鏡幻月華 〜 三の夜 〜 |
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工藤からの久し振りの電話は、年明け早々に依頼で奈良に行くからその前に姉ちゃんと一緒にオレんトコに寄りたいて連絡やった。 オレと工藤はたまに事件現場で会う事もあるし、その時に何度か姉ちゃんが一緒やった事もある。 せやけど、和葉と姉ちゃんは時々電話で話すだけで、直接会うんはあの夏に和葉が怪我して入院しとった時に見舞いに来てくれて以来や。 どうやら姉ちゃんは、今まで直接会うんは失明した和葉の負担にならへんかて不安やったらしいが、アレから2年以上経って生活も気持ちも落ち着いたやろうから素直に会いたいて思うようになったようや。 まあ、ホンマのトコは愛娘の事に関しては強敵になるあの迷探偵のオッサンから姉ちゃんとの外泊許可を貰うために、工藤が和葉をダシにしたんやろうが。 工藤と姉ちゃんが来るゆうたら、昔やったらオレも和葉も両手を上げて歓迎しとったが、今はちょお億劫や。 いっそココやなくて寝屋川の実家の方が都合がええが、結婚して実家出とる今はそうゆうワケにもいかへん。 ましてや、あの時まであんなに頻繁に会うてて『親友』とまで言うてた相手やし、今までやったら断るなん思いつきもしなかったハズや。 姉ちゃんはともかく工藤に今の和葉を会わせるんは正直不安もあるが、褒美があればアレで中々芝居も上手くこなすから、ヘタに拒否していらん詮索されるよりはずっとマシやろう。 「……ああ、ええで。和葉もめっちゃ楽しみにしてる言うとるわ。ほんで、ベッドはダブルでええか?正月やし、座敷に布団で枕並べるゆうのも趣があるモンやで?」 篭でヤっとる最中の電話なんいつもやったら無視するが、和葉がまた悪さしようとして叱っとったトコやったからワザとゆっくり会話してやる。 工藤とは推理や事件の話だけやなくて猥談も当然のようにする間柄やから、いつも通りの会話やけどな。 笑いながらの軽い猥談に、携帯の向こうの工藤から『和葉ちゃんそこに居るんだろ?いいのかよ?』と呆れたような声のツッコミが入る。 「ウチに一泊したら、昼前には奈良の依頼人トコ行かなならんのやろ?打ち合わせは念入りにしとかな存分に愉しめんで?」 だらだらと蜜を溢れさせながらオレのモンを咥え込んどる和葉が段々焦れてくるんがわかったが、オアズケが一番のお仕置きやから当然無視や。 「ああ、せやな。ほな、迎えに行くから新幹線乗ったら連絡してや」 暫く馬鹿話を続けて工藤と笑い合い、最後に当日の予定をさらっと聞いて通話を終わらせる。 通話を切るついでに電源も落とした携帯を、ソファの隅に放り投げた。 「平次、工藤くんら来るて……」 「嬉しいやろ、和葉?」 「あんっ」 もぞもぞと腰を動かそうとはしとったものの電話が終わるのを大人しく待っとった和葉のスカートん中に両手を突っ込んで、軽く爪を立てて尻を鷲掴みにしてやる。 そのまま尻肉を捏ねるようにして揺さぶってやると、和葉はまた両手で胸を持ち上げて差し出してきた。 無理矢理下げた襟から窮屈そうに顔を出してる乳首の下では、ふわふわのフェイクファーが揺れとる。 下から息を吹きかけて、そのフェイクファーの柔らかい毛先で乳首を擽ったった。 「あ……平次、食べて」 「それはアカン」 「お願い、食べて…んっ…」 焦れた和葉が、自分の指で乳首を摘み、捻る。 「何しとんねん」 無理矢理指を離させて、縛ったままの両手を頭の後ろに回させる。 「そのままにしとるんやで?もし腕を戻したら、コレも抜いたる」 「ああっ!」 尻肉を掴んだまま和葉の腰を浮かせてオレのモンを半ば引き抜き、ふっと両手を離して重力が引っ張るままにまた根元まで呑み込ませてやると、和葉は頭の後ろに回した手もそのままに背を反らす。 倒れんように背中に回してやったオレの腕に体重を預けながら、和葉が腰を動かしはじめた。 「今度の正月は忙しいな。元旦には寝屋川行って一泊するやろ?次の日には工藤と姉ちゃんをココに呼んでおもてなしや」 「んっ……い…イヤや」 「何がイヤなんや?」 「やってっ…あんっ!……二日もオアズケなんっ……んんっ!」 オレの実家に泊まる時には、軽くイカせてやる事はあっても基本的にはオアズケや。 いくら篭ん中とはいえ、工藤と姉ちゃんが泊まりに来とる時にはさすがにいつも通りにはヤれん。 今まで和葉は一日のオアズケなら我慢した事は何度もあるが二日続けては初めてやし、不満なんもしゃあない。 せやけど、こればっかりはワガママを聞いたるワケにはいかへん。 「ええ子で居り。この正月ええ子で居れたら、褒美にオマエのお気に入りやったあのアクセサリー、また作ったるで?」 「あ……あれって……?」 「ココに着けるヤツや」 「ひゃあんっ!」 物欲しげに揺れる胸の上で硬く立ち上がった乳首を擽るように舐め、一瞬だけ歯を立ててやる。 和葉のお気に入りのアクセサリー。 和葉を美しく飾ってやるために、和葉を悦ばせてやるためにオーダーして作ったったあのアクセサリー。 