「 CROW - glance around- 」 9 |
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■ 元彼って何やねん! ■ G (その21〜23) | ||||
もちろん、笑顔で駆け来たのは葉だ。 改方学園高等部のセーラー服に、ポニーテールを揺らしながら。 和葉よりさらに色が白く、大きな瞳が印象的だ。 「あっ・・・・あれ?パパ・・・・・・なんでおんの?」 笑顔が急に疑問顔。 「おう!久しぶりやな葉。元気やったか?」 「うっ・・・うん。」 「で、お前は何しに来てん?」 平次の目が少し鋭くなる。 「それは・・・・。」 葉が言葉に詰まるのも仕方が無い。 平次は葉が事件現場に来ることを、許してはいないのだ。 和葉だけでも心配なのに、葉まで事件に首を突っ込むなど言語道断。 「それより葉ちゃん。新犯人は分かったん?」 華月は平次から漂う雰囲気を完全無視。 葉は平次を気にしながらも、小さく頷いた。 「やったら、教えてくれへん?」 「でも・・・・。」 恐る恐る平次の顔を見る。 「お前まさか、推理なんしてるんやないやろな?」 「え〜〜とぉ・・・・。」 「あれほど・・・ぐぇ・・。」 平次が何か言いかけたのを、和葉が肘鉄食らわせて黙らせたのだ。 「構へんから、言うてみて。」 和葉の言葉に葉はやっと自分の推理を披露し始めた。 葉の話に途中、華月と和葉は頷きながら補足も入れる。 平次も何度か口を挟みかけたのだが、その度に和葉に黙らされていた。 冬樹はただ黙って聞いている。 裕希と春希はその話に、さっきよりも驚きを隠せないようだ。 そして、美紀も。 和葉はキラキラした目で、自分の推理を披露する葉を眩しそうに見詰めている。 「・・・これらすべてのコトを合わせるとやね。 この一軒ただの怨恨にみえるんやけど、ほんまは周到に用意された計画殺人やったんや。 そんでな、こんなんが出来るんは内部の・・・・・・・・。」 一生懸命話している姿は普通の高校生なのに、その内容は正に名探偵。 とても、これが探偵デビューとは思えないモノだった。 「我が社のセキュリティは相当やと思うてたんやけどなぁ・・・。」 裕希がもらしたのは、葉が社内PCのネットワークを外部から覗いたと言ったからだ。 もちろん、警察と社長の許可は出ている。 「それは良平が・・・・あっ、あたしの弟なんやけど・・・がやってくれてん。」 「凄い弟持ってるんやなぁ。」 「自慢の弟やねんもん。」 へへっと笑って、また話始める。 葉の推理は本当に大したモノだった。 が・・・・次のセリフを知ってる人たちは固まってしまった。 「 そして導き出される真実は一つ!! 」 その後に続いた犯人の名前より、ここで思考が止まった人までいるみたいだ。 取り合えず真犯人を確保。 って言うよりすでに確保されていた。 ここに来るまでに、ざっと事件の要項に目を通し、いつひ出版のデータを警視庁より拾い出し、犯人の目星を付けていた平次と冬樹が、該当される3人の人物をすでに別室に確保させていたからだった。 流石は警視正。 アホなことをやっていても、やるべきことは出来るのだ。 真犯人と美紀は、大阪府警に連行されて行った。 冬樹も仕方無く、一旦大阪府警に同行することとなった。 裕希と春希もことの成り行きを現社長である父親に説明すべく、和葉たちから離れて行った。 「流石はうちの葉ちゃんや!!」 華月は葉を抱きしめてご満悦である。 「ほんまにそう思うてくれる?」 「ほんまにほんまやてっ!!もう可愛ええなぁ!!」 照れて華月を見上げた葉をさらにギュッギュッ。 「あんたら・・・いつからなん?」 和葉が言いたいのは、葉がいつからこの事件を捜査し始めたかということだ。 「初めっからやで。なっ?」 「うん。黙っててかんにんなママ。」 「はぁ・・・・今度からはちゃんと言うてや。」 すると、今まで不安そうに和葉を見ていた葉の顔がいっきに笑顔になった。 「それって・・・。」 和葉も今までは葉が探偵をすることに反対だったのだ。 「そんなキラキラした顔されたらしゃ〜ないやん。」 まったく・・・と優しく笑った。 和葉がこの顔に弱いのは昔からだから。 「葉。ちょう聞きたいコトがあるんやけど、ええか?」 ずっと黙り込んでいた平次がやっと口を開いた。 「さっきのセリフどこで覚えたんや。」 「へ?」 「”真実は一つ”ちゅヤツや。」 「あっ、あれ。あれな新パパが教えてくれてん!」 「工藤やとぉ?なんでアイツが出てくんねん!!」 ここで説明を。 葉がなぜ新一を”新パパ”と呼んでいるかというと、以前、良平に”おっちゃん”と日がな一日連呼された新一が我慢できずに呼び名の訂正を求めたからだ。 そして服部家と工藤家全員で話合った結果、葉と良平は新一のことを”新パパ”蘭のことを”蘭ママ”、杏樹は平次のことを”平パパ”和葉のことを”和ママ”と呼ぶことに決まった。 一部苦情も出たが、ママたちの”それ可愛い”で即決定したのだった。 ちなみに華月んところの子供は、和葉のことを”和葉ちゃん”平次のことを”ハットリ”と呼んでいるし、葉は”葉ねぇ”良平は”良にぃ”のようだ。 葉は思わず華月の背中に隠れてしまった。 そしてチロッと顔を覗かせて、 「やって・・・・推理んことパパやママに聞いたかて教えてくれへんやん。やから、蘭ママに相談してん。そしたら、そういうことは新パパが喜んで教えてくれるよって言うてくれてんもん。」 とぼそぼそと答えた。 「そんで?」 平次はブスッとして、話を即した。 「そんでな、新パパすぐに電話してきてくれて色々教えてくれてん。しかも、大阪まで来てくれたんやで。それに、それにな。いっぱい面白いモンもくれたんやから。」 「面白いモンて何や?」 「これとか・・・これやけど。」 葉が示したのは腕時計と靴。 「・・・・・・。」 平次にはそれが何か分かったのだろう、それ以上は聞かなかった。 「・・・・・それでさっきのセリフなんやね。」 和葉が呆れたように呟いた。 「新パパが決め台詞は絶対必要やて言うから。」 「アホ〜。推理にそんなんいるかっ!」 葉はまた華月の後ろに引っ込んでしまった。 「平次!!」 「ちょうオマエは黙っとれ。ええか、葉。これからは、工藤やなく俺に相談せぇ!」 「・・・パパ・・・。」 「俺がなんぼでも教えたる。」 「ほんま?」 「おお〜!!俺に分からんことなんか無いからな!」 「「恋愛のこと意外はな。」」 ボソッと呟いたのは和葉と華月。 「何ぞ言うたか?」 「何も。」 「別に。」 「パパだ〜〜〜い好き〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」 葉は平次に抱き付いた。 平次もしっかりと葉を抱きしめ返し、優しく頭を撫でてやった。 平次も和葉も葉にはどうも勝て無いらしい。 服部家最強はもしかしたら、葉なのかもしれない。 それに何より、葉には新一や蘭の他に華月や静華や明までついているのだから。 さらに言うなら、最強じぃじ’ズも。 犯罪者たちにとっても、ある意味もっとも怖い探偵が誕生したのかもしれない。 葉に危害でも加えようものなら、その者は即抹殺されること間違い無しなのだから。 |
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