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鏡幻月華 ~ 五の昼 ~後編 |
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「ええ子やな、和葉」 「アタシ、ちゃんと『遠山和葉』になっとるやろ?」 「ああ、見事やで」 「ほんなら」 持っとった巾着を横に置いて、和葉が立ったままのオレの足を探して畳に指を這わせる。 「褒美はまだやで?」 「ちょっとだけ」 「ちょっとだけで済むんか?オレのモンが欲しいて駄々捏ねるんとちゃうか?」 「ほんまにちょっとだけでええから」 オレの足を見つけ出した和葉の手が、着物の裾を乱しながら少しずつ上がってくる。 少し屈んで、その手を押えた。 「ヤった事、気付かれるワケにはいかへんのやで?」 「お義母さんやて、いつも誤魔化せとるんよ?」 「アレは大抵が風呂上がりやからやろ。それに、いくらあのオカンでも『夫婦の営み』やったら気付いても知らんフリするわ」 「せやけど……」 和葉がその見えへん眼をオレに向ける。 作り物とは思えへんほど自然に、熱く潤み始める義眼。 篭の外では必ず閉じとるように言い聞かせてあるのに。 「外では眼ぇ閉じとれて言うてあるやろ?」 「ココには誰も居らへん」 「誰も居らんでも、ココは『篭の外』や」 和葉の眼の上に手をかざして、瞼を閉じさせる。 今回は正月やった事もあってか、寝屋川の実家に行ってからもあれやこれやと忙しくて今までずっと構ってやれへんかったし、満足するまでとはいかへんが今のうちに少しあやしてやっといた方がええかもしれへんな。 「まあ、ええか。頑張っとるしな」 「うん」 「工藤らが帰るまで、気ぃ抜くんやないで?」 念を押してから壁に凭れて座り込み、和葉をオレの前に立たせる。 「ちょっとだけ褒美の前払いや。但し、声上げるんやないで?」 「うん」 「コレ噛んどき」 袂から取り出したハンカチを和葉に渡す。 「ええ匂い。伽羅かな?」 「せや。鈴つけた匂袋をな、袂に入れとるんや。今日はこの匂いと鈴の音がオレの目印やで」 袖を振って鈴を鳴らしてみせる。 ほんの小さな音やけど、耳のええ和葉はきっちり聞き取るやろう。 「この手ぇは、ここについとき」 素直にハンカチを噛んだ和葉の手をオレの後ろの壁につかせて、重なった裾を開いて和服用の色気のない下着を下ろす。 こんな色気のないモン穿かせるくらいなら、和装なんやし下着なんいらんのやけど、オカンが着付けたんやし外出せなならんかったんやからしゃあない。 太股を軽く叩いて足を上げさせて左足だけ抜くと、和葉は足を開いてねだるように腰を揺らした。 「待ちきれんようやな」 淡い茂みに息を吹き掛けてやると、ふるりと腰が震える。 和葉はカラダの隅々まで愛撫と痛みとが欲しいんやろが、着物のまま着崩れさせへんで可愛がってやれるんはココだけや。 時間はかけてやれへんから、滲んだ蜜でもうしっとりと濡れとるオンナの部分に舌を這わせた。 蕾にたっぷりと唾液を塗りつけ、繰り返し甘噛みして吸い上げる。 堪えきれずに蜜を流し始めたオンナの口に、ディープキスするように舌を差し込んだ。 「んっ……んふっ…」 舌の長さなんたかが知れとるから奥まで可愛がったる事は出来ひんが、代わりに入り口付近を丹念に舐めて、溢れてくる甘い蜜を啜ってやる。 物欲しそうに揺れる腰が強い快楽を求めてオレの舌を少しでも奥に導こうとする。 焦らすのも愉しいが時間をかけられへんから、左手で尻を掴んで軽く爪を立ててやった。 「ふんっ!んんんっ!!」 噛みしめたハンカチの奥でくぐもった鳴き声を上げながら、和葉が釣り上げられた魚のように背を反らす。 その動きに、振袖に合わせてアップにした髪に挿した髪飾りの銀の鈴がチリチリと可愛らしい音を立てた。 着物やしホンマは簪にしたりたかったんやけど、痛みを欲しがる和葉が万が一カラダに突き立てようとした時に簪よりは柔らかいUピン使うた髪飾りの方が安全やから仕方なく妥協した。 簪を買うてやろうとしてたオカンにも、目ぇ見えへん和葉が怪我したらアカンからと言いくるめて髪飾りを選ばせた。 チリチリと鳴る純銀の鈴は、府警を出る時にオレが髪飾りに着けてやったモンや。 実家以外の場所に外出する時にはお互いに鈴を着けるのがお約束になっとるから、今回も違和感のないモンを選んで身に付けとる。 まあ、オレの鈴は和葉のための目印やけど、和葉の鈴は猫につけてやる首輪みたいなモンやな。 「んっんっ……ふんんっ!」 壁に手をつかせとったんに、和葉はいつの間にかオレの頭を両手で掴んで下の口に引き付けようとしとる。 このまま和葉が辛抱たまらんようになるまで焦らしたるのも愉しいが、残念やけど時間ゆうモンがあるし、カラダと心をクールダウンさせたらなならんから、この辺で軽くイカせて褒美の前払い分をくれたった方がええやろ。 右手で和葉に持たせとった巾着を引き寄せる。 