耳の掃除やったら、今朝シャワーの後にちゃんとしたんやけどなぁ。
もっかいやっとこ。
あたしはバックの中にあるコスメポーチから綿棒を取り出して、いそいそと右耳から掃除を始めた。
「おいっ!何やってんねん?!」
「耳掃除。」
「そんなん見たら分かるわいっ!やから何で今それやねん!」
「やって、変な声が聞こえるんやもん。」
「はぁ〜?何が”空耳アワ〜!”じゃボケッ!」
おっ!平次上手いやん!座布団1枚。
「感心してへんと止めんかい!ってコラッ!言うてる傍から左もすなっ!」
やって〜、片一方だけなん気持ち悪いやん。
「ええ加減にせぇ!!」
短気な平次に両手掴まれて、後ろのベットに押さえつけられてしもた。
「ちょっと何するんよ!まだ終わってへんのに。」
「そんなボケいらんのじゃ!どアホッ!」
「あん・・んん・・・」
今度は口を塞がれてしまった。
ベットに押し倒されての強引なキス。
彼氏の平次には京都の部屋で、ほんで本物にはここ寝屋川の部屋で、どっちも平次のベットの上やん。
やっぱ、行動パターンは同じなんやんぁ。
なん思うてると、

「こんこん。お茶とお菓子持って来たんやけど。」

ておばちゃんの音声ノックと共に扉が開く音がした。
しかも今度は躊躇無く開けてはる。
ってあかんやん!
とにかくこの状態を何とかせんと。

「あらあら。」

あ〜おばちゃんにこんなトコ見られてしもた〜。
ジタバタもがいても、体の上に居る物体は一向に退けようとはせん。
もうこうなったら、おばちゃんに助けを求めよ。

おばちゃん助けて!

の意味を込めて、右手をグ〜パ〜グ〜パ〜してみた。
すると何を思いはったんか、ニコッて笑うて右手を小さく振ってくれた。

って、ちが〜〜〜〜〜〜うっ!!!

見て!よう見ておばちゃん!
オカシイやろ?
この状況は変やろ?
あたし、左手に綿棒で右手グ〜パ〜グ〜パ〜で足はバタバタしてるやん!

「そやっ!写真撮ろ!」

・・・・・・・・・。

なっ・・・何を言ってはるんですか・・・

そもそも、息子のこんな姿見て何でそんなに落着いてられんのおばちゃん?
あたし襲われてるやん!

わぁ〜ぁ〜〜、ほんまに携帯出してはる〜〜〜
しかもしかも、ほんまに写真撮ってはるし・・・

何を・・・考えてはるんですか・・・

ちゅ〜か〜あんたも何考えてんの!こらっバカ平次!
早どけっ!どかんかいっ!

うりゃ〜〜〜〜〜!!!

下から腹を思いっきり蹴り上げてやった。
平次はベットの反対側にある壁に激突して、そのままずるずる逆立ちの状態で固まった。
「はぁはぁはぁはぁ・・」

「あらあら。」

おばちゃんはまたもや驚いた様子も無く、左手にしっかと携帯持ったまんま、
「はい、和葉ちゃん。」
言うて麦茶の入ったコップを差し出してくれた。
取り合えず飲んどこ。
「ぷはぁ〜」
一気飲みや。
「ええ飲みっぷりやねぇ和葉ちゃん。ほな、ごゆっくり。」
「・・・・・・」

おばちゃん・・・

結局おばちゃんは携帯の画面をニコニコ見詰めたまんま、階段を下りて行ってしもた。

「・・・・・・・・・・・・」

ふっ深く考えるんはよそ。
おばちゃんの考えてることなん、あたしら凡人には到底理解出来へんに決ってるし。

「ぷはぁ〜」
あっ、無意識に平次の分まで麦茶飲んでしもた。
喉渇いてたんやから、仕方無いやん。
平次のせいなんやし、これはあたしが飲むんが正しい。
問題無い。
それよりおばちゃんや。
おばちゃんの態度は横に置いといて、絶対誤解しはったわ。
こっちは大問題やん。
あたしらそんな関係や無いのに〜!
って・・・・・・あれ?
あたしの彼氏は誰?

平次。

ほんで、さっきあたしが蹴り飛ばしたんたは誰?

平次。

今日デートするんは誰?

平次。

おばちゃんが誤解したんは誰?

平次。

・・・・・・。

これって、どうしたらええんやろ?




triangle 11 triangle13
novel top triangle top material by Harmony