■ 8コメのオレンジ ■ |
「・・・・・・・・と言うことや。」 尚登の言葉に平次は眉間にシワを寄せた。 「それ・・・・いつ決まったんや。」 「昨日やで。和ねぇん家でオレとたかと和ねぇとで相談して決めたんや。」 「お前・・・・夜に和葉ん家行ったんか?」 「和ねぇん家があそこやったら、そういうことになるやろなぁ。」 平次の殺気も尚登には通じない。 「俺に断りも無くかい!!」 「何で一々お前に断らなあかんねん。」 「和葉は俺のんやで!勝手に家まで行くなや!」 「アホウ!そんな事で嫉妬すんな、やんちゃ坊主。」 「喧嘩売ってんのか〜?!」 「おお〜〜買うたるで〜ガキ!」 尚登と平次はお互いの胸倉を掴み合って、一発触発の構えだ。 「どうでもええけどなぁ・・・・・・いつまでじゃれ合ってるつもりや。」 そんな2人に隆史は、やれやれと言った感じだ。 この2人のこれは一種のコミュニケーションだから、ほっとけばいつまでも続く。 「坂本〜〜!お前も同罪やで!」 「たかもこんガキに何か言うたれや!」 「はぁ・・・・・勝手にやっとれ。」 隆史は付き合いきれんとばかりに、2人を屋上に残して部活に行ってしまった。 別に尚登と隆史は平次に黙って和葉の家に行った訳では無い。 何度か平次の携帯に連絡を入れたのだが、繋がらなかっただけなのだ。 平次が何処にいたかと言うと、サイレンに導かれて事件現場に首を突っ込んでいたのだった。 だから、昨夜の集まりに呼ばれ無かったのは自業自得だろう。 これが和葉に言わせれば、鉄砲玉のやんちゃ坊主。 そんな平次抜きの和葉、尚登、隆史で何を決めたかと言うと、来週の火曜日のことだった。 その日は、改方学園の創立記念日で学校も部活も休みになるので、久しぶりにみんなで何所かに出かけようというのだ。 「ええ加減にせぇや平次!」 「お前こそ、ちょっかい出すんはええ加減にヤメや!」 「そんなんオレの勝手や。それよりええな!火曜日は9時に和ねぇん家に集合やで。」 「誰が行く言うた!」 「別にええで〜〜!オレら3人で楽しんで来るからな〜〜。」 「俺が行かんのに、あいつだけ行かせる訳無いやろがっ!」 「和ねぇはもう行く言うてんのや!」 「はぁ〜〜?!誰が行かせるかぁボケッ!」 「お前が行かへんのやったら、和ねぇはオレん後ろに乗ってもらおかなぁ〜。」 「ドァ〜ホ!!あいつん指定席は俺の後ろて決まってるんや!」 「そんなんだ・・・れ・・。」 「それってバイクでツーリング行く話?私も行きた〜〜〜〜い!!!」 「「 へっ? 」」 平次と尚登はお互いに掴み合ったままの状態で、顔だけを声がする方へ向けた。 じゃれ合いに夢中になっていて、翔子が屋上に上がって来たことにまったく気付かなかったのだ。 「それに〜〜〜、和ねぇって・・・・もしかして遠山先生のこと〜〜?」 「「 うっ。 」」 平次も尚登も固まってしまった。 「服部くんたちと遠山先生って・・・・・・・・・。」 翔子の顔は笑顔である。 平次と尚登は顔が引き攣っている。 「私も連れて行ってくれるよね〜〜〜!」 「「 あっ・・・いやっ・・・・・。 」」 「え〜〜〜ダメなのぉ〜〜?」 翔子は可愛くイヤイヤをしながら、それでも2人にクルッと背中を向けて、 「残念・・・・・。悔しいから、みんなに服部くんたちと遠山先生がアヤシイって言っちゃおうかなぁ〜。」 と呟きながら小首を傾げて歩き出した。 「「 ちょお〜待て! 」」 2人はそんな翔子の肩をガシッと捕まえた。 このまま行かせるのはマズイと思ったのだろう。 「私も連れて行ってくれるよね!」 さっき以上の笑顔で振り返った。 平次と尚登はお互いに顔を見合わせて、がっくりと頷いた。 「「 ・・・・・・。 」」 翔子の登場からは、2人の息はぴったりだった。 そのころ隆史は剣道着に着替えて、道場に向っていた。 すると、道場の前で平次のファンクラブに囲まれている和葉。 少し離れていて声までは聞こえなかったが、どういう状況なのかは一目瞭然だ。 「お前ら何やってんのや!」 隆史の声にその場にいた全員がビクッと震えた。 普段女の子に対してあまり声を荒げたりしないだけに、その一言は驚きだったのだ。 『さっ・・・坂本くん・・・。』 隆史の険しい表情に、女の子たちは思わず数歩退いた。 「なんでも無いねん。ちょっと話してただけやし。なぁ?」 和葉はその場の雰囲気を作ろうように、笑顔を女の子たちに向ける。 『遠山先生の言う通りやで・・・。』 だが、隆史の表情は変わらない。 『うちらはこれで。遠山先生、さようなら。』 「はい。さようなら。気ぃ付けて帰りや。」 女の子たちは真さに逃げるように、その場から走り去って行った。 彼女たちが完全に見えなくなってから、さらに周りを見回してから隆史は和葉に声をかけた。 「ほんまは何言われたんや?」 さっきまでのキツイ表情とはまるで違う。 「何も無いて。たかくんの気にし過ぎやて。」 「和ねぇは昔っから嘘付くんが下手やなぁ。顔にはっきり出てるで。」 和葉は慌てて両手をほっぺたに当てた。 「何言われてん?どうせ服部んことやろ?」 「・・・・・・・・・・。」 「和ねぇは何も気にすることなんか無いで。服部はあれでも、和ねぇしか見えてへんからな。」 「・・・・・・・・・・ほんまにそうなんかなぁ・・・・。」 隆史は和葉がそんな返事をするとは思っていなかったのか、少し驚いているようだ。 「・・・・・・・・・・ほんまにあたしなんかでええんやろか・・・・。」 ぽつりと出てしまった言葉だったが、それは和葉の本音だった。 しかし2人はいつの間にか道場の横にある木の下で、はたからはとても良い雰囲気に見えてしまっている。 『坂本主将と遠山先生ってええんちゃうかぁ〜〜。』 『そうですね。美男美女でめちゃめちゃ似合ってますね。』 『結構深刻な話しとるようやけど・・・・。』 『和葉先生の彼氏って年下って噂ですよ。もしかして・・・・・・。』 剣道部全員の視線が2人に注がれている。 どうやら、新たな噂が出来てしまったかもしれない。 |