絶対ホンモンになった思たあたしは、速攻平次の側から離れた。
やって捕まってしもたら、ま〜た何かされるやん。
「・・・?」
そう思うてたんやけど、目の前の平次は痛そうの眉間にシワ寄せたまま目ぇ閉じて、腕はあたしが振り解いたままの状態で体の横にだらんとある。
「平次?」
まったく動かへんし、怒鳴り散らす様子も無い。

どないしたんやろ?
もしかして、打ちドコロ悪かったんかんかな?

ちょこっと心配になって、恐る恐る近付いてみても動く気配が無い。
「ちょっと平次?・・・そんなに痛いん?」
すると、
「和葉からの愛情表現は大歓迎なんやけど、まだ朝やから少しお手柔らかに頼むわ」
って笑いを含んだ柔らかい声がした。

これ・・・ホンモンやんなぁ?

「平次?」
「何や?」
「あんたホンモンやんなぁ?」
「俺はさっきからずっと俺やで」
「はっ?」
「やから、俺は俺や」

・・・・・・・・・・・・意味分からん?

「それは・・・あんたがホンモンの平次いうことやろ?」
「服部平次はこの世の中で、俺一人やで」

・・・・・・・・・・・・これって体が1コいう意味やろか?

「まぁ、そらそうやろなぁ〜。そやけど、中身は違うやん」
「違わへんで。体も心も俺一人や」
「それって”あたしの平次”もホンモンのあんたも平次やっちゅうことやろ?」
「まったく・・・相変わらず飲み込みの悪い女やなぁ」
ってごっつう呆れた顔して言われてしもたわ。

・・・・・・・・・・・ホンモンやとやっぱムカツクわ。

「今までのは全部芝居や言うとるんじゃ」
「・・・・・・」

はぁ〜〜〜?

って声に出して言うたつもりやったけど、あまりの言い草に口があんぐり開いただけやった。
何言うてんのこの男?
いくら何でもそれは違うやろ?

「高校を卒業する時に俺は、大学の4年間でお前に相応しい男になろうて決めた。そやから、あっちに行ってからは俺からはほとんど連絡せぇへんかったやろ。お前に会わんとこて、思うてたからな。会わない間にお前がびっくりする様な男になって、そんでお前を俺のモンにするつもりやったんや」
「・・・・・・・・・・・・」
「そやけど・・・それが・・そう決心したことが返って裏目に出てしもた。お前に会いたいのに、会われへん。声を聞きたいのに、聞かれへん。自分で決めたことやからそれを貫こうとすればするほど、お前に会いたいて気持ちは募るばっかや。何べんバイクで神戸に向かいそうになったかしれん。一っぺんなんか、どうにもこうにも自分で自分を押さえきれへんでお前のアパートの前まで行ってしもたこともあったんやで」
「あたしのアパート・・・知ってたん?」
「当たり前や!俺がお前の・・和葉んことで知らんコトなんあるかい!」
「やって・・・あの時・・・大学の友達に聞いたて・・・」
「アホウ!それやったら、あんな短時間で行けるかい!勝手に大学抜け出したお前より先に着いとったやろが?」
「そう・・・やけど・・・」

あか〜ん・・・
何か頭の中がまたグルグルしてきた。

「それにや。お前、俺が病院入院しとる間に他の男とデートしたやろが?」
「へ?」
飛んでる頭にこれまた予想外の来襲が。
「へ?やないで!こらっ!な〜に見舞いにも来ぃへんで、どこぞの馬の骨とイチャコラしてんねん?」
「・・・・・・やって・・・彼氏作ろう思うてたんやもん・・・」

あっ。
す・・素直に答え過ぎてしもた・・・

うわ〜。
ごっつ〜恐い目ぇで睨んでるや〜ん、ちょこっと離れよ。
さり気なさを装って、あたしはベットの端に座ることにした。
これで良し。

平次は床に寝そべってた体をゆっくり起こしたけど、目ぇは変わらずあたしを睨み付けたままや。
そんなに睨まんでもええやん。
やって〜仕方ないやんか。
あんたあたしのこと忘れた言うたんやから。
そう思っても何や口に出して言うたらあかん気がするから、止めとこ。
にしても、何でそれ知ってるんやろか?
これは聞いてもええやんな。
「そ・・そやけど・・・何であんたがあたしがデートしたこと知ってんの?」
「それは企業秘密や」
「ずっこ〜〜〜!!何やのそれ!あんた企業とちゃうやん!そんなんあかんで!」
思わず勢い込んで、平次に掴み掛かりそうになってしもた。
あかん、あかん。
これはホンモンや。
「ほんまに、なんであんたがそんなコト知ってんの?誰かスパイでも居るん?」
「おる。言うたらどうする?」

え?!マジですか?!





triangle 19 triangle21
novel top triangle top material by Harmony