平次と腕組んで歩くなん初めてやから、始めは歩調がなかなか合わへんかった。
「平次!早い!もうちょうゆっくり歩けへんの〜?」
「は?」
は?ちゃう!
何を呆けた様な顔してんの、あたしのこの状態見たら分かるやろ?
分かるやんな?

「?」

分からんかいっ!!

あたし汗だくやん!
めっちゃ息も切れてるやん!

「具合でも悪いんか?」

・・・・・・・・・・。
この男は天然か?

・・・・・・・・・・天然やな。

やっちがその気なら、あたしにやって考えがあんで。

「歩くの早いって言うたの〜!」
平次の左腕を両手つんつん引っ張って、上目遣いにほっぺたを膨らませるんや。
「へ?あ、す、すまん・・」
困った顔して、右手で頭掻いたかてあかんで。
「あたしもうバテバテやの〜〜!」
って今度は平次の体に抱き付いてやんねん。
うっ!余計に暑なったけど、ここは我慢や。
「え?お・・おい!」
平次の胸にぴったりくっ付いてるから、心臓の音が急に早うなったんがダイレクトに分かるわ。
「か・・和葉?ちょ・・え?あ・・」
日本語になってへんよ。

「和葉?ちょっと和葉!あんた天下の往来で何やってんの?」

・・・・・・・・・・。

「平ちゃん困ってはるやないの!!早、離れなさい!」

・・・・・・・・・・。

何で居るんよ、おばちゃん。
あたしはもうちょい遊びたかったのに〜。
そう思いながらも、あたしをこの京都に呼び出した張本人であるおばちゃんを無視する訳にもいかず、渋々と平次の側から離れた。
「あんた相変わらず平ちゃんに纏わり付いてるんかいな?」
おばちゃんそれは誤解や。
「ごめんなぁ平ちゃん。この娘ほんまに平ちゃんのことが好きやさかい、見境がのうて。」
「ちょっと、おばちゃん何・・」
「いや、気にせんといてやおばちゃん。和葉のことは俺が一番分かってるよって。」
ああ・・・
人の言葉遮って、笑顔全開で平次が平次や無いセリフのたもうてる。
「そ・・・そう・・やね・・・」
いつもやったら自分に同調するはずの平次が、キモイセリフのたまうからおばちゃんも驚いてるやんか。
しかも、あたしら見比べて、
「あんたら・・・・やっとくっ付いたん?」
なん聞いてくるし。

・・・・・・・・・。

ここは否定すべきか?肯定すべきか?

どないしょ?

「そうやねん。」
って、あたしが悩んでる間にあっさりかい!
「そうなんや!やっとくっ付いたんかいなあんたら!」
おばちゃんはそれはそれは盛大な笑顔で喜んでくれてる。
「よかったなぁ和葉!今まで、平ちゃん追い掛け回しとったかいがあったんやなぁ。おめでとうさん!」
ああ・・・
ニセモノ平次の誤解をさらに招くようなことを・・・
恐る恐る平次の顔を見上げたら、めっちゃ嬉しそうに微笑んでるやん。
はぁ・・・
複雑や・・・
何やそこはかとなく罪悪感まで感じてまうやんか・・・
そやから思わず、引き攣った笑顔になってもうた。
それやのに、
「もう、何やのこの娘。今更照れんでもええやん。」
言うておばちゃんはバシバシ叩いて来る。
今は京都に住んどっても元は生粋の大阪人、どついて喜びを表すの止めてや、痛いやんか。
「ほな今日は平ちゃんも手伝うてくれるん?」
「かまへんで。」
当然の様にあっさり承諾した平次と共に、あたしは本来の目的であるおばちゃん家に向かうことになった。
しかも、さっきあれだけあたしに文句言うとったおばちゃんも、あたしらが付き合うてると分かったとたんに、
「恋人やったら腕組んで歩かなあかんわぁ〜。」
って今度は無理矢理あたしらに腕組ませて、自分はそれを眺めてニコニコや。

こうなったらしゃ〜ない。
あたしも腹括ってこの状況を楽しも。
さっき、擬似恋人が体験出来る絶好のチャンス!って思うたばかりやんか。

どうせ、おばちゃんに見付かってもうたら、お父ちゃんに報告されるんも時間の問題やし。
そうなると、平次ん家のおっちゃんやおばちゃんにも伝わってまうやろうし。
早々すぐに平次の記憶を戻らんやろし。

ええやんな、ちょっとぐらい。


って思うてたのに・・・・・この男は・・・。

どこまで。
どこまで自分勝手やねん?





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