久遠 -KUON- 11
■ そやそや ■
和葉の様子がおかしい。
昨日より、明らかに暗い。
みんなの目は誤魔化せても、この華月さまの目は騙されへんよ。
対照的にあのボケは、何日ぶりやねん、あの笑顔。
昨日メールしたん、早まったかな・・・・・・。
「なぁ華月〜。」
「何?」
「あんな・・・・・。」
言いにくそうな和葉を、屋上に連れ出した。
「ここなら、誰もおらへんから、何でも言うてみ。」
「平次のことなんやけど・・・・。」
「うちは服部くんのこと好きやないよ。」
「かっ華月。」
そんな驚いた顔せんでもええやん。
「そんなんあるわけないやん。和葉、何年うちの親友しとんの〜?あんな一人の女しか目に入ってないボケ、こっちから願い下げやて。」
「・・・・・・・・・。」
「服部くんと何かあったん?」
なかなか話し出さん和葉が口を開くまで、根気よく待つ。
昼休みの終わりを告げるチャイムが聞こえたけど、無視や無視。
それに和葉の話は、うちの予想の範囲内やった。
ほんまにあのボケ!
「和葉。うちは和葉がどんだけ服部くんのこと好きやったか知っとる。いつも、うちにだけは話してくれたやん。そやから、うちも和葉に隠し事するつもりなんかあらへん。最近、服部くんと話しとったんは、和葉のことやねん。」
「華月?」
そんな不安そうな顔せんといて。
「昨日、和葉が思たことは嘘でも何でもあらへん。和葉かて、ほんまは分かってんやろ。」
「・・・・・・・・・・・・・平次にとってあたしはただの幼馴染・・・・・・・・・・・・・・。」
はぁ・・・・今までのことが相当トラウマになってんな〜。
それもこれも全部、あのアホのせいや!
「和葉にとっては?」
「あたしにとっても平次はただの幼馴染・・・・・・・。」
「そやったら、何でそんなに辛そうなん?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「服部くん、待っとってくれるんやろ?そやったら、待たせといたらええやん。」
俯いたままや。                                                       
「今まで和葉が服部くん追いかけとった分、今度は服部くんに追いかけさせたらええやんか。」
そやそや!

「 華月!ありえへんてっ! 」

・・・・・・・・・・びっ・・・びっくりした・・・・・・・・。
和葉がこんな剣幕で怒鳴るやなんって・・・・。
「今更、そんなことあるわけないやん・・・・・。平次が・・・・・・平次が・・・・・・・・。」

「はっきり言うたるは、服部くんは和葉のことが好きやで。」

うちが言うことや無いって分かってるんやけど、このまま和葉、不安にさせとくのはあかん。
絶対にあかん。
「さっきも言うたけど、うちは服部くんの相談にものってたんや。やから、これは冗談でも何でもあらへん。ほんまのことや。」
無言で首振っとる。
「そやったら、和葉は嫌なん?」
あっ止まった。
「和葉が信じられへんのも分かるわ。今までが今までやからな。期待させるだけさせといて、最後に落としまくとったもんなぁあのアホ。」
屋上の風は、まだ冷たいなぁ。
今の和葉は気付いてへんやろけど。
ほんま服部くんて・・・・・・ボケッ!アホッ!ド・アホ!
あ〜〜も〜〜〜うちが男やったら、絶対に和葉泣かせたりせ〜へんのに〜〜〜!
・・・・・・・やっぱ、腹立ってきたわ・・・・・・・。
「和葉は今のままで。ここから、もう一度始めたらええやん。」
「かづき・・・・・・。」
「和葉がもう一度、服部くんのことを好きになるか。それとも、忍足くんみたいな他の男好きになるか。」
思ってもみぃへんかったって顔や。
「和葉、今まで服部くんしか見てなかったんやし、これから、いろんな男に目ぇ向けるんもええと思うわ。」
うん、我ながら名案や。
「華月・・・それ・・・・本気で言うてる?」
「本気も本気、おおマジやで。」
うちが両手を腰に当てて胸はったら、やっと笑った。
「あたし・・・・・・・・・・。」
「服部くん待っとってくれるんやろ。ぎょうさん心配させてやったらええやん。和葉には十分その権利あるんやから。」
「・・・・・・・・・・・あたし・・・・・・・また・・・・・平次を・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「忍足くんでもええよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「彼のことも気になってるんやろ。」
「侑ちゃんのこと・・・・・・。」
「服部くん以外で初めてやろ、こんなに仲良うなった男友達。」
「そうかな・・・・・そうやんな。」
「それにしても、流石、うちの和葉やわ。二人とも、超有名人やん。しかも、どっちも超女の子に人気あるし。その二人が、和葉を奪い合うんやね〜〜ええわ〜〜〜。」
「か・・・・・華月・・・・・何言うとんの・・・・・。」
「和葉!しっかり、見比べて判断するんやで!」
「やからっ、違うやろっ!」
お互いに顔見合して、噴き出してしもた。
「あははは・・・・・・・、もう華月には適わんわ。」
「うふふふ・・・・・・・、和葉は笑うとる方がええ。」
服部くんには悪いけど、うちはやっぱ和葉の味方やから。
西の名探偵で剣道の達人でも、早々簡単に和葉はあげられへんよ。
「華月と話しとったら、悩んでる自分が何やショウモナイ気分になってきてしもたやん。」
「それでええんやって。」
あのボケは今頃、教室に和葉の姿が見えへんから心配してんやろな〜。
「なぁ、和葉〜今日はこのままサボらへん?」
「はぁ〜?相変わらず唐突やな。そやけど、カバン教室やん。」
ドアの影から、
「ジャジャ〜ン!」
うちと和葉のカバン登場や。
「いつの間に持ってきてん・・・・。」
「華月さまをナメタラあかんよ。それより、携帯チェックした方がええんとちゃう?」
「あっ。」
和葉が慌てて携帯の画面開くと、やっぱりや。
『何やってんねん?』
『カバンも無いやんか。家帰ったんか?』
『具合でも悪いんか?』
「短いメールやな。」
「平次らしいやん。」
お互い笑って、
「何て返事しよか?」
「うちが打ってもええ?」
もうサボり決定やな。
『これからデート(*'-'*)エヘヘ 』
送信。
「ええんかな?」
「ええんやて。それにな・・・。」

『 何やと――――――――――――!! 』

足元の方から、絶叫が聞こえてきたきた。
「ほらな。」
「ほんまや。」
和葉とうちはもう一度吹き出して、屋上を後にした。





KUON そやかて
novel top 久遠-KUON- top