なんに、あんな『人形』なんぞに触らせた挙げ句にカラダに傷を付けたんが赦せるワケもなく、嘆く和葉を無視して処分したった。 「ええな」 「ああっ!!」 背中に回した手に力を入れて、立てた爪で傷がつかん程度に引っ掻く。 目の前にぶら下げてやった褒美に釣られてか、和葉は渋々ながら頷いた。 明けて正月。 幸か不幸か暮れから現金輸送車の襲撃やら連続強殺やらのデカいヤマが幾つも重なって、オヤジたちは休暇返上で連日出勤になっとった。 オカンもそうやが、オヤジも遠山の親父さんも刑事やゆう以上に鋭いしカンがええ。 ましてや、愛娘の事だけに遠山の親父さんは和葉の小さな変化にも聡いから、会う時には気ぃ引き締めてかからんとアカン。 まあ、それでも信用しとる子供たちの事やし、さしたるケンカもせんと仲良う引っ付いとるオレらを見て納得しとるからか少々の事なら気付かれずに済むが、それでも気ぃ張った時間である事には変わりない。 せやから、元旦から寝屋川の実家に年始の挨拶に来とるオレと和葉にとっては、昼間のオヤジたちの不在はラッキーやった。 「一日なん、早いモンやねぇ……」 「何しみじみため息なんついとんのや、オカン」 「やって、昨日来た思たら、もう帰るんやろ?もっと和葉ちゃんと居りたかったわ」 今日も出勤のオヤジたちを見送った後、いつもの客間で帰り支度してるオレの横からあれやこれやと土産を持たせようとしとるオカンがため息をつく。 それでもあんまり未練がましくないんは、オヤジたちが不在なんをいい事に和葉を独り占めして構い倒せたからやろう。 「和葉ちゃん、このアホが何かしたら、すぐに電話してや」 「おい!」 「何も出来ない子ぉやさかい、もう心配でたまらんわ」 「大丈夫やて、お義母さん。平次はいっつもようしてくれとるんよ」 オカンが和葉贔屓なのはいつもの事やし、こんな遣り取りはもう実家に帰って来た時のお約束みたいなモンやから、和葉も手馴れた様子でオカンの相手をしとる。 「ほな、そろそろ着替えましょうか」 「はい」 オカンが和葉を奥の衣裳部屋へと連れて行く。 今日は工藤たちを迎えに行く前に、着物で府警に挨拶に行く事になっとる。 車での移動やから洋服の方がラクやけど、遠山の親父さんのためやからしゃあない。 オレも客間の隅に仕度されてた着物に着替えて、和葉の着付けが終わるまでの間に熱いジャスミンティを淹れて蓋つきの小さなドリンクボトルに入れた。 「ほな、気ぃつけてな。着物での運転なん、初めてやろ?」 「わかっとる。のんびり行くし、心配しなや」 「和葉ちゃん、遠山さんによう見せてあげてな」 「はい。おおきに、お義母さん」 オカンの手で華やかな晴れ着に着替えた和葉を乗せて、通いなれた府警へと向かう。 大きな事件を幾つも抱えた府警はいつも以上に忙しそうやったが、馴染みの刑事や職員たちは久しぶりに揃って現れたオレたちを温かく迎えてくれた。 「いやあ、眼福眼福」 「暮れからの疲れが吹っ飛ぶわ」 「こら、遠山のおやっさんのご機嫌も急上昇間違いなしやな」 「犯人が自首するなら今がオススメや」 「おっちゃんトコに嫁に来んか?」 「今の嫁はどうするんや?」 「ほな、甥っ子はどや?」 「和葉ちゃんはもうとっくに人妻やて」 「そうそう。それに平ちゃんの前やで」 着物姿の和葉に馴染みの刑事たちが口々に賞賛の声をかけ、お約束のオチにどっと笑う。 それらに愛想良く挨拶を返して、本部長室に詰めとった遠山の親父さんに和葉の着物姿を披露したった。 今までに着物姿くらい何度も見とるハズやけど今回はまた格別やったようで、忙しそうにしながらも遠山の親父さんは愛娘の艶姿に御満悦、他に世話んなっとる人達への新年の挨拶も恙無く済んだ。 「よう出来たな。ええ子や」 「ご褒美は?」 「褒美は工藤らが帰ってからや」 「ええ子にしとったんやもん、ちょっとくらいくれてもええやん」 「せっかく綺麗に着付けとるんや、工藤らに会う前に崩すワケにはいかんやろ」 「ケチ……あっ……」 府警の駐車場で車に乗り込みながら、和葉が不満そうに頬を膨らませる。 助手席に回ってシートベルトを調整してやってるフリをしながら裾から手を忍び込ませて襦袢の上から太股に爪を立ててやると、和葉は嬉しげな吐息を落としながらもっととねだるようにオレの手を両手で押さえこんだ。 「こんなんで悦んどるなん、もう襦袢がグショグショなんと違うか?途中で着替えなん出来へんし、この様子やったらたとえオマケでもとても褒美なんくれてやれんな」 「そんな事ない!」 「初詣にも行く予定やしな、蜜垂らしたままのオンナなん連れ歩きたないわ」 「まだ平気やもん!蘭ちゃんたち来るまでまだ時間あるんやろ?」 「あと4時間くらいやな」 裾を直してやって、運転席に乗り込む。 「なあ、平次ぃ」 オマケのご褒美を諦めきれへん和葉に羽織の袖を引っ張らたまま、ゆっくりと車を出した。 |
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