巾着には小銭入れとティッシュ、桜の刺繍を散らしたモンとレースをふんだんに使うたモンの二枚のハンカチに今日は化粧をしとるから最低限の化粧道具が入っとる。 そん中から手探りで薄いレースのハンカチを取り出して、レース部分を二本の指に巻き付けた。 「そろそろイっとき」 舌を抜いて、代わりにレースを巻き付けた指を突っ込む。 空いた舌ですぐ上にある蕾を舐めながら、指はもう知り尽くした和葉の感じるポイントをレース越しに撫でてやる。 薄いレースのザラザラ感がもたらす軽い痛みを追い掛けるように、和葉が腰をくねらせる。 左手で尻に爪を立て、敏感な蕾を吸い上げ軽く歯を立て、ナカの感じるポイントにレースを巻き付けた指を擦り付ける。 「んっんっ…ふんんっ!んんんんっ!!」 オレの髪を掴みながらふるふるとカラダを震わせた和葉が、一瞬息を止めてカラダを硬直させる。 短い息を吐いて力を抜いた和葉は、オレの頭に置いた手もそのままに息を弾ませとった。 「気持ち良かったやろ?」 和葉の口から外したハンカチで自分の口元と指を拭い、もっととねだるようにひくついとる和葉の下の口の蜜も丁寧に拭き取ってやる。 「褒美の前払いはしたったで」 「もっと……」 「それはアカン。褒美は工藤らが帰ってから、どんくらい増やしたるかはオマエの演技次第やて約束や」 「せやけど、まだ時間あるやろ?平次やって……」 「オレん事はええ。誰にも気付かれんと自分で宥める手段なんいくらでもあるし、それくらいの時間はまだある」 「アタシが慰めてあげる」 「アカン。ここが何処か、これから何をせなならんか、わかっとるやろ?」 オレの前に跪こうとする和葉の足を軽く叩く。 「褒美は何が欲しい?あのアクセサリーはもう作らせてあるで?」 「ほんまに?」 「ああ、工藤らが帰ったらすぐにでもくれたる。ええ子で居れたら欲しいモンいくらでもくれたるから、他にもおねだりしたいモンあるんなら今から考えとき」 下着を元のように穿かせて、裾を直す。 どこにも着崩れがないんを確認してから、和葉を座らせた。 「和葉はええ子やな」 「んっ」 噛み締めとったハンカチに色を移してもうたからか剥げかけた口紅を拭うように唇を舐め、深く口づけ、舌先を軽く噛んでやる。 「まだ足りひんやろうが、前払いなんやから我慢せえや」 「……うん」 「ええ子や」 巾着から口紅と紅筆を取り出して、綺麗に引き直してやる。 和葉の蜜を吸った2枚のハンカチは、何かのためにと持って来とった手拭いに包んでオレの着物の袂に戻した。 オマケが欲しくて甘えてくる和葉の掌を爪でつついたりして宥めてやっとるうちに、上気してうっすらと汗を滲ませとった頬も元に戻った。 「眼ぇ開いてみ?」 和葉の顎に指をかけて上向かせる。 素直に眼を開いた和葉の義眼は、澄んだ光を取り戻しとった。 「明日、工藤たちが帰るまでは眼ぇ開けたらアカンで」 「篭ん中でもダメなん?」 「他人が居るなら、たとえ篭ん中でも『外』と同じや。オヤジたちが来た時やってそうやろ?」 「うん、わかった」 「ええ子やな、和葉」 和葉の小指の腹に、ぎゅっと痕が残らん程度に爪を食い込ませてやる。 「この後も頑張れるやんな?」 「うん」 「着けてやったペンダント、外すんやないで?」 「うん」 外出する時や、篭に居っても一人にする時に、和葉につけさせるようになった薄いペンダント。 薄いモンやゆうても着物の下にペンダントはイマイチやったが、ヘッド部分にGPSを組み込んだ発信機を仕掛けてあるコレは、首輪に繋ぐリードみたいなモンや。 「ええ子や」 耳朶を軽く噛んで褒めてやった時、丁度ええ具合に携帯が鳴った。 「工藤と姉ちゃんの支度が済んだようや」 「蘭ちゃん、どんな振袖やろ?きっと綺麗やろな」 「その調子や」 和葉に手を貸して立たせて、巾着を持たせてやる。 「ほな、もう一戦行こか」 工藤らが知っとる『服部平次』と『遠山和葉』に戻った事を確認して、借りてた座敷を出る。 着付けを終えた工藤と姉ちゃんは入り口脇で待っとった。 「よう似合うとるで」 姉ちゃんは朱色の地に松や牡丹をあしらった華やかな柄の着物に、金地に着物の柄に合わせた牡丹柄の帯、アップにした髪には紅色の古布で作った大きな牡丹の髪飾りを一輪。 和葉は淡い桜色の地に御所車や小花をあしらった古典柄の着物に、金地に小花柄の帯、アップにした髪には縮緬で作った桜の髪飾りに銀の鈴。 二人とも京友禅の着物に、帯は勿論西陣や。 「二人ともどこかの若旦那みたいだね」 姉ちゃんがオレたちを見てくすくす笑う。 工藤は銀鼠、オレは紺で、正月ゆう事もあってお召しや。 二人とも長着に角帯、着物と共布の羽織て出立ちやから、若旦那て言われても否定出来ひんし言い返すのも何やから、苦笑するだけにしておいた。 「んじゃ、初詣に行くか」 初詣の間は車を置かせてもらえる事になっとるから、急な頼みを快く引き受けてくれた女将や従業員たちに礼を言って、一旦貸衣装屋を後にした。 |
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