■ 5コメのオレンジ ■
平次、隆史、尚登は同時にその声がする方を向いた。

今時の女の子が教室の入り口に立っていた。
長いフワフワした髪に目鼻立ちのはっきりした、とても可愛い少女だ。

「さっそくお出ましや・・・・・。」
「ふ〜ん・・・・あれか・・・・・可愛いやん。」
「・・・・・・・・・。」

三者三様の反応。

「ほな、せいぜいがんばりや平次。」
「そやっ。尚登、物理の教科書かしてくれ。」

「おっおいっ!ちょぉ待て!こらっ・・・・・・。」

尚登と隆史は、何事もないかのように平次を置き去りにして教室を出ていってしまった。

翔子は平次を見つけると真っ直ぐに向って行く。
そして平次の目の前まで来ると、
「服部くん!始めまして、私、桂木翔子って言います。」
天使もびっくりな笑顔で名乗った。
「はぁ・・・・。」
平次の席は後ろから2番目で窓際にくっ付いている為に、翔子に前に立たれるともう退路が無い。
それでも、ぎりぎりまで後ろに下がる。

「私を服部くんの彼女にして下さい!!」

「まっ・・・・・間に合ってます・・・・・・・。」


『『『  ええ―――――――――――――――――――――!!!!!!! 』』』


外野一同。
教室にいたクラスメイトはもちろん、廊下から中の様子を伺っていて平次のファンクラブ、はたまた偶然それを聞いた一般生徒までもが同時に声を上げた。

「えっ?彼女いるんですか?」

コクコク。

平次は無言で何度も頷いている。
翔子は平次にぐいっと顔を近づけたが為に、ド迫力モノの美少女が目の前。
知らず知らずに赤くなってしまうのは無理がない。

外野が一斉に、平次に彼女がいるかいないか賛否両論ザワザワと論議が始まった。

「その人私より可愛い子ですか?」

翔子は自分の可愛らしさに自信があった。

コクコク。

平次はもう早くどいて欲しくて必死に頷いていた。
こんなところを万が一にでも和葉に見られたくは無かったのだ。

しかし、外野はどうも平次の彼女は見たことが無いと言う意見で纏まったようだった。

『服部〜〜〜ほんまに彼女いてるんか〜〜〜?』
『誰も見たいうヤツがおらへんで〜〜〜〜!』
『そんな可愛ええ子の申し出断るなん贅沢やぞ!!』

「うっさいんじゃ!!ほんまにおるんやからそれでええやろがっ!!」

『やったらいっぺんオレラに紹介せぇや!』
『そやそや!』
『そのごっつ〜可愛ええ彼女連れて来いや!』

「うっ・・・・・・。」

・・・・・・・・・・もう見てるやろが!!
とは思うもののそれを堂々と言うことは出来ない。
その為に言葉に詰まってしまい、外野と翔子に信じては貰えなかった。

「嘘なんですね!本当は彼女なんていないんですよね!」

「うっ・・・うそやない!」

真っ赤になって言っても信憑性はない。
ジリジリと翔子にさらに追い詰められ、しかもその後ろにたくさんの外野。

・・・・・・・・・・・何で俺がこんな目に遭わなあかんねん・・・・・・・・・・・。

前にいるのが男だったら叩きのめすのだが、女相手にはそれも出来ない。
進退窮まって、もう平次はにっちもさっちもいかない状態。


キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン。


平次の救世主は授業開始を告げるチャイムだった。

・・・・・・・・・・・こんなにこの音がありがたい思たんは初めてや・・・・・・・・・ほっ。

同時に隆史もやっと戻って来た。
クラスメイトが一斉に隆史に質問をぶつけたのは当然と言えば当然。
翔子もまだその場にいる。
そして隆史の回答は、
「ふ〜〜ん。そうなんや。」
だった。
平次の顔がさらに引き攣ったのは言うまでも無い。
結局、平次の彼女は誰にも信じてもらえなかった。

翔子や外野が後で尚登に聞いても答えは、
「ふ〜〜ん。そうなんや。」
だったからだ。

これはもう隆史と尚登が聞かれた時の返事を示し合わせていたとしか思えないが、それは平次以外には知るよしもなかった。




そして、翔子の平次通いが始まった。






orange top noveltop contens

はい。「5コメのオレンジ」でした。
だぁ〜〜また〜〜和葉の出番が無かった〜〜〜〜〜!
私としたことが・・・・・すっかり転校生に気ぃ取られてた・・・・・・。
がんばれ!!
誰とは言わない・・・・・・・・・。
by phantom
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