久遠 -KUON- 22
■ あんたら ■

朝、服部くん家まで和葉を迎えに行ってびっくりや。
「かっ・・・・・和葉?」
泣き腫らしたみたいに目が腫れてるやんか。
おばちゃんが部屋から出て来ん言うはずやわ・・・。
とにかく、冷たいタオルで目冷やして、1時間遅れで登校したんや。
おばちゃんの話やと、あのボケも和葉の部屋の前で座り込んどったらしいし、何かあったんやろな。
和葉が何も言わへんから分からへんけど・・・・・怒ってんのだけはヒシヒシと伝わってくるんやもん。


うちらが教室に着いたんは、授業が始まる直前やった。
言うか和葉がそうしたい言うたからやけど。
和葉は一度も服部くんの方を見いへんかった。
服部くんは案の定、また全身から不機嫌オーラ出しとるし。
クラスの雰囲気も心なしか、いつもより静かみたいや。
あのボケが不機嫌なんはいつものことやけど、和葉までこう不機嫌なんは久しぶりやからなぁ。
授業もいつもやったら受験生やのに和やかな雰囲気なんやけど、教室全体の空気まで張り詰めてるやん。
チャイムが鳴っても誰も動かんし・・・。
その静寂を破ったんは、服部くんやった。
ガタッ。
無言で席を立って、和葉の方へ近寄って行く。
和葉は和葉でそんなん無視して、
「華月、お昼食べに行こ。」
言うて教室から出て行こうとしとるし。


「ちょう待てや!」


和葉は一瞬止まっただけやったから、


「また逃げるんか?和葉!」


服部くんの口からこんな挑発するような言葉が出てきたんや。
これには和葉も勢い良く振り返った。


「またって何なんよ!なんで、あたしがあんたから逃げなあかんの?!」


あ〜〜いつもの喧嘩が始まってしもたわ・・・。
うん?
そう言えば・・・・二人の喧嘩・・・・・久しぶりなんちゃう?


「昨日やって逃げたやんか!」
「逃げてへん!!変な言いがかり付けんといて!」


そう言うと和葉は今度こそ、教室を出て行ってしもた。
服部くんもその後を追う。


「俺ん部屋から逃げてったやろが!」
「ちゃう!!自分の部屋に戻っただけや!」
「やったら何で鍵掛けて出てこんかったんや!」
「そんなんあたしの勝手やろ!」


うちは仕方なく二人の後ろについて行ってんねん。
やって、和葉にお昼食べ行こって誘われたやん。


「やっぱ逃げたんやんか!」
「うるさい!!」
「朝飯かて食いに降りて来いへんかったしな!」
「別にええやん!欲しゅうなかっただけやし!おばちゃんにはちゃんと謝ったんやから!」


ちょっ・・・ちょっと待ちぃな・・・・ここ学校の廊下やで・・・あんたら・・・・。
視線感じて振り返ったら、
「っ・・・・・・・・!!!!」
クラスの皆が付いて来とった。
興味津々の目してや。
『服部くんと和葉の喧嘩って久しぶりやん。最近色々な噂もあったし〜〜。』
『ちょと〜〜華月〜〜〜今のどういうことなん?』
『何で和葉が自分の部屋におって、朝食食べへんの服部くんのお母さんに謝るん?』
「・・・・・・・・・・・・・。」
ほらぁ〜〜〜〜、疑問もたれてるやん・・・・。
そやけど、当の二人は周りなんか眼中にないみたいや。


「ふん!ほんまは、俺ん顔見るんが怖かったんやろが!」
「何であたしがあんたなんか怖がらなあかんの!!」
「やったら、こっち向けや!!」
「嫌や!あんたん顔なんか見たない!!」


服部くんが和葉の腕捕まえたんやけど、和葉はそれを振り解いて振り向こうとはせんかった。
それは、ええんやけど・・・・。
ものごっつう視線集めてまっせお二人さん。
しかも、ぎょうさん引き連れてるし。


「昨日のは俺が悪かった!」
「謝って済む問題ちゃう!!」
「やったら、どうせいっちゅうねん!」
「何であんたが開き直るんよ!!」


喧嘩の内容もだんだんヒートアップしてっとるみたいやし。
もう、どっぷり二人の世界に入ってるんやろなぁ。
止めた方がええんかなぁ・・・・・・?


「だいたい、おまえが勝手に俺んベットで寝たんが悪いんやで!」
「平次が急に黙りこんでまうからやんか!」
「はぁ、何言うとんねん!そんなん、ほんのちょっとやんけ!」
「その、ちょっとがあかんのや!!お風呂上りはそれだけで眠いんやから!!」


・・・・・・・・・止めた方が良かったみたいやわ・・・・・・・・・。
自分らが何口走ってるか、分かってへんやろうし・・・・・・・。
そ〜〜っと振り返って見たら、・・・・・・・・人数増えてるやんか・・・・・・・・・。
とっとにかく、慌てて二人を止めようと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・したんやけど・・・・・・。
「うっ・・・・・・!!!。」
『あかんよ〜〜華月。』
『そやそや、せっかくええとこなんやからな。』
って数人に押さえられてしもた。





どうして そうなん
novel top 久遠-KUON- top