久遠 -KUON- 12
■ そやかて ■
華月と話してから、何や不思議と気持ちが軽うなった。
やっぱ持つべきものはええ親友やな。

あの日は、あれから華月と二人で遊びに行った。
買い物したり、ゲームしたり、モスで延々しゃべったり、その間、平次から何どかメールあったんやけど気付かない振り。
おとうちゃんの帰らん日やったから夕飯も済ませて、8時ごろ家に帰ったら、玄関にメチャ不機嫌モードの平次がおった。
あたしの顔みるなり、うるさいのなんの。
誰とおったんや、何所行っっとたんや、何しとったんや、受験生が何やっとんねん、こんな時間まで制服でうろつくな、何で連絡寄こさへんねん。
「ぷっ・・・・・。」
「何笑うとんねん!」
やって、ほんま華月の言う通りなんやもん。
『服部くん、絶対に和葉ん家で超ぶっちょう面で待ってんで。』
あたしがいきなりおらんようになった平次を服部家で待っとって、玄関で問い詰めとったんと同じなんやもん。
平次のこの態度は、今までやったらありえへん。
笑いながら、すべての質問に答えて、最後に素直に謝ってみた。
「心配してくれてありがとう、平次。」
「・・・・・・・えらい素直やんけ。」
「ええやろ、たまには。今日は華月といっぱい遊んだから気分ええんや。」
怪訝そうな顔しとる。
何かこんな平次、かわええかも。
なんて思うっとったら、今度はとんでもないこと言い出した。
「まぁええわ。それより、さっさと泊まる用意して来いや。」
「はぁ?何で?」
「これからは、おっちゃんがおらん日は泊まりに来い。」
「やから何で?」
「何でもや!」
「そんなこと言うたら、月の半分くらい平次ん家にお世話にならなあかんやんか。」
「おっちゃん、そんなに帰ってへんのか?」
「最近事件多いし、忙しいんと違う。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
今度は急に黙り込んでしもた。
「どないしたん?」
「和葉、俺ん家に引っ越して来い・・・・・・いやっ、やっぱそれはあかんな・・・・・・・・そうやっ!俺ん家にも和葉ん部屋作ったらええんや!」
「・・・・・・・・・・・・・。」
あたしの思考能力が平次についていけないんやけど・・・・・・。


「・・・・って言い出したんよ。ほんま、びっくりしたんやから。」
「うっ・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・っく・・・・・・・・・・。」
「か〜〜づ〜〜き〜〜、笑い事やないで〜〜。」
まったく華月んヤツ、腹抱えて涙流しながら笑ろうとる。
あたしと華月が秘密の話しをするのは、昔っから決まって屋上やった。
ここなら、誰にも邪魔されへんから。
「ご・・・・・ごめん・・・・・・。そやかて、服部くんらしいなぁ思うって・・・・。」
それにしても、笑い過ぎちゃう。
「感心してる場合ちゃうやん。平次んとこのおばちゃんも何でかおとうちゃんまで、平次の意見に賛成してしもて、このままやったら、ほんまにあたしの部屋が平次ん家のしかも平次の部屋の隣に出来てまうかもしれへんのやで。」
「ええやん、それ。」
「ちょっと、華月まで何言うてんの!」
「和葉は嫌なん?」
「あかんやろ、普通。」
「まぁ、普通やったらありえへんやろうけど。あんたら普通やないし、ええんちゃう。」
「何やのそれ?」
「服部くん心配なんやて。和葉がめっちゃモテルんも気付いたばっかりやし。今の和葉やったら、ちょっと目離した隙にどっか行ってまうかもしれんて思うてんのとちゃう。それに最近物騒なことも多いし、探偵なんやってるから余計心配なんやて。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「しかしあれやね、服部くんて自覚したとたんに心配性と過保護に磨きがかかったんちゃう。今までもその気はあったけど。」
「あたし、どないしたらええんやろか。」
「素直に好意に甘えとき。近くでもう一回、服部くんのこと見詰め直すええ機会やん。」
「そうなんかなぁ?」
「そやけど、他のヤツラには知られへんようにせんとな。服部くんのファンの子らにバレたら、怖いで〜。」
華月は意地悪う笑うって、両手で頭に角作っとる。
「華月〜〜〜〜楽しそうやね。」
「やって、和葉ら見てたら飽きへんのやもん。そんで、引越しはいつなん?」
「引越しちゃう!この日曜に、必要な物買いに行くことになっとるみたい。」
「みたい?」
「やって、平次が勝手に話し進めてまうんやもん。」
「忍足くんが来るんが土曜日やったよね。」
「そうや。」
「忙しい週末になりそうやな〜〜和葉。」
目〜が思いっきり笑うとる。
「侑ちゃんは日帰りや。」
「忍足くん、今回は何の用で来るん?」
「何や親戚ん家に用がある言うっとったわ。」
「ふ〜〜ん。服部くんは知ってんの?」
「言うてへん。」
「言わへんの?」
「わざわざ言うことでもないやろ。」
「そうやな。あのボケには、心配させとき。」
華月はあっさりそう言うて、ウインクした。


それが水曜日の話や。
木曜日に平次がいつもん様に『事件や〜〜!』言うって飛び出して行った。
平次がおらん金曜日は、大変やったんやで。
3人から告られた。
もちろん、みんな断ったに決まってるやん。
それから、2年の女の子数人に呼び出された。
これには、華月もついて来てくれたんや。
『遠山先輩、服部先輩のこと本当はどう思ってるんですか?』
「ちょっと待った。あんたら服部くんのことが好きなんやったら、本人に直接告ったらええやん。」
『昨日、この娘が告白したら、遠山先輩がいてるからあかんて断られたって。』
「「 ・・・・・・・・・。 」」
『答えて下さい!遠山先輩!先輩は服部先輩と付き合うてるんですか?』
『でも、別れた言う噂も聞きました。どうなんですか?』
「・・・・付き合うてへんよ。」
『やったら何で、服部先輩が遠山先輩がいてるからあかんなんて言うんです。今までそんなん言うたことなかったのに!』
華月が大きな溜息ついて「あのボケッ」って呟いたのが聞こえた。
「今までって、あんたら何回告っとんの?」
『何回やってええやないですか!わたしたち服部先輩のことが大好きなんですから。』
「やったら和葉問い詰めるんはお門違いやで。服部くんに直に聞いたらええやろ。」
『やけど、遠山先輩の気持ちはどうなんです?』
「あ・・・・あたしは・・・・・・・。」
あたしが返事に困っとったら、
「あんたらに一つだけ、ええこと教えたるわ。」
って華月が助けてくれた。
女の子らの視線が華月に集中する。
「和葉いじめとったら、服部くんの逆鱗に触れるで。」
「か・・・・・・・。」
華月〜〜何言うとんの〜〜〜〜それ助けになってへんて〜〜〜。
女の子らの表情とあたしの表情は、ほぼ同じや。
『それ・・・・どういう意味ですか?』
「それくらい自分らで考えや。」
そう言うて、華月はあたしの手引っ張ってさっさとその場を離れてしもた。
「華月何やの今の?」
「ええんやて、あれくらい言うとかな今後もっと増えんでああいうの。それより、あのボケに釘さしとかな。」
「 ・・・・・・・・・。 」

ここ何日かで思うんやけど・・・・・。
確かに気持ちは軽うなったけど、あたしまた平次に振り回されとるんやないやろか・・・・・・・。





そやそや あんなぁ
novel top 久遠-KUON- top