久遠 -KUON- 17
■ いっぺん ■

どないしょ・・・・・・平次の顔がまともに見れへん。
それやのに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平次が離れへん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何で?
平次への自分の気持ちを取り戻したせいで、どうしても意識してまう。
そやからおとうちゃんがおらん日も、わざと自分の家帰ったりしとったのに、最近はそれすら見抜いて迎えに来てまうんやで。
夏期講習の登下校も、平次が事件でどっかいっとらん限りは一緒や。
平次がおらんときは、華月が一緒。
絶対にあたしを一人っきりにせいへん気や。
いっぺん、平次をほぽって勝手に帰ったら、携帯が壊れるんやないかってくらいうるさかったんやで。
そやけど今日、華月が、
「服部くんに、この前のこと全部話したから。ついでに、ちーと責任もとらしたった・・・・・ふふふっ。」
って言うとった。
そん時の華月の笑顔が怖かったんやけど・・・・。
その理由は、下校時に平次の顔みて納得したんや。
か・・・顔に・・・・・・アオタン出来てるやん・・・・・・・・・・華月?・・・・・・・・・・・。
「ぷっ・・・・・。」
「何笑ってんねん。」
平次が怒った顔して、見下ろしてくる。
「やって・・・・・・。」
あかん・・・・笑いが止まらへん・・・・・。
「・・・・・アイツ女やないで・・・・・。」
どうも、華月にゲンコで殴られたみたいや。
平次を殴るやなんて、さすが華月やね。
「それ・・・・・当分、消えへんね。」
「まったく・・・・・せっかくの男前が台無しやで。」
「自分で言う?」
「やったら、お前が言え。」
「何であたしが言わなあかんの?」
華月のお陰で久しぶりに、平次の顔がまともに見れる。
・・・・・・・・・違う意味では見れへんけど・・・・・・・・やって、笑ってまうから。
「アホみたいに笑うとるバツや。」
何なんそれ?
「はいはい。平次くん、せっかくのお顔が・・・・・・・・・・・ぷっ。」
あか〜〜〜〜〜ん、顔みたら笑うてまう・・・・。
やって、左目の周りくっきりなんやもん。


『服部先輩!!どうしはったんですか、その顔?!』


和葉らに声掛けたんは、あの後輩どもや。
うちは、こいつらにもう一度釘さしとったろ思うて探しとったから。
どうも、懲りてないみたいやったからや。
ほんま懲りてないみたいや、和葉と一緒におるときに服部くんに声かけるやなんて。
その子ら見た和葉がビクッってしたんを、あの服部くんが見逃すはずないやろ。
そう思うとったら、案の定、そっと和葉を背中に隠すみたいにしたんや。
左手はそれでも、さりげなく顔のアザ隠しとるけどな。
「この前は、和葉が世話になったんやってな。」
怖〜〜〜〜〜〜!!
いつものしゃべり方やけど、声低!メッチャ殺気こもってんやん。
しかも、右目だけで睨み付けてるんも迫力満点や。
『そっ・・・・・・・・・。』
普通のアホ女がこれに耐えられるわけないやんか。
男でもビビルわ。
「2度と俺の前にそのツラ見せんなや。」
半泣き状態のその子らに、そう言い捨てて和葉連れて行ってしもた。
まぁ、あのボケにしては上出来や。
ほなっ、仕上げはうちやな。
「やから言うたやろ、和葉に何かしたら服部くんの逆鱗に触れるて。」
アホ女どもがびっくりして、こっち向いた。
「あんたらが和葉にした事は、絶対許されへん。これは服部くんも同じやで。さっきので分かったやろ。あんたらがいくら服部くんのこと好きや言うても、今後近寄ることも出来へんやろな。せいぜい自分らがしたこと後悔するんやな。」
とうとう泣き出してしもた。
そやけど、和葉の分にはまだまだやで。
「ちなみに、服部くんにあの痣付けたんはうちや。何やったら、あんたらにも付けたるわ。」
にっこり笑って近くの子の肩に手を置く。
『ひっ・・・・・。』
「うち、絶対許さへんよ。あらんたらのこと。覚えとき。」
後ずさって、一目散に逃げて行ってしもた。
これで、もう、安心やろ。


さっきから和葉が一言もしゃべらん。
黙って俺の後ろ付いて来とるだけや。
「和葉?」
「うん・・・・・。」
「大丈夫か?」
やっと顔上げた。
「・・・・・・・・・ありがとう平次。」
「何がや?」
「さっきの・・・・。」
「お前が気にすることやない。」
「やって、あたしの為に怒ってくれたんやろ?」
うっ・・・・・。
その顔あかんで・・・・・心臓に悪い。
俺が返事に困っとると、
「ほんま、平次くんは男前やね。」
って極上の笑顔でトドメさされてしもた。

和葉を俺に惚れさすはずやのに、和葉は俺を何遍惚れさす気やねん。

「・・・・・・・和葉、俺もう待てへん。俺の・・・・・・。」

「平次?・・・・・・・・・・・・・ぷっ・・・・・。」

何笑ってんねん!
ここ笑うとこちゃうで!

「あっ・・・・・あかん止められへん・・・・・・・・ふっ・・・くく・・・・・・やって今日の平次・・・・・。」

人の顔見てそんなに笑うな!!
ちーとは雰囲気読まんかい!!

それっきり、和葉の笑いは止まらへんかった・・・・・・・・・。


どないしてくれんねん・・・・・・・・・・・・・恨むで木更津・・・・・・・・・・・・・・・俺の告白も台無しやんか。





そんなん もしもや
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