おばちゃんの誤解?は結局解けへんままや。
やって彼が「放っとったらええ」て言うやもん。

あれからやっぱいつもんみたいに彼氏の平次に変わった平次と、念願の初デート。
言うても場所は、近場やったんやけどな。
平次が体中痛い言うし、おばちゃんが「お夕飯作るから食べて行ってな」言うてくれたから。
やからHEPで遊んで買い物してお昼食べて、これから観覧車乗って帰る予定やねん。
ず〜と腕組んで歩いて、平次があたしに似合う言うてオレンジ色のサマードレス買うてくれてん。
もう、嬉しゅうて嬉しゅうて、速攻それに着替えてん。
あたしはお返しに平次に似合う真っ黒なんやけど、袖と背中に格好ええ刺繍のあるTシャツ買うて上げた。
もちろん平次もすぐにそれに着替えてくれたんよ。

ふふふふ・・・ ラブラブや〜!

途中何人か改方の友人に会うたけど、皆、あたしら見てあんぐりしとったわ。
高校時代には信じられへん位に、バカップルに見えるんやて。

ほっとってんか。
バカップル上等やん!

平次のファンらしき女の子達からも何や不穏な視線感じるんやけど、今は昔と違てぜ〜んぜん痛くも痒くも無いわ。

これはあたしのモンやから!

って鼻で笑って、これ見よがしに平次の腕に抱き付いてやった。
遠くに聞こえる悲鳴がこんなに心地ええもんやったなん、知らへんかったわ〜。

今迄のあたしの苦労を思い知れ!

ほんまにあたしは浮かれきっとって、本物の平次のことなんとっくに忘却の彼方やった。
観覧車の列に並びながら今日のウキウキデートを思い出しとったら、あたしの平次が、あたしの平次が事もあろうか本物の話題を持ち出した。
「今朝の俺のことなんやけどなぁ・・」
もう、せっかくええ〜気分やったのに何でその話題やの〜。
「あれはきっと確信犯やで。」
「確信犯?」
避けては通れへんコトやし、”確信犯”言う言葉に引っ掛かるんもあって聞き返してしもた。
「そや。考えてみ。わざわざ和葉の大学まで行って「俺の和葉」言うたんも、今日おかんにわざとキスしとるとこ見せたんも、和葉は自分のモンやて周りの人間に認識させる為や。」
「大学なぁ、あれはほんまに迷惑やったわ。次の日から、どんだけ友達や知らん女共から質問攻めにされたか。はぁ、思い出しても腹立つわ。」

あの日を境目に、あたしの大学生活から平穏言う言葉は消えた。
入れ替わり立ち代り次から次へとあたしの側にやって来て、
『ほんまに和葉の彼氏なん?』とか
『どうやってGETしたん?』とか
『寝取ったん?』って誰からやっ!!
などなど散々やったわ。
挙句には、
『工藤くん紹介して』とか
『白馬くん知っとる?』とか
『KIDに会わせて!』って出来るかぁ〜!!
みたいなんまであって疲労困憊したんやで。
たった2日でそれやで?
夏休み明けがどんだけ悲惨なんか、今から想像出来てしもて憂鬱や。

「・・は。和葉!か〜ず〜は〜!」
「ふぇ?」
「トリップせんとちゃ〜んと前みとらんと転けんで?」
すでに段差に蹴躓とったあたしは、平次の腕に半分ぶら下がっとる状態やった。
いかんいかん。
「ほんで、どこ行っとたんや?」
平次が可笑しそうに聞いて来た。
「大学。」
「そんで、顔がぶっさくいくになっとったんやな。」
「そんなに変やった?」
本物にこんなこと言われたら喰って掛かるんやけど、これはあたしの平次やからええねん。
「眉間に皺寄せて、目ぇ釣り上がっとって、口はタコみたいやったで。」
うっ。
それはあんまりやん。
ちょこっと拗ねた様に口尖らせて平次を見上げたら、
「機嫌直し。」
言うてチュッ!てしてくれた。
もちろん笑顔全開で、
「直った。」
でお返しのチュッ!

もう最高やん!バカップル!

他人がやってるとムカツクだけやけど、自分やとパラダイスやん!

「で?何の話やったっけ?」
と墓穴を掘るあたし。
「確信犯。」
平次の表情から笑顔が消えてしもた。
あぁ・・せっかくのラブラブが・・・あたしのアホ。
「そやけど、何で平次がそんなことするん?」
掘ってしもたモンは仕方が無い。
「和葉を逃がさへん為やろ。」
「 ? あたしどこにも行かへんよ?」
「・・・・・・」
平次は難しい顔であたしを見下ろしとる。
何か変なコト言うたかな?
「そういやなぁ、あいつに告られたんやったな。」
「う〜ん、どうやろ?あたしの聞き間違いかもしれへんし。」
「キスされたやんけ。」
「キスしたかっただけちゃう?」
「・・・・・・」
今度は腕組みして、本気で何か考え始めてしもた。

何考え込んでんのやろ?

なぁなぁ、もっとイチャコラせ〜へんの?
せっかくの初デートなんやで?
本物のことなんどうでもええやん?

て熱視線送っても、跳ね返されてしもた・・・


どうやってこっち向かせよ?





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