それから立ち話もなんやからいうて、あたしの部屋で説明することにした。
本物の平次やったらあれやけど、このニセモン平次やったら特に問題無いし。
それに、平次と一緒に居るとこをこの辺の人に見られた無い言うんが一番の理由やったりする。

「・・・ちゅう訳であんたがここに居るんよ。」
「・・・・・・」

ピンクの丸いテーブル挟んで真面目な顔して向かい合うて座ってるんやけど、なんや緊張感に欠けとる気がする。
平次は顎に手ぇ当てて考え込んどるみたいやけど、あたしはダルダルで麦茶右手にうちわ左手。
やってなぁ、驚き過ぎと訳分かん過ぎで、もう、ど〜でもよ〜なってん。
「分かったぁ〜?」
「へ?」
「やからぁ〜、何であんたがここに居るんか分かったん?て聞いたの〜。」
「あっあぁ。それなんやけどなぁ、別々に来たいうんはメットが俺のやつしかないんで分かるんやけどなぁ・・・」
平次にしては珍しく曖昧な返事やなぁ。
「あたしの大学に行ったんが納得出来へんの?」
「いや。それも別にええねん。」
ふ〜ん、そうなんや。
「やったら、ここに来れたんが納得出来へんの?」
「それも俺やったら当然やからええねん。」
あっそっ。
「ほんなら何が気に入らんの?」
「・・・・・・」
「もう、はっきり言いなや。」
「何で・・・俺が・・・和葉のアパート知らへんねん。」
「興味無かったからやない?」
「・・・・・・」
ほんまなんやから、しゃ〜ないやん。
「やってなぁ〜『なんで俺と寝た』言うて、めっちゃ怒ってたんやで。」
「・・・・・・」
「やから、あっちの平次はあたしなんまったく眼中に無いんやて。」
「・・・・・・それは・・・ちゃうで・・・」
「何が違うん?ほんまやで。」
「そんなん・・・」
「そんなん、何?」
「・・・・・・」
また、だんまりかいな。
「あたしら付き合うてへんし、恋人でも無いいうんが分かったやろ?そやから、もうあたしに構うてくれんでもええよ。」
本物の平次は激情型で直ぐキレっとったけど、こっちの平次はどうやら沈着タイプのようや。
一々考えてから答えとるし、まだ一度もキレたことないし。

どっちかいうと、こっちの方がありがたいんやけどなぁ。

なん思うてると、またあっちの平次はキレるんやろなぁ。

「な〜に笑ってんねん。」
「別に〜」
あかん、あかん。
つい顔に出てたみたいや。
「それで、どうすんの?もう、あたしとはお終いやろ?」
「何でやねん?」
「やって、平次とあたしは元々付き合うてへんのやから。」
「それが俺に何か関係あんのか?」
「え?やって、あんた一応平次やん。」
「そやで。そやけど、俺と和葉は付き合うてるやんか。」
「そんなん言うても、たった1日やん。」
「それやったらあれか?お前は付き合うても無い男と寝るいうんか?」
「そ・・それは・・・」
「それみ。俺らは付き合うてるし、恋人同士やで。」
「けど・・・」

これって、ええんかなぁ?

「この話はこれで終いや。俺、腹減ってねん。何か食わしてくれや。」
「ええけど・・・もう1人の・・・あっちの平次はどうすんの?」

やっぱ問題はあっちの本物の平次やろ。

「問題無いやろ。なんせ俺やしな。」
「それはそうやけど・・・」
「むしろなぁ・・・。まぁ、ええか。考えが纏まってから話すさかい、もう少し待ってくれや。」
そう言うてニコッて笑われてしもたら、もう言い返せへんやん。

この平次はあたしより上手かも。

それから平次が好きやった”お好み焼き風チャーハン”を作ってみたんやけど、やっぱ好みは同じなんか見事完食してくれた。
「ごっつう美味かったわ。流石、俺の和葉やな。」
やって。
こんなん慣れてへんから、なんか妙にテレてまう。
「おおきに。」
平次が素直やと、あたしまで素直になれる気ぃするわ。

これって、ええなぁ。

なんて、すっかりこの平次のペースに嵌ってしもて、2人で平次の頭ん中どうなってんの?とか、記憶喪失って何やろ?とか話してる間にどっぷりと夜も更けて、結局ニセモン平次はあたしのアパートにお泊りすることに。

ええねん。
あたしとこの平次はちゃんと付き合うてるんやから。
恋人ごっことちゃう、れっきとした恋人同士なんやから。

って思うてても朝目ぇ覚めたら、なんでか、また、本物に戻ってんねん。
パジャマ着とって良かった。
そういう問題とちゃうとは思うけど、流石に昨日の今日やしなぁ。
アレの後、ニセモン平次がどうしてもパジャマ着い言うて、自分もトランクスとTシャツ着たからなんやけど。
やっぱ、こうなるん分かってたんかな。

そやけど・・・
この、すんごい殺気は何なんやろ・・・

顔見んでも、ビシバシ伝わって来て痛いんですけど。
逃げたらあかん・・・かな?
てか、この雰囲気やと逃げたら背後からバッサリ殺られそうな気ぃするし・・・



あたしは・・・どうしたらええんでしょうか?





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