう・・・・・・するの?」
私が聞いてもいいのか疑問だけど、どうしても服部くんの気持ちを確認したかったの。


オレと和葉ちゃんは並んで食器を片付けてるんだ。
「和葉ちゃん、服部のことなんだけど。」
「蘭ちゃんからあたしんこと聞いたんやろ。」
ってちょっと寂しそうに微笑んだんだ。
「悪いとは思ったんだけどさ。」
「かまへんよ。ほんまのことやし。」
「本当に服部のこと、今はただの幼馴染って思ってるんだ。」
手を動かしたまま、無言で頷いてる。
「あの忍足ってヤツは?」
聞いちゃ〜いけねぇのかも知れないけど、どうしても気になったんだ。
「侑ちゃんは・・・・友達かな・・・・・・。」
曖昧な答えだ。
「服部よりも・・・・・・。」
和葉ちゃんの答えははっきりしないものだけど、とにかく服部のことを嫌いになったワケじゃねぇのは確かだ。


「服部は何だって?」
「このまま、不戦敗は嫌だって。」
「アイツらしいな。剣道じゃねぇ〜つ〜の。」
「和葉ちゃんは?」
「自分自身に戸惑ってるって感じかな。」
「そうなんだ。和葉ちゃんの無くした気持ちって、戻らないの?」
「それは、オレにも分からねぇよ。」
「・・・・・・今までとは、逆になったんだね。和葉ちゃんと服部くん。」
「だな。」
「本当だったら、両思いだったのに・・・・。」





だめなの あんとき
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