「 CROW - glance around- 」 9 |
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■ 元彼って何やねん! ■ H (その24〜26) | ||||
和葉たちの元にまず、戻って来たのは裕希だった。 「今回は世話になったなぁ。」 「気にせんでええよ。あたしらも仕事なんやし。」 「それに結構楽しませてもろたしね。」 すまなそうな裕希に対して、和葉と華月は笑顔で答えた。 「それにしても・・・・ほんまにいてるとはなぁ・・・・・。」 それなのに裕希は、腕組みして溜息を零した。 思わぬ裕希の言葉に、2人は不思議そうな表情だ。 「ほんまにいてるって・・・・・どういうこと?」 和葉が即突っ込む。 「えっ?・・・・・・あっ・・・・・・・・・。」 そこでやっと自分の失言に気が付いたようだ。 「例の脅迫状のことですよね。」 答えたのは葉だった。 「例の脅迫状って・・・あの陳腐なヤツんこと?」 華月はキツイ。 「うん。そうそうそれ。」 葉は平次の左腕に抱き付いたまま、笑顔で答えている。 それに対して、裕希はどうも顔が引き攣っているみたいだ。 「あれ、北川さんが自分で作ったんですよね?」 天使の笑顔で、爆弾を投下。 「「「 なんやてぇ?!!! 」」」 和葉、華月、そして平次までもが一斉に目を見開いて裕希を見た。 「ちょっと裕希!!それほんまなん?!」 「あ〜〜あ。ばれてしもたもんはしゃ〜ないか。」 北川裕希はどうも開き直りも早いようだ。 「そやけど葉ちゃん、どうしてオレやて分かったんや?」 「それはやね。紙に付いてた指紋やねん。」 葉は人差し指を皆の方へ向けて、クルクル回した。 「えっ?やって葉ちゃん・・・・指紋は初めっから北川さんのしか無かったし。それはあっても仕方無いやろ?」 「華月の言う通りや。裕希が貰うた脅迫状やから、裕希の指紋があって当然やん。」 和葉と華月は意味が分からないといった感じだ。 だが、 「・・・・・・・指紋のあった場所か・・・。」 平次は葉が何が言いたいのか気付いたみたいだ。 「流石パパ!!」 葉は嬉しそうに、再度、平次にしがみ付いた。 「文字の下にあったんやな。」 「うん!大正解!検出された指紋の向きが気になって、科捜研のマリコさんに調べてもろたん。」 葉は自分のお手柄より、”やっぱりパパは凄い!”と尊敬の眼差し。 「恐れ入りました。」 裕希は両手を挙げて降参のポーズ。 「葉ちゃん。君は絶対素晴らしい探偵になること間違い無しやな。」 すると葉は笑顔全開で、 「やってパパの娘やもん!!あたしな絶対、西の名探偵って呼ばれたんねん!!」 と大胆発言。 「残念やけど、俺がおる限りそれは無理ちゅうもんや。」 平次はこんなところは相変わらずだ。 しかし、 「え〜〜?パパ引退したんとちゃうの?」 と葉はバッサリ。 「ダァ〜〜ホッ!!誰が引退やねん!!年寄り扱いすんなっ!!」 平次は葉の頭をコツンと叩いた。 「あはははは・・・・・。葉ちゃんの言う通りやで服部くん。そろそろ、世代交代してもええんちゃう?くくくっ・・・・。」 華月は”引退”と言う言葉が気に入ったらしい。 「やっぱ和葉の娘やなぁ。ええ娘に育ってるやん。」 裕希はさり気なく、和葉の耳元に近付いてそう呟いた。 「・・・・・・。」 「オレ安心したわ。葉ちゃんのことはずっと気になってたんや。」 和葉は思わず、裕希を見返した。 「ほんまやで。」 裕希も和葉を見詰め返した。 「裕希・・・。」 「やから、安心してオレんトコ来ぇへんか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 こうなると当然傍から見ると、良い雰囲気で見詰め合っている様にしか見えない。 「 おいっ!!お前らな〜〜にやってんねんっ!! 」 油断も隙も無いヤツや!と言いながら平次は、2人の間に割って入った。 「なぁなぁ華月ちゃん。」 そんな様子を見ながら、今度は葉が華月とひそひそ話し。 「ママって・・・・面食いなん?」 「そう言えばそうやなぁ。歴代の彼氏もみんなええ男やったわ。」 