「 CROW - glance around- 」 9 |
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■ 元彼って何やねん! ■ E (その16〜18) | ||||
「和葉、よう似おうてんでそのドレス。」 和葉が着ているのはビスチェタイプで、柔らかいドレープがスタイルの良さを際立たせる桃色のロングドレス。 繊細な肩から美しい背中が見える様に、髪はトップで纏められドレスと同色のリボンが飾られていた。 「そのドレスは華月さんの為にあるんやと思います。」 華月が着ているのは、白いシルクに金の刺繍が入ったチャイナドレス。 際どいスリットが華月の綺麗な足を妖艶に見せ、しっとりと纏められた髪型には銀の華が飾られていた。 この2人、この姿でこれから犯人を確保しようというのだ。 今日のパーティーは映画関係者を招いた、いつひ出版主催のもの。 その為に、いつひ出版の重役連中も出席している。 「なぁ和葉。ほんまに俺んとこ来ぃへんか?」 裕希は自分の腕に手を添えている和葉に、もう何度目かのプロポーズ。 「いつまで、そんなん言うてんの・・・。」 和葉は、まったくもう・・・とつれない返事を返すのもいつものこと。 「オレ結構マジなんやけど。」 「あたしは結婚してんの。しかも大きな子供までいてるの。」 「葉ちゃんやろ?もう何歳になるんや?」 裕希は葉が生まれた時を知っているのだ。 「16や。」 「そんなに大きうなってのやぁ。オレも年取る訳や。」 「それに、もう一人12歳もおんの。」 「その子はともかく・・・・・・葉ちゃんの父親は旦那なんか?」 「・・・・・・・。」 「オレはあの時、和葉がどんだけ苦しんだか知ってるからな。」 「・・・・・・・。」 「・・・・・旦那は知ってるんか?」 葉の父親のことである。 和葉はゆっくりと首を立てに振った。 それを見て裕希は、 「まぁ・・・一応男気のあるヤツいうことか・・・・。」 と大きく息を吐いた。 と思いきや、 「そやったら遠慮はいらへんな。」 と和葉の腰に手を回し引き寄せた。 「華月さん・・・・警察官てほんまなんですか?」 「ほんまやで。見えへん?」 北川春希は改めて華月の全身を見詰め返し、 「見えません。警察の方にしては綺麗過ぎます。」 と大真面目に答えた。 「おおきにな。お世辞でも嬉しいわ。」 「お世辞やないです。あの・・・・。」 「うち、結婚してんねん。それに子供もいてるんよ。」 春希は信じられないという顔をしている。 「見えへん?」 「・・・・・・・・それも・・・・・・信じられません・・・・。」 華月は小さくガッツポーズ。 「ふふ。産後の努力は大成功やね。」 「・・・・・・。」 春希はしばらく考え込んでいる様だったが、 「それでも・・・・それでも僕は構いません。僕は華月さんのコトが好きです。」 いきなりの告白。 「あなたが兄貴の秘書を始めた時から・・。」 華月は春希の口を指でそっと止めた。 「ありがとな。そんなん言われたの久しぶりやからほんま嬉しいわ。」 「だったら・・。」 「やけど、かんにんな。うちには大好きなヤツがおんねん。」 冬樹が見たらびっくりするような優しい笑顔できっぱり。 「・・・・・・でも、今日はまだ僕の恋人ですよ・・。」 「そやね。」 これには華月も頷いて、春希の差し出した腕にしっかりと自分の腕を絡めた。 パーティー会場には、すでに大勢の人間がいつひ出版現社長の挨拶を待っていた。 和葉たちが会場入りすると待っていたかの様に、挨拶が始まり、盛大な拍手の元パーティーが始まった。 和葉と華月はさり気なく会場全体を見回し、ある人物を探す。 目的の人物を見つけるとお互いに目で合図を交わし、それぞれのパートーナーに伴って行く。 裕希も春希も大勢の人から声を掛けられ、その度に一言二言挨拶を交わす。 和葉も華月もつねに、にこやかな笑顔。 再度2人がすれ違う時、 「何で仕掛けて来ると思う?」 「あの様子やったら、光モンやな。」 と小声で、お互い顔は前に向けたままのやり取り。 そのまま何もなかったかのように、会場内をまた挨拶して回る。 和葉も華月もその人物から目を離さない。 常に視界の隅に捉えるようにしていた。 だが、裕希が会場の入り口にまた違う人物を見つけた。 そして、さり気なく和葉に知らせる。 「・・・・・・・・・・早過ぎやん・・・・・・。」 和葉はがっくりと肩を落とした。 「それにしても、えらいええ男やなどっちも。入って来るなり、近くの女どもが騒いでるで。」 「そら・・・おおきに・・・。」 楽しそうな裕希に対して和葉はなんだか迷惑そうだ。 「どっちが和葉の旦那か当ててやろか?」 「分かるん?」 「オコゲの方や。」 「・・・・・。」 「合うてるやろ?」 「そうや。・・・・けど・・・・オコゲは無いんちゃう。」 「そやけどなぁ・・・、あの色はオスマン・サンコンとええ勝負やで。」 「・・・・・。裕希・・・それあんまりやん・・・・。」 「旦那ほんまに日本人か?」 「多分・・・・・。」 「多分・・・って、和葉も結構言うてるで・・・くく・・・・。」 「やばっ!」 和葉は平次がこっちを向きかけたので、慌てて裕希の服を引っ張って屈んだ。 「何で隠れるんや?」 「・・・・・。」 「まぁええわ。それより、オコゲが和葉の旦那いうことは、もう一人が華月ちゃんの旦那なんか?」 裕希はちょこっと首を傾げている。 「そっ。久保冬樹警視正。平次もやけど。」 「へ〜〜。警視正かぁ。エリートやん。」 「裕希・・・・それ褒めてんの・・・・。」 「どうやろ・・・。それよりあの久保いうヤツ・・・・・なんか華月ちゃんのイメージちゃうんやけどなぁ・・・・。」 「そうかなぁ?」 「オコゲは和葉と同じ雰囲気やからすぐに分かったんやけど、あっちはどうもなぁ・・・ナヨッって感じやしなぁ・・。」 「裕希もまだまだやな。」 「何でや?!」 「人は見掛けに由らへんのやで。久保くんは華月が勝てへん数少ない人間の一人なんやから。」 「誰が勝てへんて?」 和葉と裕希と同じ様に屈んだ姿勢で華月と春希が近付いて来た。 華月もやはり、冬樹の姿を見つけるやいなや思わず隠れてしまったのだ。 「華月は久保くんにメロメロやもんね。」 「和葉かて服部くんにゾッコンやんか。」 2人して膝を抱えて睨み合い。 「どうでもええけど、いつまでこうしてるんや?」 裕希の言葉に、 「どうする?」 「しゃーないから、このままあの2人無視して計画続行やろ。」 「そうやんな。」 「ほな、あたしと裕希は例の人物誘い出すから、サポート頼むな。」 「まかしとき。」 と即仲直り。 そうと決まれば早速行動開始。 和葉は気分が悪い様子で裕希に?まり、会場の外へ。 華月は春希と2人が出て行った入り口を見張る。 もちろん、そんな姿が平次と冬樹に見付からない訳が無い。 平次が見たのは、裕希に寄り添い支えられる様にその腕の中にいる和葉。 冬樹が見たのは、春希の耳元で甘えるみたいに何か囁いている華月。 どうも、こちらはそろそろ臨界点らしい・・・・。 |
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