「やっぱり・・・。」 「 ってこらっ!!こんなんが他にもおんるんかいっ!! 」 服部平次は和葉のことに関しては、地獄耳である。 「すくなくとも、後3人はいてるで。」 華月は笑顔で即回答。 「 何やと〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!! 」 「ちょっと華月!!ええ加減なこと言わんときやっ!!」 「かんにん和葉。5人やったね。」 「か〜〜づ〜〜〜き〜〜〜〜〜!!!」 和葉は笑いながら葉の後ろに隠れた華月を追いかける。 「和葉〜〜。そんなに動いたら傷開いてまうよ〜〜。」 「もうとっくに血ぃなん止まってるから平気やで。」 「それより華月!5人て何なんよ!!」 「あれ?違うた?6人やったけ?」 「5人も6人もおったんはあたしやのうて、あんたやっ!!!」 「そうやったっけ〜〜〜?」 和葉の剣幕に比べて、華月は何所吹く風だったが・・・・・、 「へ〜〜〜。華月、そんなに男がいたんだ。知らなかったな。」 静〜〜〜な冬樹の声で、固まってしまった。 「・・・・・・ふっ・・・・・・冬樹・・・・。お・・・お帰り早かったんやね・・・・。」 華月がどもるなんてのは、非常に珍しいことである。 今度は和葉がニヤニヤと、 「そうやで久保くん。華月、めっちゃモテテてな。男は付き合うてみんと分からへん。とか言うて、とっかえひっかえやったんやで。」 ここぞとばかりにさっきの仕返し。 「か・・・・和葉・・・・・・その冗談・・・笑えへんよ・・・・・。」 「冗談ちゃうやん。ほんまのことやん。」 華月は横目で冬樹を窺いつつ、何とか和葉を隅に引っ張った。 「和葉。とにかく今日はもうかんべんして。なっ、お願いや。」 しかも、小声であるまじきセリフ。 「珍しい・・・・華月が降参なん・・・。あっ。もしかして、久保くんMAX?」 「MAXなんてもんやないで、あれは。」 葉と笑顔で話している姿は、普段の冬樹となんら変わらない。 「何かあったんかな?」 「何かってなに?今回ちょ〜やり過ぎたんかなぁ?どないしょ・・・。」 オロオロする華月など、それこそ滅多に見られるモノでは無い。 「ふふ・・。久保くんてそんなに怖いん?」 「笑い事や無いで和葉!」 「やって華月をそんなに怯えさすなん、普段の久保くんから想像できへんねんもん。」 「・・・・・。このままやったら、うち明日のお天とさんは見られへんかもしれへん・・・・逃げよ和葉。」 「はぁ?」 華月は和葉をそ〜〜と引き摺って、階段の方へ歩き出した。 「か・づ・き。どこ行くのかな?」 ひぇ〜〜〜!と飛び上がらんばかりに華月は止まったが、 「ちょ・・・・ちょっとそこまで・・・・。」 と意を決して一人で走り出した。 「 確保!! 」 冬樹の命令に従ったのは、大阪府警の若手刑事たち。 「ちょっとあんたら何してんの?!!離しやっ!!」 「すみません。許して下さい〜〜〜〜!」 「ぼっ・・・僕たちも命は惜しいですから・・・・・。」 ジタバタ暴れる華月をしっかりと両脇から捕まえているのだ。 和葉はそんな様子を唖然と見ているだけだったが、 「ママ。あたし遅くなるから帰るな。」 と言う葉の声で我に返った。 「そうやね。ほな、あたしも一緒に帰るわ。・・・・・何や華月は急がしそうやしな・・・ほっとこ。」 和葉はあっさりと華月を見捨てるつもりだ。 まぁ、夫婦の問題は犬も食わぬというし、当然だろう。 「ママも家には帰れへんよ?」 それなのに、葉は笑顔でそんなことを返した。 「何でなん?」 「やって、パパがママ連れて帰るって言うてたもん。」 「連れて帰るって・・・・・どこに?」 「東京。」 「・・・・・・・・・・。」 「ママ!がんばってな!ほな、あたし大滝さんが送ってくれるから帰るな。」 葉はそう言い残すと平次にも大きく手を振って、走って行ってしまった。 登場と同じく、鮮やかな引き際である。 残された和葉は、華月同様逃げようとしてこちらも大阪府警の若手くんたちに捕まってしまった。 |
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